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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

心理カウンセリングはお悩み相談と何が違うの?カウンセリング理論とは?心理カウンセラー選びに参考にしたい3つの有名心理カウンセリング理論を紹介


“心の悩みを相談するためのサービス”である心理カウンセリング。


傾聴、認知療法、スピリチュアル、自己啓発、etc‥。様々な言葉が飛び交う心理カウンセリングですが、心理カウンセラーは何を基準に人の心の悩みを取り扱うのか、実際のところ疑問に感じている方は多いのではないでしょうか?


そこでこの記事では、様々ある心理カウンセリング理論の中でも一般的に普及度の高い3タイプ(精神力学理論、認知行動理論、人本主義理論)を中心に、それぞれをざっくり比較・解説。そして、各理論から誕生した療法の目指す心理カウンセリングのゴールについて紹介したいと思います。(注:かなり大雑把な説明となっております。)


心理カウンセリングがお悩み相談と似て非なる理由:心理カウンセリング理論の存在

親身に人の話を聞いてくれる友人や美容師さんはいるし、自分にだって人のお悩み相談ぐらい出来る。だったら、心理カウンセラーは何が違うのだろうか?


心理カウンセラーがお悩み相談に乗ってくれる素人さんと違うのは、相談内容の解決を模索する際に、心理カウンセリング理論を使うところにあります。


心理カウンセリング理論を使うことによって、心理カウンセラーは:

  1. 『相談者のサポート』という目的に焦点を絞った特別な人間関係の構築が可能になる

  2. 相談者の状況をより正確に理解しやすくなる

  3. 相談者の悩みを解決するための効果的な方法を探すことが可能になる


心理学や心理カウンセリング理論は、人間心理や行動、体質、家族関係、習慣やその他様々な事象に関する研究を多く重ねた上で編み出された人の心を理解する術です。理論を基盤にすることによって、相談者が提供する多大な情報をいち早く整理し問題解決に向けて処理をする事が出来るようになります。


つまり、心理カウンセラーは、心理カウンセリング理論を元にデザインされた心理療法を巧みに取り入れて相談者のお悩みにアプローチし、解決の糸口を見つけていきます。そこが心理カウンセラーとお悩み相談をしてくれる素人さんの大きな違いと言えるでしょう。


心理の解釈はひとつではない、そして日々進化している

心理学の面白いところは、人間の心に対して様々な考え方が存在し、それに合わせて様々な解釈から作られた理論があるところです。


また、時代の変化や科学の発展により、同じ理論であっても100年前のものから現代風に大分内容が進化していたり、昔の理論を参考に新たな理論もどんどん生まれています。例えば、批判されることの多いフロイトの精神分析ですが、現代では、主な批判対象となっている性衝動についての仮説や女性と男性性の差別的な考えが取り除かれていたり、相談者と治療者の関係性が『患者と医者』的な上下関係から『相談者と対話相手』的な人間的で立場が平等な関係へと変化しているものが一般的です。


また、最近のトレンドとして登場したマインドフルネスも、元は仏教由来であり、100年前の心理学が始まった頃のヨーロッパには存在していませんでした。さらに、人間の心と身体の関係性からトラウマにアプローチするソマティックワークなども、脳科学分野の研究の進歩により徐々に認知度をあげ、今では認知行動療法を始め様々な心理理論の一部に取り入れられています。


3つの有名心理カウンセリング理論

多々ある心理学の理論ですが、ここでは知っておいて損は無い3つの有名心理カウンセリング理論の特徴を紹介します。


⒈ 精神力学理論


心理学の父フロイトの精神分析論から派生した理論である精神力学理論は、人間の『無意識』がその人の活動内容に現れるのではないかと考えます。心理学を語る上で、フロイトの無意識に対する考え方、そして精神的防衛システムの概念は、全ての心理学の基盤と言っていいでしょう。


精神力学療法の目指すゴールとは:

相談者自身の人格や行動、他人との関係が過去(特に幼少期の主要保護者との関係)の何に影響された上で起こっているのか、それを理解するための深い洞察力を身につけ、健康的な対人関係を構築出来る能力を培うことが問題の解決に繋がるとしています。


精神力学理論グループにカテゴライズされる療法(一部):

・精神分析

・精神力学

・対象関係論

・アドラー心理学(個人心理学)

・ユング心理学

・自己心理学など



⒉ 認知行動理論


パブロフの犬(食べ物を見るとよだれが出る条件反射)に注目したスキナーから始まった行動理論が基盤。ある経験や出来事を境に抱いてしまうネガティブな感情だったり間違った解釈が、人の認知や推測、信条に大きく影響を与え、問題や症状を引き起こしているのではないかと考えます。


認知行動療法の目指すゴールとは:

経験により培ってしまった間違った認識『認知の歪み』を直しながら、健全な思考パターンを習得し、問題症状の減少、自力で問題解決できるようになる方法を身につけることを目指します。


認知行動理論グループにカテゴライズされる療法(一部):

・リアリティセラピー・現実療法

・マインドフルネスベースドアプローチ

・ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)

