世の中の騒々しさに、大きなストレスを抱えてしまう時も、うんざりして気持ちが塞がってしまう時もあるでしょう。
しかし自分がどんなに強く望もうとも、社会や周囲を変えることは出来ません。唯一出来るのは、与えられた環境の中で自分がどう自分らしく満足できる生活を心掛けられるかということのみ。レジリエンスとは、困難な状況や逆境に置かれた時に、それを自力で乗り越えるための、自身の内面に湧く向上的な力のことを指します。
この記事では、どうしたら周りの状況に振り回されず自分らしく前進しながら生きて行けるのか、『レジリエンス』の力について、その仕組みや身につけ方を具体的に特集したいと思います。
レジリエンスはどう起こるの?
レジリエンスを研究しているリック・ハンソン心理博士は、人は辛い思いをしている時に以下の3つのステップを踏むことでレジリエンスを実現することが出来ると話しています:
経験した辛い思いや感情を事実として受け止める。
ネガティブな感情、例えば自分を傷つけたり痛めつけたりするような自分にとって害のある感情を減らす。
ポジティブな感情、例えば自分を幸せにしたり喜ばせてくれたりするような嬉しくなる感情を増やす。
辛い体験をした時に経験したことは無駄ではなく、その経験があるからこそ学べた感情・教訓・失敗などを受け入れ、それを踏まえた上で自分の尊重を高めるような楽しくて為になるような活動に取り組むこと。まさに、転んでもタダでは起きない感覚。そうすることで、自分の中に存在するネガティブな感情をポジティブな感情に入れ替え、逆境に立ち向かうことが出来ます。
『自分の尊重を高めるような活動』とは幸福感に直結する感覚、そしてグリーンゾーンを増やす活動
脳の発達の歴史を太古にまで遡った研究から、人が幸福感を感じるためには、以下の3つの感覚が必要だと分かっているそうです:
安心感:危険を遠ざける
満足感:報酬に近づく
結束感:誰かに愛着を持つ
『自分の尊重を高めるような活動』とは、つまり、この3つのどれかの感覚を得られる活動のこと。例えば、居心地のよくて安心できるような部屋作りをすることだったり(安心感)、言語学習や資格取得だったり(満足感)、家族を大切にすることであったり(結束感。)
そして、これら3つの感覚のバランスが心地いい時はグリーンゾーン、バランスが悪い時にはレッドゾーンにいると考えることができるそう。
レッドゾーン(幸福感の条件が満ちていない時)
グリーンゾーン(幸福感の条件が満たされている時)
この2つのゾーンは誰もが持っており、自分がレッドゾーンにいると感じる場合において、1〜3のどの感覚が満たされていないのか分析することが大切になってきます。そして、その条件が満たされるための感覚を『自分の尊重を高めるような活動』から得ていくことにより、自分の中のグリーンゾーンを増やしていくことが幸福感の向上へとつながり、レジリエンスになると説明します。
レジリエンスの実現にはコンパッション(思いやり・労り)が大切
レジリエンスの起こる仕組みはだいたい頭で理解できたとしても、いざやろうとすると難しい。レジリエンスの第一ステップである辛い経験とその時の感情を受け止める行為。これは簡単なようでとても大変な作業です。
レジリエンスの実現には、コンパッション(思いやり・労り)と感謝の気持ちが必要であるとされています。
自分が経験したことを批判の目を持って見るのではなく、優しい寄り添うような気持ちで見つめてみること。そして、自分にすでに備わっている条件、例えば、パートナーや友人・子供だったり(結束感)、住居であったり(安心感)、過去の功績であったり(満足感)、今まであって当然と思って見過ごしてきたことに感謝の意識を向けることで、ポジティブな変化を起こすために必要な活動が見えてくるかも知れません。
そして、その過程を真摯に取り組むことで、ポジティブな変化が生まれます。
辛い時にコンパッション(思いやり・労り)と感謝を感じるためのエキササイズ
自分にコンパッションと感謝を感じるために具体的に何をすれば良いのか。以下の10の項目を自分に問うことから試してみてください: ①自分を大切に思ってくれる人に気にかけてもらった時のことを思い出してください。それがどんな気分か、体感か、思い出してください。
②自分を応援する感覚を持ってみてください。自分に対してどんな声かけができるか、どんなことを願うか、考えてみましょう。
③その辛い経験と共に留まってみましょう。その経験をするに至った自分の決定に関して今どう感じているか、知ってみましょう。
④辛い思いや感情、自分に対する批判やストレスに対して、労りを持って接してみましょう。
⑤過去に他人から掛けられた優しい言葉や思いやりの言葉を思い出してみましょう。
⑥自分が気に掛ける相手を思い出しましょう。そして、彼らの辛い思いや困っていることに意識を向けてみましょう。
⑦彼らの辛い思いに、自分の思いやり・労りをお裾分けしましょう。
⑧相手に気に掛けてもらう感覚がどんなものだったか知っておくこと、そして辛い時はその感覚を思い出しましょう。
⑨自分は一人ではないことを知ること。
⑩自分の味方になること。労りを自分が自分に向けること(=セルフ・コンパッション)も出来ることを知ること。
おわりに
周囲の環境が激変したここ数ヶ月、自分の今まで築いてきたものを喪失したような感覚や、予定していた計画が崩れて絶望感で途方にくれてしまう方も大勢いるかも知れません。
しかし、このような時だからこそ、自分自身が今出来ること、自分の大切にしたいものを再定義し前進する努力を続けることは大切な行為です。そしてそれが出来るようになると、人は強くなり出来る範囲のことも増え、幸福度も上がります。何より、今後同じような体験にぶち当たったとしても、自分の尊重を高めるような活動をもっと積極的に取り入れられるようになりことでしょう。
レジリエンス、みなさんも注目してみませんか?そして、一回り強くなった姿で一緒に、激動の時期の収束を迎えませんか?
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
*コロナウィルスに伴い大きなストレスを抱えている方へ、一人で抱え込まず、心理カウンセリングサービスを是非頼ってください。在米でお近くの相談機関を見つけたい方など、わたしにもお手伝いできる事があるかも知れませんので、情報をお探しの方は、お気軽にお問い合わせください。
関連記事:
参照:
Hanson, R. (2018). Resilient: How to Grow an Unshakable Core of Calm, Strength, and Happiness. Audiobook. Audible.
リック・ハンソン著
この記事で紹介したリック・ハンソン博士による本。思考パターンを変えると脳は変わる、そして脳が変わると思考も変わる。自分の今後を決めるのは他でもない自分自身である。マインドフルネス やセルフ・コンパッションを脳科学から学びたいという方にも大変お奨めです。
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