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差別の正体:元・白人至上主義者から学ぶ『相手を理解する力』

みなさんは白人至上主義者がどのような人たちか、想像をしたことはありますか?そして、彼らがなぜそうなるに至ったのか考えたことはありますか?



TED

Christian Picciolini: My descent into America's neo-Nazi movement- and how I got out.


この動画は、14歳で白人至上主義者の過激グループに所属したクリスチャン・ピシオリーニ氏のTEDでのスピーチです。彼が白人至上主義グループになぜ入隊したのか、そして22歳で脱退するまでの経緯について、自身のとても正直な心情の吐露と共にとても分かりやすく説明しています。

(Transcriptタブから日本語を選択出来ます。)


この記事では、動画で語られる内容と、差別主義者が生まれる背景について解説したいと思います。


14歳の白人至上主義者の誕生

ピシオリーニ氏は、イタリア移民の子供としてシカゴで育ちました。


移民の両親は新しい土地に根を張っていけるよう生活を切り盛り、必死に働きます。彼はそんな両親のもと、寂しさを感じながら育ちました。


その寂しさが怒りへと変わり、世の中どこにも自身の居場所がない気がしていたティーンの彼は、ある日ジョイント(大麻)を道端で吸っていたところをある男の人に声をかけられるのです。


「こんなもの、お前を従順にさせておきたい共産主義やユダヤ人の連中の思うツボだぞ」と。


その人は、白人至上主義者のメンバーだったのです。


自身の存在意義や居場所を感じられず、やり場のない悲しみや怒りの感情を心に秘めていた彼にとって、その日、初めて心の痛みをぶつけるターゲットを見つけました。


そこから彼はどんどん、白人至上主義の考えにのめり込み、今までの鬱憤を晴らすかのように自身の怒りを燃料に、人種ヘイト活動を繰り返すことになりました。


共感の力

そんな活動を続けていた彼は、レコードショップを開きます。はじめは白人至上主義者を相手に白人パワー系音楽が中心だったものの、その他のジャンルを目当てとするお客もやってくるように。


ある日、店に来た黒人の男の子がとても悲しそうだったのをみて、思わず声を掛けるのです。


その子は「母親が乳がんになった」ということを彼に打ち明けます。


その瞬間、彼の心の中で何かが変わりました。


なぜなら自分の母親も乳がんだったから。


彼にはその少年の気持ちが痛いほどわかりました。


その日から、お店にやってくる、もともとは自分が差別していた人たちにも、自分と同じような感情や葛藤、人生があることを知っていくようになりました。


そして、白人至上主義音楽は店頭から消えていきました。


贖罪と自分を許すこと

その後、彼は白人至上主義という居場所を手放す過程で様々な苦難を経験するのですが、友達の勧めでやっとの思いで仕事を手に入れます。


心機一転、のつもりがそこで待っていた仕事はなんと自分が過去に通っていた学校への出向。そこはかつて自分が人種差別をアピールし数々の問題を起こした場所。とにかく過去に葬りたい場所でした。


学校に出向いた彼が見つけたのは、かつて問題を起こした時に敵対した黒人セキュリティガードのおじさん。


勇気を振り絞って、彼はそのおじさんの後をつけます。そして声を掛けるのです。


振り返ったそのおじさんは、彼の顔を見て恐怖で半歩下がったそうです。


それを目の当たりにした彼は、ショックを受けます。自分がその人に与えていた恐怖がどれほどのものだったのか、悟ったのでした。そして、出ない声を出して自分の過去の過ちを謝りました。



おじさんの返事は…


「自分を許しなさい」という言葉。



彼が、人の愛に触れ、社会に居場所を感じた瞬間でした。


その日から、彼は自分と同じような境遇の白人主義者達を変えていく活動を始めるようになります。


知らないことほど怖いものはない

彼が経験したことは、実はほかの白人至上主義者たちにも多く共通しているそうです。


彼曰く、社会やコミュニティの中に、自身が所属できるような場所や居場所がなく孤独を感じている人が、人生という道を歩いている途中で穴ぼこ(トラウマだったり挫折だったり)に躓いてくうちに、もともといた道からどんどん逸れていく感覚だと話します。そして、得体も存在も知らない民族や人種の人を自分を不幸に追い込んだ元凶・その原因を引き起こしている存在だと思い込んで攻撃している、と。


事実、彼らのほとんどが、差別対象の民族や人種に対する知識をほとんど持ち合わせていない。そして、無知が恐怖をさらに増大していると説明しています。


社会心理学の研究でも、社会的弱者や教養知識が無い人ほど、移民・民族差別に傾倒していることが知られています。彼らの社会に対する怒りの矛先が、さらに弱者である移民に向けられるというのは、「いじめられっ子がもっと弱い子をいじめる」構造と同じ、集団心理の特徴として起きてしまうことのようです。


解決策はあるのか

人種差別主義に感化されている人の心に接近するには、批判や正当論で攻めるのはご法度。


できるのは、彼らの道に出来た穴ぼこを埋めてあげること。そして、居場所を作ってあげること


なによりも、人を動かす強いパワーになるのは、相手を理解する共感力・思いやり。


クリスチャンさんは、特に、自分が忌み嫌っていた存在の人から受ける思いやりや理解ほど、人種差別を辞める説得力を持つものは無いと話しています。


自身がしてきた罪を改め、新たな犠牲者や加害者を生み出さないよう、自身をさらけ出しながら活動を行うクリスチャンさんに心が動かされます。


暴力からは人を変えれない。人を変えるのは、愛。


『北風と太陽』を思わせるような、考えさせられる話でした。皆さんはどう感じたでしょうか?



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。


お薦め映画:

アメリカン・ヒストリーX(2000)


エドワード・ノートン主演、ネオナチリーダーだった主人公が、差別の愚かさに気づき変わっていく話。まさに、このクリスチャン氏が経験したようなことが描写されており、重く心にずっしりくる作品です。







参照:

Christian Picciolini: My descent into America's neo-Nazi movement- and how I got out. TED


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