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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

境界線・バウンダリーが変わるとき。人間関係はどのような変化を迎えるのか?



自分と他者の間に存在する見えない心のフェンスである境界線・バウンダリー。


対人関係の問題のなんと約90%が境界線・バウンダリーに原因を持つと言われているほど、わたしたちの人間関係においてとても重要な役割を果たしています。


境界線・バウンダリーの始まりは、わたしたちが一番最初に関わる対人、つまり保護者との関係まで遡ります。この一番最初に作られる境界線・バウンダリーが軸となって、我々はその後の人間関係を構築していきます。


しかし、もしその境界線・バウンダリーが自分を苦しめる形のものであったとしたら…?そしてそれに気づいた時に、新たな境界線・バウンダリーを作ると何が起きるのか?


実は、自身にとっての健康な境界線・バウンダリーを再構築しようとする際に、多くの人が戸惑うことがあるのです。そして、それが健康な境界線・バウンダリー形成を難しくしてしまう障壁になっています。


そこでこの記事では、自分の境界線・バウンダリーに変化が起きた時に起きることについてを説明してみたいと思います。



そもそも、境界線・バウンダリーはどのようにして作られていくのか?

他人と自分の適切な距離感を決める存在の境界線・バウンダリーは、子供が一番最初に他者との関わり方を意識し始める2~3歳頃から構築され始めます。それはちょうど子供に自我が初めて芽生えるイヤイヤ期に当たります。


新生児・乳児(1歳ぐらいまで)の頃は、母親(保護者)の一部のような感覚だった子供が、幼児になり自我が芽生えるあたりから、精神的に、保護者とは別者の一人の意思を持った存在に成長していきます。


この変化の時期に、子供の異論(イヤイヤ)を親がどう捉えていくのか。その接し方が、子供の境界線・バウンダリー形成に大きな影響を与えます。


例えば、子供のイヤイヤを断固としても受け入れない親に育てられた場合、子供は「自分には自己主張をする権利がないのかもしれない…」と相手に大幅譲歩した境界線・バウンダリーの引き方を学んでしまうかもしれない。一方で、子供の癇癪が起きるたびに子供の機嫌を取ることを優先する親に育てられた場合は、「駄々さえ捏ねれば相手が融通する」と、相手の境界線・バウンダリーを尊重しない、または侵害することを良しと学習してしまう子供もいるかもしれません。


このような、親や保護者との関係性から学ぶ自分の立ち位置が、その人にとっての他者との境界線・バウンダリーの定型となり、その後の対人関係にも同じように繰り返されるのです。




自分の境界線・バウンダリーが不健康なものだと気づく時

「人間関係が疲れる…」と感じている人の疲れの根源を辿ると、この境界線・バウンダリーの問題に行き着きます。


特に、アダルトチルドレンと呼ばれる、幼少期の頃に子供になり切れなかった精神的経験を持つ大人には、思い当たる人がとても多いでしょう。


アダルトチルドレンは、元はアルコール依存症の親を持つ子供たちを指す言葉で、機能不全の親の代わりに、子供のうちから本来であれば大人が担うべき精神的役割を家族内で果たしていることが特徴です。アルコール依存症の家族でなくても、例えば、片親が不在であったり両親の間に対立構造があるような家庭の中で、親の精神的なパートナーや相談役、家族の衝突の仲裁やガス抜き役、兄弟の親代わりのような役割を担いながら幼少期を過ごした人たちにも当てはまります。正直なところ、父親が仕事で不在になりがちな家庭が多い日本では、アダルトチルドレンはとても多いと思います。


彼らは、本来であれば見解のある大人が設ける安心できる精神的枠組みの中で、自己主張の仕方や感情のコントロールを学んでいくはずの幼少期に、その枠組みが無いものだから、どこまで自己主張をして良いのか、相手に合わせる必要があるのか、その境い目を適切に学べません。むしろ、自分のことで一杯一杯の親を支えるあまり、相手の顔色を伺いながら自分の境界線・バウンダリーを相手に大幅に譲歩した形で成長する方がとても多いのが特徴です。


相手に大幅に譲歩した境界線・バウンダリーを作ってしまうと、自分の許容範囲以上のことを相手のためにし過ぎることも。そうすると、自分は疲れる一方で、周りには、感謝よりもしてもらって当たり前と感じるような、他人の境界線・バウンダリーを侵害してくる人たちが寄ってきます。


相手に尽くし過ぎてしまう…。いつも聞き役になっている…。など、自分の人間関係にそれらのパターンが起きてしまうのは、自分の持っている境界線・バウンダリーに原因があるのです。



相手に今までとは違う意思表示をすると起こること

心理カウンセリングなどを通じて自分の境界線・バウンダリーが不健康なものであったと気づいた時、それが自身の境界線・バウンダリーを変化させるきっかけになります。


しかしながら、今まで、大幅に相手に譲歩することで成立していた相手との間にある境界線・バウンダリーに変化を起こそうとするとき、それはまるで、絶妙なバランスで荷物を支えて立っていた2本の柱が揺れ動くような衝撃を作ることになります。


