このブログをご覧になっている読者の皆さんの中には、アメリカでアートセラピストを目指そうと思っている方や興味のある方もいるかと思います。
でも、どこから調べ始めればいいのだろうか。
そこでこの記事では、アメリカでアートセラピストになる方法と、現在のアートセラピーの資格の立ち位置について、協会から公式に出ている情報を中心にまとめてご紹介したいと思います。
(この情報は2019年現在のものです。最新の情報はアメリカンアートセラピー協会や、各大学院の公式ウェブサイトからご確認ください。)
アメリカンアートセラピー協会 (American Art Therapy Association)
アメリカには、アメリカンアートセラピー協会というアメリカ各地のアートセラピスト達を束ねている団体があります。そして、アメリカで「アートセラピスト」と名乗っている人は、そこと直結するアメリカンアートセラピー資格委員会(American Art Therapy Credential Board)に登録しているアートセラピストのことです。
この団体は、アートセラピストが一定レベルの共通の倫理観・法律感覚・専門知識を持っているか、資格を乱用してクライアントに被害をもたらす人はいないか厳しく管理・監視している学会です。そのため、この協会が定める教育・訓練を受けていない人が「アートセラピスト」を名乗ることはアメリカでは認められていません。
アートセラピストの中にも、指導係(スーパーバイザー)になれるセラピストには違う肩書きがあるのですが、ここでは誰もがまず一番最初になる「登録アートセラピスト」について説明しようと思います。
登録アートセラピストになる条件 (Registered Art Therapist)
登録アートセラピストになるには主に3つのオプションがあります。
オプション1
アメリカンアートセラピー協会が認定するプログラム・大学院を卒業する。
卒業後1000時間のクライアントとの対面臨床研修をする。
100時間の臨床心理指導を受ける。そのうち50時間はアートセラピストから直接指導(スーパービジョン)を受ける必要があります。
オプション2
アメリカンアートセラピー協会指定外のアートセラピーが学べる大学院や修士プログラムを卒業する。
アメリカンアートセラピー資格委員会(AATB)が指定する必修科目をすべて納める。
すべての科目を終了後1500時間のクライアントとの対面臨床研修をする。
150時間の臨床心理指導を受ける。そのうち75時間はアートセラピストから直接指導(スーパービジョン)を受ける。
オプション3
アートセラピー以外の大学院や修士プログラムを卒業する。
アメリカンアートセラピー資格委員会(AATB)が指定する必修科目をすべて納める。
すべての科目を終了後2000時間のクライアントとの対面臨床研修をする。
200時間の臨床心理指導を受ける。そのうち100時間はアートセラピストから直接指導(スーパービジョン)を受ける。
研修時間に差がこんなにあるのは、オプション1・2のアートセラピープログラムには、卒業必須項目として一定数の研修時間(臨床心理経験と資格を所持するセラピストからの直接指導)がすでに含まれているからです。
これらをすべて終了し登録申請をすることで、登録アートセラピストとなることが出来ます(2019年現在。)詳しくはアメリカンアートセラピー資格委員会のウェブサイトをご覧ください。
アメリカ内のアートセラピーを学べる大学院やプログラムはこちらのウェブサイトから探せます。探している州のタブをクリックすると大学院の一覧が出てきます。
アートセラピストの資格の効力について
これさえ持っていればアメリカどこにいっても通用するのかと思いきや、州によって法律が変わってくるアメリカ。
実は、アートセラピーを公式に心理職として認めている州もあれば、あまりアートセラピーを資格として強く認めていない州もあるのです。
例えば、ニュージャージー州はアートセラピーがライセンス化されているので、このライセンスがあれば臨床心理のプロフェッショナルとして仕事ができます。
一方でカリフォルニア州は、アートセラピストという資格だけでは相手にされず、臨床心理の現場でプロフェッショナルとして活躍するには州認定のマリッジ・アンド・ファミリーセラピストまたはプロフェッショナル・クリニカルセラピストの資格を並行して取得する必要があります。(ちなみに、カリフォルニア州のアートセラピー認定校は、これらの資格が同時取得出来るようにプログラムが組まれています。わたしもこの方法でした。)
なお、アートセラピーがライセンス化されている州では、アメリカンアートセラピー資格委員会のライセンス試験を受ける必要がある場合があります。
住む州によって資格の効力が変わってしまうなんて、さすがアメリカですね。
一般的に、アメリカではアートセラピーは東海岸から広まったので、東海岸の州や都市の方がアートセラピーの認知率が高いそうですが、西海岸のオレゴン州もアートセラピーがライセンス化しています。そのため、大学院選びには、これら全米各州のアートセラピストの受け入れ状況も考慮する必要がありそうです。
まだまだ発展途上のアートセラピー業界。全米各地で提唱活動が盛んに行われている
私がアートセラピストの道に入った10年ほど前は、アートセラピーの資格がライセンス化されている州は1つもありませんでした。現在、6州がすでにライセンスを認めており、まだライセンス化されていない州でも現地のアートセラピストたちが、州のライセンス化を目指して提唱活動をしています。
ライセンス化されることによって、アートセラピーという仕事が他の臨床心理職と同等の権利を与えられるようになり、州運営の病院やクリニックにアートセラピストが一定数配属されるようになっています。また、ライセンスがあるかないかで給与や待遇も変わってきます。
もしかして、アメリカすべての州がアートセラピーをライセンス化することも、まだまだ先の話ですが将来的にはありえるかもしれません!
さいごに
アメリカでアートセラピストになるには、長い時間と全身全霊・身体的・金銭的投資が必要です。また、日本から留学する場合、ビザの問題もあります。
資格取得には、プログラム卒業後の研修期間も含まれるため、卒業後の予定も目処を立てておく必要があります。大学院の面接で教授から「入学からセラピストになるまで最低5年はかかるけど本当にやれるか」と訊かれたことがとても印象に残っています。さまざまな理由から途中で諦めてしまう人も多いのだと思います。
ライセンスがある州と認めていない州では就職状況が変わる上、各大学院やプログラムによって就学期間や内容にも差があります。
どこの州で学ぶのがいいのか、プログラムを決定する前に、現在のアートセラピー業界の状況も是非考慮に入れてみてくださいね。
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
アートセラピー情報を紹介するnoteを始めました。本記事を始め、様々なアートセラピー介入方法を紹介予定です。興味のある方は是非フォローをしていただけたら嬉しいです。
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