ヤス@BUNKAIWA

2019年9月15日7 分

差別に遭ったら?レイシズムに直面した時に試して欲しい5つのこと【異文化変容ストレス】

最終更新: 2020年2月18日

自分の見た目や名前、出身国籍や文化、習慣としているものが、生活基盤の社会においてマイノリティであった場合、大部分を占めるマジョリティの人たちから差別を受ける可能性は広がります。

日本で差別について自覚が無い方でも、一歩海外に出てみたら差別的な言葉を掛けられたり見た目やイメージで偏見的に判断されたりするような、なんとも言えない複雑な気持ちを経験した方も多いのではないかと思います。

この記事では、レイシズム・差別的発言を受けた場合、実際にどのようなストレスを抱えてしまうことが指摘されているのか、レイシズムによるストレスのメカニズムと対処法について紹介したいと思います。

レイシズム・差別の構造や種類の詳しい情報については、こちらの記事をご覧ください。

*尚、この記事で取り上げるレイシズム・差別内容については、見た目や民族背景を元に卑下されたと受け取れるようなことをされた場合についてを前提に話します。

レイシズムへの戦闘疲れ

そもそもレイシズムは、ある一定の人種や民族に対し差別が起きやすくなっている社会構造に原因があります。そのため残念ながら、日常生活の中で慢性的にレイシズム体験(偏見的なコメントを受け取ったり、自身の人種や民族性を一括りにして卑下されたり)を経験してしまう場合があります。

何度も起こる同じようなレイシズム体験に、疲労困憊してしまう人も諦めを感じる人も多いのが、レイシズムからくるストレスの特徴の一つです。

レイシズムによるストレスとはどんなものがあるのか

以下の図は、レイシズムと精神的ストレスの関係をまとめた図です。レイシズムを受けると、大まかに分けて人は3パターンに思考を整理します。そしてこの3つの思考から、精神的ストレスが作られていきます。

レイシズムが精神的ストレスになるまでを説明した図

①状況に対する自身がコントロールできる範囲の力の限界を思い知る

レイシズムを受け、それに反論したり議論したりする余地は与えられているでしょうか?

環境や状況など、反論したところで、それが自分に不利に働く場合が多々あるのがレイシズム。いくら環境を変えたいと思っても、社会構造全体が差別をしやすい構図になっているため、自分の無力さと環境に左右される状態にストレスを感じやすくなります。

②レイシズム体験を自身の一部に取り込んでしまう

マジョリティのグループから受けた差別や偏見をまるで自身の価値のように思ってしまうこと。自身のグループを指して卑下された価値観というのは、自分の価値を決めるものではありません。しかし、まるで自分個人を指して言われたと思ってしまうことにより、低い自己評価や大きな精神的ストレスへと繋がります。

たとえ自身に向けられた批評ではなかったとしても、自分が否定されたような、ネガティブなメッセージを受け取ってストレスを抱えてしまうのが、この思考です。

③価値ある行動を避けるようになる

喜びを与えてくれるような活動や、社会生活を送る上で価値のある行動をすることは、自身の幸福度へと繋がります。レイシズムを経験していると、そのような活動の場から自身を締め出してしまったり人との関わりや接触を諦めてしまう人も。

例えば、学校での差別経験から学校に行くのをやめてしまったり、仕事場での差別から従業員達から孤立してしまい仕事に影響を出してしまったり等。自分の行動範囲や自身の人生にとって価値ある行動を諦めてしまうことによって、さらにストレスを抱えやすくなります。

レイシズムからくるストレスに対処する方法

それではどのような対処法があるのでしょうか。もちろんこれだけではありませんが、レイシズム経験からくるストレスに対して、まずこの5つの対処法を試してみましょう。

⒈自分の感情を受け入れる

ストレスを抱えまいと自分の気持ちを押し殺したり、良い方に解釈しようとしたり、思わず咄嗟にネガティブな感情を引っ込めてしまいたくなるかもしれません。しかし、それは逆効果であることが様々な研究から理解されています。

レイシズムを受けてしまったら、気持ちを押し込めてしまうのではなく、まずはその時に感じた難しい感情(深い悲しみだったり大きな怒りだったり)をそのまま受け止めるよう心がけましょう。そしてその感情を日記に書くのでも良いし、同じような経験をしたことのある誰かにじっくり話を聴いてもらうのもいいかもしれません。

