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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

海外生活中の戦闘モード。イライラと自己嫌悪の繰り返しはうつのサインかも。気持ちを和らげる3つのポイント【異文化変容ストレス】



海外生活を始めると、性格がキツくなったように感じる方は多いのではないでしょうか?


留学生時代のわたしは、今振り返ってみても信じられないくらいとてもピリピリと毎日を過ごしていました。様々な手続きをこなすにも、日本に比べすべてが遅く不備も起きがちなアメリカの行政や管理システムに感情的になり、常にイライラ、時に攻撃的に現地の人に接してしまうこともありました。常に戦闘モード、クラスメートや先生にも、時にキツい態度で好戦的に接するような嫌な奴だったと自覚しています。


当時のわたしは心に全く余裕が無かったのです。


しかし嫌な態度を思わず取ってしまった後に湧き上がってくるのは罪悪感。この自己嫌悪とイライラの繰り返しで、毎日がとても辛かったのを覚えています。


この記事では、わたしのような経験をしている方へ向けて、海外生活で『戦闘モード』が起きてしまう原因と、少しでも気分が楽になるよう心がけたい3つのポイントを紹介したいと思います。


『戦闘モード』が起きる理由

移民が辿る試練の一つに、この『戦闘モードになる』ことが挙げられます。


それもそのはず、人間が安心出来るために必要な条件(マズローの法則)の一つとされている最低限の生活環境が、違う国から移住してきたばかりの移民には備わっていません。


そして国や地域、移民の受け入れ状況によっては、それが移民には簡単には手に入りにくいシステムである場合もあります。例えばアメリカでは、ソーシャルセキュリティナンバーや、クレジットヒストリーがないと車や家の契約がとても困難なことが挙げられます。これは、移民にとってはとても大きなストレスになり、切迫感・生活への危機感を与えます。

(学校や企業が移民の受け入れに慣れている場合は、移住の準備に向けたサポートが充実している場合もあると思います。)


行政対応のスタッフや現地の人から受ける善意のアドバイスも、現地の人には有効なものであっても移民にはハードルが高い(もしくは不可能な)場合もあり、余計に苛立ちが増してしまう。


誰にも分かってもらえない孤独や辛さと、どうにかして生活を出来る状態にするために頑張らなくてはならない必死さが交互に押し寄せます。それはまるで戦闘体制に入った兵士のような、目的のためには手段を選ばぬ強さを個人に与えます。これが戦闘モードの所以です。


戦闘モードの利点と副作用

同じ状況になったら多くの人が同じような体験をするでしょう。そして、戦闘モードのお陰で、慣れない海外生活を強く逞しく生き抜く力も得ることが出来ます。


しかしながら、そのような状況下に置かれた移民が経験するイライラと自己嫌悪の繰り返しは、実は、うつ病の症状にとても近いのです。それもそのはず、孤独でサポートが少ない環境(状況)は、うつ病の大きな誘発要因の一つとして指摘されています。


そのため、本当に慢性的なうつ病になってしまう前に、出来る限りの対策を取ることが大切です。


心がけたい3つのポイント

それでは、何をどう心がけたら良いのでしょうか?先ずは、以下3つの対策を試してみてください。


⒈ 自分自身が主体となりコントロールできる時間を作る:

  • 自分の部屋や安心出来る場所を確保する。

  • 自分のしたい事(好きな本を読んだりテレビを見たり)を出来る時間を一日のうちに20分でもいいから作っておく。

ポイントは、自分自身が主体となり、自由にやりたいことをする時間を一日の中に設ける意識をすることです。それにより、周囲に左右されやすい移住初期の不安定感が少し軽減される効果が見込めます。また、移住直後のストレス軽減方法にもあるように、自分の習慣を毎日の生活の中に組み込んでしまうことも効果的です。



⒉ 思わずイラっとした瞬間があったらリアクションを取る前に深呼吸する:

  • 瞬発的に浮かんだリアクションが適切かどうか考えてみる。

  • 本当は何を伝えたいのか自省してみる。

ポイントは、思わずイラっとして口走ってしまった嫌な言葉や態度を出来る限り減らし自己嫌悪感を軽減することです。自己嫌悪は、どんどん自分をネガティブな方へと追い込み自信を削いでしまうような作用があり、移住適応や文化変容を阻む大きなハードルとなります。出来る限り、自己嫌悪を感じずに済むような方法を探ることが重要です。


尚、思わずリアクションを取って相手に嫌な態度をとってしまった場合は、相手にすぐ謝る。そしてクヨクヨ引きずらず、過ぎたこととして忘れること。悪気が無いことならば、相手はそこまで気にしません。



⒊ 自分が心を許せるようなコミュニティ・友人を作る:

  • 自分の居場所を社会の中に作っておくこと。

  • 自分の辛さを理解してくれるような友人を作ること。

ポイントは、一人ぼっちにならないことです。たとえ学校や職場など馴染めない環境があるとしても、それ以外の場所でどこか楽しみに出来るような場所や、新しい環境下の友人関係を作っておくことは、自分を前向きな気持ちにさせ現地の文化を知るきっかけにもなります。毎日通わなくても、自分が居場所を感じるような場所を持つことが重要です。うつ病に関する研究では、自分の存在を気に留めてくれるようなコミュニティやグループがあることは、うつ病の抑止に大きな効果があるそうです。


また、同じような境遇の人、たとえば日本人でなくても違う国からの移民(学生の場合は同じような留学生など)は、同じ思いを共有している経験者の場合が多く、とても励みになる心強い存在です。



おわりに

戦闘モードでピリピリとキツい人格を纏っていたわたしですが、上記3つのポイントを経験するうちに環境に徐々に慣れ、鎧のようだった武装が剥がれていくような感覚を味わいました。


一度自分の置かれている状況がどういうものだったのかが客観的に理解出来ると、一気に視界が開け、周囲の人が自分にしてくれていたサポートや寛容さに気づき、大きな感謝を感じられるようになります。また、自己嫌悪の原因となるようなリアクションを取っていた自分に対して「仕方がないことだった」と理解し許すことで自己嫌悪感も消えて行きます。


わたしは余裕の無い状況で周囲を傷つけてしまった罪悪感に陥った時に、当時の大家さんであり、同じく移民だったイラン人女性からとても助けられました。アメリカの愚痴をただひたすら話し合ったり、一緒にイラン映画や日本映画を見たり(アメリカ文化から自分を一時的に遠ざける事をする等)、そんなひと時がとてもありがたかったです。


戦闘モードになって一番辛いのは、実は自分自身だったりします。そのため、自分がどういう状況に置かれているのか、そしてなぜそれが起きているのか。この経験が自分だけに起きていることではないことを理解し自分を責めないことが、ネガティブな感情に押し殺されないための強い力になります。


尚、周囲にまったく話せる人がおらず、八方塞がりになってしまった場合は、心理カウンセリングなど心や移住問題の専門サービスを受けることをお薦めします。異文化生活、周囲との比較は禁物!何よりも自分に必要なことを必要に応じて積極に取り入れていくことがとても大切です。


この記事が、慣れない環境で辛い思いをしている方のもとに届いたら幸いです。



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。

 

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お薦め映画:


家族のあり方や人の心の動きをとても繊細に表現した作品が得意なイラン映画の中でも、特に有名な名作の一つ。


静かな日本映画が好きな人なら、きっと好き。実は結構親日家も多いイラン、文化や家族観に日本との共通点がたくさんあるんですよ。この話は、移民が舞台の話でもあるので興味がある方はぜひご覧ください。




参照:

Johann Hari. (2019). This could be why you're depressed or anxious. TED Talk.






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