・DBT(弁証法的行動療法)など



⒊ 人本主義理論


「人は本来、自己実現に向かって絶えず成長しようと試みる能力を備えている」という自己に内在する向上心に注目した理論。傾聴テクニックを含む来訪者療法の生みの親、カウンセリングの父と呼ばれるロジャーズは、カウンセリングに於いて、治療者と相談者の信頼関係が何よりも大きな変化要因であるとしており、彼のカウンセリング技法の多くはジャンルを問わずカウンセリングに携わる者が持つべき姿勢として広く普及しています。


人本主義アプローチが目指すゴール:

「相談者の人生は相談者が一番よく知っている」という前提の元、相談者が問題をどう受け止め乗り越えていくのか模索する過程を一緒に見守る姿勢を貫きます。相談者の主観的な現体験に意識を向けながら、本人の望みや、問題や葛藤の意味、自己に備わった素質をどう活かしたら自分らしく生きられるのかを模索する哲学的要素も含みます。


人本主義理論グループにカテゴライズされる療法(一部):

・来訪者中心療法

・実存主義療法

・ゲシュタルト療法など


新しい心理カウンセリング理論:ポストモダン心理学

上記3つの他にも、最近注目を集めている理論がこちら。


ソルーションフォーカスドセラピー理論:


超短期間で解決を目指す、一極集中型のセラピー理論。相談者の過去や問題が起こった原因には一切拘らず、相談者の強みを最大限に引き出しながら問題を乗り越えるための最善策を見つけることに注目する超前向き指向な心理理論です。


認知行動療法と同じく短期間で成果が出やすく、結果も測りやすいため(また保険にも適用されやすいこともあって)アメリカでは最近よく使われるようになりました。



ナラティブアプローチ理論:


移民や社会的にマイノリティに属すとされる人たちの治療にと強く注目されているナラティブアプローチ。問題は自分の頭の中で生まれるのではなく、生活する社会の様々な要素から影響を受けて作り出されていると考えます。


問題を自身から切り離すこと、そして問題に対して自分がどう対処していけば良いか、最適なダイアローグを再構築することが問題解決になると考えます。



この他にも、家族療法やカップル療法、フェミニスト理論、セックスセラピー理論など、様々な状況に応じて考え出された心理理論と、それを元にしたアプローチや療法が存在しています。


心理カウンセラーにより使う理論や療法は大きく異なる

アメリカの場合、心理カウンセラーは一般的に、資格を取得するまでに上記に挙げた心理理論を含む多種多様のカウンセリング理論を一通り全て勉強しなくてはなりません。そのため、実際の臨床においては自己流に自分に合う理論や考え方、アプローチを良いとこ取り、色々組み合わせて自分のカウンセリングスタイルを作っている場合が多いです。


どの理論も、多くの臨床・研究を経て効果の実績が認められた理論や療法のため、どれが良くてどれが悪い、などの区別は基本的にはありません。対極にあるような行動理論のスキナーと人本主義のロジャーズが人間心理に関する対談をした際に、意外にも互いの考えに同意点が多かったという話は有名です。


また、相談者の相談内容や状況、年齢などによっても、好まれる理論や使いやすいアプローチの傾向は変わります。例えば、不安を抱える人には考え方を変えるためのトレーニングを行う認知行動療法、逆に、高齢者の鬱やグリーフケアには、生と死や人生の意味を考えながら前向きさを取り戻すことを目指す哲学的な実存主義療法を取り入れる心理カウンセラーも。


わたしの場合は、アートセラピーやプレイセラピーなどの精神分析の流れを大きく組んでいる療法を学ぶ機会が多かったので、相談者の状況を理解する際は精神力学を取り入れた解釈をしますが、相談者との関係作りにはロジャーズの来訪者療法のテクニックは欠かせず、相談者の思考パターンを改善する時の介入にはマインドフルネスや認知行動療法のテクニックも好んで使います。しかし、移民や社会的マイノリティの方にはナラティブの概念がとても大切にもなりますし、人生の意味を考える実存主義の考え方もとても好きです。なので、「何理論派か?」と訊かれても、正直あまり答えられないのが実情です。笑


おわりに

この記事では、とても大まかに3つの有名心理カウンセリング理論を紹介しました。しかし、同じカテゴリ内にある療法でも、それぞれが属す主要心理理論の影響は受けつつも個性的であったり特徴的な解釈やアプローチの仕方が存在していたりします。また、ここで取り上げなかった他の心理カウンセリング理論も時代に合わせて次々登場しています。


カウンセラーによっては、得意とする相談者のタイプや、自分に合う解釈の理論やセラピースタイルを模索した結果、コーチングに近い自己啓発的な傾向が強くなる場合もありますし、自分の信仰(キリスト教や仏教など)を織り交ぜてスピリチュアルな要素が強くなる方もいます。なので、一概に心理カウンセラーと言っても様々な方が存在しますが、それはすなわち、絶対に自分に合うカウンセラーもいるということです。


長くなりましたが、心理カウンセラーが使うことの多い3つの心理カウンセリング理論を紹介してみました。この記事が、少しでも皆さんの心理カウンセラー選びの際に参考となれば幸いです。



クロスカルチャー心理コンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。

 

参照:

Gehart. D. (2013). Theory and treatment planning in counseling and psychotherapy. Brook/Cole Cengage Learning. Belmont: CA.

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