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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

アジア系アメリカ人のヘイトクライム増加の背景にあるもの‥とは?



アメリカでは、コロナパンデミックが始まってからというもの、アジア系住民への暴力事件が急増しています。

そして、先日ジョージア州では、白人男性による発砲事件が発生し、8人の被害者(内アジア系女性6人)を出しました。

犯人の動機がある特定の人種や民族をターゲットにしたヘイトクライムであったかは現地点では不明なものの、事件の報道担当官であったジェイ・ベイカー警部が犯人の犯行に関して「彼にとって今日は悪い日だった‥」と発言したこと、これが、パンデミック以降すでに大きな不安を抱えて生活していたアジア系アメリカ人にとっては許し難い言葉であったこと、そして、アメリカにおけるアジア系住人に対する差別の歴史を見せつけたような結果となりました。

今、アメリカでは、アジア系アメリカ人に対するヘイトクライムや、社会の差別への抗議活動が全国各地で行われています。そしてその背景には、アジア系アメリカ人のアメリカ社会での特徴的な扱われ方が深く関係しています。

この記事では、アジア系アメリカ人のヘイトクライム増加に伴って、歴史背景の振り返りと考察をまとめてみました。

アジア系アメリカ人へのヘイトクライムが今、増加している背景にあるもの

コロナウィルスが流行した当初、一番最初にウィルスの感染が報告された中国武漢が何度も報道で取り上げられました。それは、日本でも同じような報道だったと思いますが、コロナが世界中に広がり感染がどこからでも起きても不思議でない状態になった後も、トランプ前大統領は「中国のせい」「チャイナウィルス」という発言を繰り返しました。

トランプは、コロナパンデミックで失業をした人や、外出が出来ず不満を抱えた人たちの怒りの矛先を政府ではなく中国に向けるよう誘導していったのです。これを今の大統領であるバイデン氏を始め多くの人が『スケープゴート(責任転嫁に使われる身代わり)』と指摘し抗議していました。

そして案の定、アジア系アメリカ人へのヘイトクライムは増えていきました。


アジア系アメリカ人は顔なし?

一国(今回の場合、中国の政策)に向けられた感情が、その国にルーツを持つ者、さらには同じような見た目をしているアジア人全体に向けられている。この現象は、過去に何度も起き、繰り返されています。

例えば、1982年、結婚を間近に控えた27歳のヴィンセント・チンという中国系アメリカ人の青年がデトロイトで白人2人に殺害された事件があります。彼は、当時アメリカの車産業を減退させる原因の一部を作った日本に恨みを抱いた者達に日本人に間違えられて殺されたのです。

東アジア系の見た目の者が、実際は中国人であっても日本人であっても簡単に置き換えられる。そして、アメリカに生まれ、アメリカ人として育っていたとしても、いつまで経っても、外国人のような扱いを受けることがある。むしろその人がどこ出身かはこの際関係ない。

これはメディアのアジア系被害者への扱い方にも共通していて、被害者の名前が個人名で話されることよりも、アジア系の1人という扱いで名無しに扱われることの多い事実に、アジア系アメリカ人の活動家たちは問題視の声を挙げています。



アジア系アメリカ人に対するステレオタイプ:モデルマイノリティ

アメリカのアジア系を指す言葉によく使われるモデルマイノリティ。

中国、香港や台湾、韓国などからの移民に社会的成功者が多いことを指してアメリカ社会のマイノリティグループのお手本として説明されるステレオタイプです。

しかしながら、これは一部のアジア系アメリカ人に持たれているイメージにしか当てはまらず実際には、アジア系の中には戦争被害や政治政策から逃れるため難民となったベトナムやカンボジアなど東南アジアの方たちなどで社会的貧困層に当たる方も。お手本グループにまとめられてしまうことで、POC(有色系人種、社会的マイノリティのグループ)にも含まれないなど、彼らの境遇が理解される機会が極端に少なかった‥今までアメリカ社会は、アジア系アメリカ人をこのように一括りにして本来向き合うべき社会問題に向き合ってこなかったのです。

むしろ、マイノリティの中で成功者のように扱われたことで、他のマイノリティグループとの隔たりが出来てしまったとの指摘もあります。


自己主張が控えめ?