自分が相手に譲渡してより多くの重さを負担していた分、相手は軽い負担で済んでいたのですから、それが変わることには相手からの大きな抵抗が起きます。そしてそれは、適切な境界線・バウンダリーを作ることを難しくさせる大きな障壁となります。


例えば、相手の怒りに直面するかもしれません。今まで大丈夫だったことに、いきなりNOを突きつけられて逆ギレする人、絶対いますよね。そういう人が相手だった場合、思わず恐怖で怯んでしまうこともあるでしょう。


もしくは、NOを突きつけられた途端、今までしてもらったことに対する感謝よりも、「あなたのせいで苦労する羽目になった」「なんてかわいそうな自分!」を演じる、他人本意、被害者面した人に責められることもあるかもしれません。相手からのそのような非難に、とてつもない罪悪感に苛まれることもあるでしょう。


相手からのこのような抵抗を受けて、結局元の状態に戻ってしまう…。この巧みな心理操作を含む抵抗を相手から受けることが、適切な境界線・バウンダリー引きを難しくさせます。


しかし、相手からの逆ギレや居心地の悪い罪悪感、恐怖心を乗り越えた先に構築した新たな境界線・バウンダリーを通じて、見えてくる新たな世界があるのです。



抵抗を乗り越えた先にあるもの

抵抗を乗り越えた先にあるのは、自分を守ってくれるシステム。そして、それを通して大きな人間関係の変化が訪れます。


まず、自分の限界が何なのかを理解し、その限界を周りに伝えていく。そのやりとりを通じて周囲と適切な距離感で付き合える術を知ることによって、人付き合いが圧倒的に楽になります。


そして、自分の新たな境界線・バウンダリーを尊重してくれる人とは付き合いは深まりす。なぜなら、もっとその人たちと過ごしたいと思えるようになるから。


逆に、自分のことを尊重してくれない人に対しては、距離をとったり関係を切ったり、または、向こうが離れていく…なんてことも起こってきます。境界線・バウンダリーを変化させて迎えるこの人間関係の変化に、友人を失ったような、寂しさや悲しさを覚えることもあるでしょう。でも、そんな時は、この人間関係が本当に自分の人生に必要だったのかを一緒に考えることも必要です。



おわりに

わたしも、相手に譲歩した人間関係を構築することが多かったのです。そして、人付き合いが疲れていきなり音信不通、なんてこともありました。が、境界線・バウンダリーについてを学んでいく中で、いつも自分の話を聞いて欲しい時だけ連絡してくる自己中心的な友人達の存在に気づくことが出来るようになっていきました。そして彼らにNOを言うようにしたのです。


初めは、罪悪感や、「一度くらいなら別に良いかな…」と思う仏心の気持ちもあったものの、毎度彼らと会って帰って来る度に時間を無駄にしたような虚しさや憤りを感じることを思い出して、自分にとって無理のない境界線・バウンダリーを引き直しました。


そうすると、徐々に向こうはわたしが彼らの期待通りにならないのを理解し関係も浅くなっていき、友人関係が終わってしまう喪失感を最初は感じたものの、「所詮その程度の友人だったのだ」とも感じました。それよりも自分を大切にしてくれる友達ともっと会いたいと思うようになり、人付き合いに対する自分の意欲も変わっていきました。


わたしのクライアントさんたちにも、境界線・バウンダリーが変わったことによって、有害な関係を断ち切れただけでなく、出会う人のタイプが代わり友人関係がもっと深いものになったり素敵なパートナーに出会えたりした人も少なくはなく、その変化は当前のことだとは分かっていても、毎度そのような報告を聞くたびに境界線・バウンダリーの威力を感じずにはいられません。


今回の記事では、境界線・バウンダリーの変化によって何が起きるのか、少し具体的に特集してみました。自分を守るためにも、自分の生きたい人生を生きるためにも、今生きづらさを感じている方は、ぜひ、境界線・バウンダリーの知識を広げてみてください。


クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWA

 

おすすめ書籍:

ヘンリー・クラウド、ジョン・タウンゼンド著


ブログに何度も登場しているこの本。何度も登場する理由があるくらい、境界線のバイブル的本。境界線・バウンダリーがどうわたしたちの生活の中で機能しているのか、とにかく詳しく細かく説明されているため、このトピックに対する見地を広げたい方には必読だと思います。レビューを読むと聖書の内容があるためそこに拒否感がある方が多いそうですが、それを日本社会に置き換えてみるとわかりやすい部分がたくさんあるような気がします。


ネドラ・グローバータワブ著


日本語翻訳化が遂にされました。アメリカの心理カウンセラーのグローバータワーブ氏による、境界線・バウンダリーをすっごく分かりやすく説明した本。ヘンリークラウド著の『バウンダリーズ・境界線』よりもくどくないし、長さ的にも表現的にも読みやすい本だと思います。




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