自身が感じた感情をありのまま受け止めて、それに対してどういう対策が取れそうか、冷静に考えていくことが自身の逆境力や強さを身につけることに繋がります。

⒉自分に優しくする

⒈にも通じることですが、レイシズムを受けて経験した嫌な感情は、人間なんだから当たり前のこと。

社会に生きる我々は、好ましい感情と面に出しては良くない感情をインプットされて生きています。しかし、それイコール自分の中に生まれた嫌な感情を無かったことにすることではないのです。

例えば、レイシズムを受けたのがあなたの大切な人だとしたら、どんな言葉をかけてあげれるでしょうか?きっと優しい言葉が出てくるはず。それと同じことを自分自身にも掛けてみることを心掛けましょう。

⒊自身の人種や民族性に対するネガティブな社会的メッセージを受け付けない

不平等な社会構造の仕組みから、マイノリティに対してマジョリティの人たちの先入観が大きく社会の至る所に反映されています。例えば、メディアが伝える特定の民族のイメージだったり、会社や学校での待遇の違いだったり、なにかしら、社会が発する自身の人種や民族性に対するネガティブなメッセージというものを日々の生活の中で感じる時があるかもしれません。

その時、思い出してください。

「自分を価値のある人にしているのは何だろうか?」と。

社会からのメッセージは自分に向けられたものではない。そして、自分には自分特有の個性や良さがあること。それを常に意識して、社会的ネガティブなイメージから自身を切り離すことが重要です。

⒋周囲に理解者を増やす

同じような境遇を経験した人や、レイシズムへのインパクトを理解してくれる人など、何かあった時にすぐ相談出来るような人を見つけておきましょう。

自分の意見や感情を受け止めてくれる人がいるだけで、大きな精神的サポートとなります。

⒌自身にとって価値がある事とは何か、吟味する

自分にとって価値のある人生とはどのようなことか?お金を稼ぐ事、家族友達に囲まれて楽しく生活する事、社会的地位を得る事、社会への提唱活動等、どのような生き方を自分は望んでいるのか。

ゴールが到着地だとしたら価値観とはそれを指し示すコンパスのようなもの。自分にとって価値のある行動を心掛けること。そうすることによって、ストレスを抱えやすい状況に陥った時も、自分にとって一番必要なこと、優先すべきことをブレずに決めることが出来ます。

それはレイシズムを受けた環境や状況に対しても同じであり、例えば、職場で差別的なジョークを言われても、仕事に価値を見出しているのであれば、辛いですがそれをやり過ごしたり我慢を選ぶ方が得策な時もあるかもしれない。反対に、差別や偏見に立ち向かう事に価値を置いているのであれば、職場の抵抗を受けたとしても自身が提唱活動をすることがとても意義のある事になります。

また、ショックを和らげるにはどのような行動を取れば良いか、どのような自身のいたわり方が一番効果があるのか、自身の価値観を元にセルフケア法を選ぶこともとても重要です。

自分が何を目指しているのか、どういうことに価値を置いているのか、何を必要としているのか。自分の人生の目的や、そこに至るまでの選択、決定権に関しては自分がしっかり主導権を握ることは可能であります。そして、それがストレスに影響されにくくなる対処法でもあるのです。

さいごに

レイシズムや差別・偏見は、海外生活において多国籍多民族の人たちと関わりあう上で避けて通れないことかもしれません。

しかし、自身の感情や行動への決定権は自分自身が持っていることを知っておくことは、大きな力となります。その決定権には、周囲に助けを求めることや、自身のセルフケアをすること、そして何よりも、傷つく発言を言ってきた相手の意見を自己評価に取り込まないことも含まれています。ただでさえ大変な海外生活や異文化環境、自分中心に、自分は何を必要としているのか、より一層深く考える機会を増やすことが必要かもしれません。

この記事が、みなさんのお役に少しでも立てたら嬉しいです。

クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。


関連記事:

レイシズムについての記事

元白人至上主義者が語る差別の正体についてを書いた記事

参照文献:

Chae.D.H., Lee,S.,Lincolm,K.D., & Ihara,E.S. (2011). Discrimination, family relationships, and major depression among asian americans. Journal of Immigrant and Minority Health. 2012. Vol.14: 361-370.doi:10.1007/s10903-011-9548-4

Dr. Jessica Graham-Lopresti, and Karen G. Martinez

https://adaa.org/webinar/consumer/effects-racism-mental-health-how-cope

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