第二次世界大戦の日系強制収容所の体験を経験した日系アメリカ人は、アメリカ文化・社会に馴染むよう文化変容を西洋化、同化してきた歴史があります。

そして、政治情勢が不安定であったり政府を信用出来ないような国から移住してきた方の中には、あまり政治に関わることに積極的になれなかった方も多いようです。そのような背景と過去に何度も起きているアジア系を対象にした差別政策から、アジア系アメリカ人の歴史は長いものの政局に極端にアジア系が少ない、という状況が起きてもいるようです。また、日本を含め、意見を述べること、特に目上の人に意見を述べることを良しとしない文化価値観の影響も少なからずあるようです。

そのため、アジア系アメリカ人が全体的に積極的に社会に声を上げることが今まで少なかった傾向があるようです。



いつまで経っても外国人扱い?

英語と大きく異なる言語形態を持つアジア圏の言語出身者には、長年アメリカに住んでいても英語が堪能でない方も。留学生の間でも、ヨーロッパ圏出身者であれば2~3ヶ月住んでいれば英語も上達する人が多い一方、アジア圏出身者には、英語の習得に時間が掛かります。そのような英語が出来ないイメージがアメリカで強いのも、世界の中でもこのアジア系が一番目立つでしょう。

また、食べ物やその他の文化もアメリカ主流文化である西洋的なものとは大分違います。そもそも、アジアの国(中国や日本、韓国、ベトナムなど)自体が一つの個別の国として強く認識されて理解されている点もその他の地域(南米やアフリカなど)に比べ特に顕著です。そのような様々な特徴が相まって、社会全体的に西洋文化の影響を受けているアメリカ人から見ると、自分たちとは違う『外国的』価値観を持つグループに映っている場合が多いようです。

このような背景を含め、イタリア系、ドイツ系アメリカ人などが一切アメリカ人であることを疑問視されないのとは裏腹に、アジア系アメリカ人は、3世代4世代目だとしてもアジアからきた移民、外国人の扱いがあることに疑問を持つべきだと説明する活動家もいます。


社会の暗を目の当たりにする中で‥

このような背景がある中で急増しているヘイトクライム。

わたしは、これはBlack Lives Matter運動とも通じる、社会の仕組みにもともと見え隠れしていた社会の病理がトランプをきっかけに露呈したもののように感じます。

社会が直面するべき差別にルーツを持つ問題がもともと存在していた。しかしながら、ハリウッドエンタメ業界だけ取ってみても、アジア系役者に活動の場を増やしていく活動が積極化するなど、少しずつ状況が変わっていく動きはあり、変化が始まっていました。

そのため、やはり大統領という立場からアジアヘイトを煽動したトランプの罪というのはとても重いと感じていますしそこに強い怒りを感じています。そして、その矛先が、ヘイトのターゲットとなるグループの中でも、更なる弱者である女性や高齢者に向けられていること。そこにわたしは人間の卑怯な弱さと醜い部分が集合されているような気分になりました。

しかし、同時に、この醜さやヘイトに対して、優しさや強さで立ち向かう活動も目にします。例えば、俳優のダニエル・デイ・キム氏をはじめハリウッド俳優達が問題定義のスピーチをメディアで積極的に展開したり、サンフランシスコでヘイトクライムにあったXia Zhen Xie氏の家族が募った寄付に多くの金額が集まったこと、そしてその集まった金額をXia Zhen Xie氏と家族がレイシズムと戦うためのコミュニティに還元すると発表したこともニュースになりました。

人間の様々な側面を目の当たりにする今。人間の美しさと醜さを見せられ、自分はどちらを代弁する人間になりたいだろうか‥自分が起こすアクションが、卑怯な弱さで人を傷つける側になるのか、それとも強さで人を守り戦う側になりたいか‥。一人一人、それを選択していく権利を社会の一員として持っていること、自分もそれを持っていることを実感したのでした。


さいごに

この社会情勢に、深く傷つき何もやる気が起きない人も、逆に精力的に社会活動をしようと思った人もいるでしょう。わたしはまだ正直なところ、自分の気持ちの持ちようが整理出来ておらず、今はまだ、少しニュースから離れ日常生活をいつも通り送れることを意識しながら毎日を過ごしています。

人は人それぞれ大きく求めることも、出来ることも、感じることも違います。今は、自分を労り自分のケアをとにかく徹底していくこと。そして、気持ちを一人で抱え込まず共有していくこと。それをまず第一に心掛けながら過ごすようにしてくださいね。



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。

 

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関連サイト:

ヘイトクライムに遭ってしまったら?


この記事で紹介したXia Zhen Xie氏家族による寄付サイト↓




参考:


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