ヤス@BUNKAIWA

2019年5月3日5 分

本当に分かり合うためには?異文化理解に取り入れたい「ビギナーズマインド」という姿勢

最終更新: 2020年4月19日

みなさんは、『ビギナーズマインド』という言葉を聞いたことはありますか?

これはマインドフルネスの基本信念の一つ。そして、主流カウンセリングの一つパーソンセンタードアプローチの生みの親であり、カウンセリングの父として知られるカール・ロジャーズが「セラピストが取るべき姿勢」として推奨している考え方でもあります。

異文化理解というと、相手を理解したい気持ちが優先して意識が相手に向きがち。

ですが、本当の理解には、自分本位の色眼鏡は使っていないか、自分丈の物差しを持っていないか、自分自身を見つめ直すことも同時に必要です。

この記事では、異文化理解に不可欠な『ビギナーズマインド』について、少し掘り下げてご紹介したいと思います。

ビギナーズマインドとマインドフルネス

ビギナーズマインドとは、文字通り『初心者の心』。目に入るもの、聴いたもの、経験することをまるごとそのまま、先入観や固定概念抜きに自分をまっさらな状態にして物事をみてみましょう。という考えです。

そしてそれは、

Non-judgment=相手を自分の価値観で判断しないこと、

につながり、

そして、

Acceptance =相手をそのままの状態で受け入れること、

へと導いてくれます。

これはマインドフルネスの考え方。マインドフルネスでは、人間がいかに日々雑念や周りの意見に囚われて生きているのか、自分の頭の中に存在するさまざまな意識を自覚していくことを学びます。

そして、自身の頭の中にある雑念や喧騒を取り払うことで見えてくる本当の現実に、ニュートラルに自身が向き合えるよう訓練をすることを目指します。

人種差別主義者は、先入観に囚われて相手を見てる人

人種や民族の種類だけで相手を判断できてしまう人。それは親や生まれ育った環境の価値観に囚われている人。

自分の頭の中にあるさまざまな情報や知識によって視界を遮られ、目の前にいる人を一個人としてみることが出来ないのです。

それは自分の色眼鏡を透明と信じて疑っていない状態。

「自分のメガネに色が付いていた」と気づくまで、その人は色付きのメガネを通し相手を見て、それがリアルだと思い込んでしまうのです。

誰もが色眼鏡を持っている

人種差別主義者ほど極端ではないものの、世の中ほぼすべての人が色付きのメガネを持っているのではないでしょうか。

なぜなら自分が育った環境、親・教育者の思想、自分の経験体験してきたことにより、自分の頭の中にはさまざまな情報が混在しています。この状態はもう、ビギナーズマインドではありません。

それを全部取っ払え、という考えがビギナーズマインド。

ビギナーズマインドのゴールは、透明のメガネで相手を本当に素のままありのまま理解するということなのです。

赤ちゃんが人種差別者という話

ある研究で、赤ちゃんに親とは違う人種を会わせる実験をしたところ、赤ちゃんは自分の親と同じ人種の人に最も安心する傾向があったそうです。

こんな小さな赤ちゃんでさえ親の人種や見た目に影響されるのです。

それぐらい自分の中にある先入観や意識というのは、言葉も理解しない小さな時から存在し、相手とのコミュニケーションに影響を与えてしまうものなのです。

(もちろん赤ちゃんはその後さまざまなことを学ぶので、ここでは極端な具体例として紹介しています。)

自分の色眼鏡に気づくことがビギナーズマインドへの第一歩

先入観をすべて取り除くのは不可能。

唯一できるのは、自分は何色の色眼鏡を持っているのかを知ること。自分の偏見に気づくこと。ただそれだけです。

そこには、良し悪しも正解も不正解もありませんし。偏見をしないようにと考えたところで偏見は存在します。

これはとても簡単なようで難しいこと。

一日に一つずつ、自分の中にある先入観や偏見、固定概念に気付くところからはじめましょう。

そうすることで、いずれ自分の色眼鏡が何色なのか、どうしたら目の前に存在することをありのまま、みたまんまの色で見れるのか、自分自身を分かってくるようになるのです。

おわりに

異文化理解には、政治や国・過去の歴史背景、そして人種や民族の慣習など、様々なことが複雑に絡み合っているため、自身の育った環境や文化背景を基準に、相手を判断してしまうことはどうしても避けられないことです。

これが、異文化理解を阻む大きな壁になっていること。

それを出来るだけ排除するためにはどうしたらいいか。その一つの方法として『ビギナーズマインド』を紹介しました。

そしてこの考えは、異文化の人に接する時だけでなく、さまざまな境遇の人や新しい文化を理解するためにもとても必要なことだと感じます。

私自身、自分を見つめ直す過程で、自分がすごい色眼鏡を持っていたことも、残念ながら気づくことも多いです。しかし、それもあるから人間は誰一人として同じ人がいない、面白い存在なのだと感じます。

この記事が、みなさんの異文化交流・相互理解にお役に立てれば幸いです。

ちなみにマインドフルネスは、自分を見つめ直すためだけでなくストレスや気分障害にもとても有効な治療法として確立しています。この件については別の機会でまたお話ししたいと思います。それでは。

クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。


関連記事:

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アートは万国共通ではない!?アートセラピストが持つべき異文化理解への姿勢

参照文献:
 
John Kabat-Zinn (2007). Full catastrophe living: using the wisdom of your body and mind to face stress, pain, and illness. Audible. Audiobook. 日本語版

Sue, D. W., & Sue, D. (2013). Counseling the culturally diverse: theory and practice. (6th ed). John Wiley & Son, Inc. Hoboken; NJ.

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