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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

映画「クレイジーリッチ!」に見る文化考察、そして母の偉大さ



みなさんは『クレイジーリッチ!』をご覧になりましたか?


原題はズバリ、


”Crazy Rich Asians.”


映画『クレイジーリッチ』のポスター

この映画、今までハリウッドに皆無であった、ほぼ全キャストがアジア系俳優の大プロダクション作品として登場。私の住んでいるアメリカ・カリフォルニア州ではアジア系の人口が多いのもあって、公開当初大盛り上がりでした(ブラックパンサーと同じ構図ですね。)


もちろんアジア人の私は、オープニング初っ端から飛ばされるクレイジーリッチアジアンのクレイジーリッチ振りに大喜び。イギリス人ホテルマンを蹴散らすあたりが特に…(爽快っ!)


しかし物語が進行するにつれて、アメリカで育ったチャイニーズ系アメリカ人の主人公と、クレイジーリッチなお家柄の恋人の家族達とのドラマが待っています。ここでは詳細は省きますが、とにかくお家柄が重要なクレイジーリッチ家族にとって、主人公は受け入れられない存在だったのです。


この記事では、「クレイジーリッチ!」からみるアジアとアメリカの文化考察と、この映画の魅力について恋愛要素以外の視点から書いてみました。


集団主義 vs. 個人主義のバトル

ここで語られるのは、集団主義性質を持ったチャイニーズ系シンガポーリアンと、個人主義性質を持つチャイニーズ系アメリカンの衝突。文化を語る上でよく目にするこの言葉「個人主義と集団主義」これは文化や社会を保つ上で、その民族が民族に所属するメンバーに対し昔から美徳・好しとしてきた価値観のことであり、大きく分けて二つに分類されるそうです。


ここでそれぞれの特徴をみてみましょう。


集団主義の社会や文化にはこのような特徴があります:日本をはじめアジア全域・中南米・南米・アフリカなど


・自分よりも集団の利益を考える

・調和を大切にする

・権力に対しての服従

・感情の抑制

・孝行

・目上の家族を敬う

・謙遜

・決められた役割を全うする

・礼儀正しさ

・伝統を守る

・直接的でない表現

・自然や環境に逆らわない、共存する


それに比べ、個人主義の社会や文化はこのような特徴があります:北米・ヨーロッパなど


・自分のことを常に意識に置く

・自立心

・将来を見据えた考え方

・環境を支配する試み

・競争的

・土地やものの獲得を目指す

・直接的でオープン

・自由

・相手と距離を置く

・適者生存


映画の中で何度も語られる「あなたは外見は中国人だけど、中身はアメリカ人」というこの言葉。これだけの違いがあれば、双方のすり寄せはなかなか上手くいかないのは無理はありませんね。


*ちなみに余談ですが、アメリカではアメリカで生まれ育ちアメリカナイズドされた東アジア系の人のことをバナナと表現する場合があります。それは外見は黄色、中は白。映画の中でも主人公の友達が少し触れていました。


むしろ、集団主義特徴があったからこそクレイジーリッチな財産を築き上げ守ることが出来てきたと信じるこの家族にとって、主人公の持つ個人主義的考えは、一家を崩壊へと導きかねない危険な存在だったのでしょう。


お母さんの存在

この集団主義と個人主義のバトルを見てみると、なおさら感じる『母』の強い思い。


この映画では、主人公の母と、主人公の恋人の母がそれぞれ登場するのですが、この女性たちの置かれた立場と葛藤が、アジアらしくとても静かに、しかし心強く表現されています(双方素晴らしい女優さんが演じています。)


そこに描かれるのは、移民&シングルマザーを選び必死にアメリカで子供を育ててきた母(主人公側)と、自分のせいで将来を台無しにしてはいけないと必死で子供を守るために自分の感情を犠牲に生きてきた母(主人公の恋人側)。


双方の母親がそれぞれに子供を深く愛する気持ちが、思いっきり対照的に、しかし頑ななメッセージとしてあって、それがとても見事に描かれているのです。


このお母さん達の心の葛藤が、とてもとても切なくて暖かくて、わたしはこの映画が大好きです。


おわりに

まだまだアジアの文化、とくに東アジアの文化はアメリカの主流社会から見たらストレオタイプに見られがち。例えば、家族のしきたりだったり、女性の役割だったり、東アジア人のイメージは、世界に誤解されていることがとても多いと思います。この映画は、良い意味でそれをぶち壊してくれる作品だったと思います。


「ぶっ飛んだ金持ち家族の長男に見染められたごく普通の女の子のシンデレラストーリー」と説明されることが多いこの映画、わたしは、この二つの真逆の文化にいるお母さん達にぜひ注目して観てもらえたらと思います。


ちなみに、映画館で初めてこの映画を観た時、わたしのアメリカ人の旦那さんはわたしの両親に初めて挨拶に行った日を思い出したらしく(特に主人公の恋人の母役を演じたミッシェル・ヨーが主人公に放つ冷たい視線が、わたしの母が彼に見せた視線と全く同じだったといっていました笑)、最後はとても感動して大泣きしていました。


家族の物語。誰もが共感出来ることが間違いなしのストーリーです。


今日はそんなほっこりしたお話を書いてみました。



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。


 

参照:


参照文献:

Bhugra, D., & Grupta, S. (2010). Migration and Mental Health. Cambridge University Press: Cambridge, GBR






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