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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

海外生活うまくいかないのは本当に自分のせい?!自己批判が起きる原因とその対処法を紹介【異文化変容ストレス】



自分の生まれ育った環境から離れて新たな場所で生活する移民が辿ること。それは異文化変容ストレス。

変化が苦手な人間にとって、新たな環境で一から自分の居場所を見つけることは、心身共にとても大きな労力となります。

しかしその中でも、バイタリティ溢れる、現地でバリバリ活躍している同国出身者がいるのも確か。そのような人たちを見てしまうと、どんどん自分が情けないような、自分一人がくだらないことでクヨクヨしているような、そんな気持ちにさせられてしまうこともあるでしょう。

異文化変容ストレスの大きな特徴。それは、個人差が大きいということです。しかし、葛藤が個人差を前提に語られることがとても少ないため、人には出来ることが自分には出来なかったり、一般的に語られる適応へのアドバイスが自分には難しかったり、そのような経験をしているうちにどんどん自信が無くなってしまうことがあるのです。

この記事では、そんな状況から引き起こされる自己嫌悪・自己批判の苦しさと、そこから脱却するための方法についてを提案していこうと思います。


自己批判が起きるメカニズム

自己批判はなぜ起きるのでしょうか。それは、自分を守るための防御機能だと言われています。

例えば、何か居心地の悪いような悲しかったり嫌な気分が沸いた時、それを他人に批判される前に、自分自身が批判をする役割を担うことで、他人から言われた時の心の衝撃を減らそうとする意識が働くそうです。

それは、『他人からの批判』が攻撃性を持った恐怖の存在だから。

目の前にある不安の種が相手からの批判として花咲いてしまう前に、自分で先回りして自虐のように自己批判することで、他者からの批判の可能性を減らす(恐怖感情を減らす)効果が自己批判(内部批判)にはあるそうです。



異文化変容ストレスはなぜ個人差があるの?

新しい文化に適応する過程において、多くの移民たちは、これらの様々な困難を経験する場合に出くわします。

  • 言葉の違い

  • 慣習の違い

  • サポートシステム(生活を助けてくれる知人や情報量)の少なさ

  • 生活力の脆弱性

  • 個人主義、集団主義からくる移住先の人と自分の考え方の違い

  • 自分の文化が生活から消える(自文化ロス)

  • 自分がマイノリティ(文化・人種少数派)になること

そして、これらの困難やチャレンジが引き金となって、心に大きな負担を抱えストレスを発症してしまう。それが異文化変容ストレスと呼ばれています。

ストレス要因が生活の様々なことに関する多岐に渡る内容のため、このバランスによっては、ストレスの振れ幅が大きく変わってきます。例えば、同じ日本からの移民でも、単身移住者か、現地のパートナーがいる人かによって前提にあるサポートシステムや生活力が変わってきます。例えば、現地出身の配偶者のいる日本人移民は、サポートシステムは比較的早いうちに手に届くところにある一方で、早いペースでの現地の慣習に慣れることや、自文化の消失を余儀なくされるかもしれません。また、身に降りかかる様々な状況に対する個人のストレス許容範囲度は大きく変わってきます。そのため、『移民』と一言にまとめて、彼らの経験を普遍化することは難しいのです。つまり、個人差がとても大きいのです。

そしてストレスが大きかった場合、まったく知らない土地に新たに定住するのですから、自分のHOMEと呼べるような安心出来る場所を確保することも容易ではなく、息抜きが難しいこともストレスが慢性的に続いてしまうこともチャレンジの一つと言えるでしょう。


異文化変容ストレスと自己批判の関係

個人差がとても大きいにも関わらず、その『個人差が大きい』ことがあまり世間一般に知られていない。それが、異文化変容ストレスが、自分に原因を求めやすくさせている点があるように感じます。

多くの移住者は、自分の具体的な移住条件を話すよりも、在住年歴を説明する場合がほとんどでしょう。しかし、個人差が大きいということは、在住年歴が同じ者同士でも、現地への適応具合やストレス度合いが同じとは言い切ることが出来ないのです。


例えば、「〇〇年も住んでいるのに、まったく英語が話せない‥」と説明される在米の方に出会うことは珍しくありません。

本来であれば前提が個人個人大きく違うため意味を成さない比較が、あたかもそれが世間一般の基準あるように話されることで、出来なかった部分が強調され、個人の努力や能力の足りなさが原因であるかのような錯覚を起こしてしまうのです。

そして、他者からの批判への衝撃を避けるために、自分自身が先手を打って自己批判をしてしまう。それが異文化変容ストレス下で起きやすい自己批判なのです。



自己批判を和らげるための方法とは?

頼れる人が少ない環境下で、一番の味方であるはずの自分が自分を批判してしまう。それほど辛いことは無いでしょう。自己批判を和らげるために何が出来るのか。以下の方法を試してください。

⒈ セルフコンパッションの土台を作る。

まず大前提に、自分を批判的な目で見ないように優しい見方の訓練をすること。これは自身の状況を振り返る次のステップに進む前に準備しておきたいことです。なぜなら、自分の状況を振り返る中で、自分に出来なかったこと、もっと努力できたこと、感じたくなかった気持ちなど、思わずダメ出ししてしまいたいような批判の気持ちが沸き上がってくる可能性が高いからです。

しかし、それらの感情を全て含めて、今、葛藤している自分がいるのです。その感情を否定してしまわないためにも、あえてここは、批判の目ではなく思いやりの目を持って自分の今、置かれている状況を振り返るようにしていきましょう。


⒉ 自分の置かれている状況を客観的に理解していくこと。

自分の置かれている状況を『主観』から『客観』視点で把握していく。この時に、自分の意訳が入らないように、出来るだけ起きたことや目の前にある現象をただ辿っていくような形で状況を説明出来るようにしていくこと。

イメージとしては、文化変容の葛藤を一人で頑張っている自分を少し遠くで眺めている別の自分がいるような感じ。自分がどのような葛藤を経験し、どのような気持ちを感じているのか、それらを客観的に振り返ってみます。


⒊  自分の心に残る様々な気持ちを一つずつ名前を付けて確認してあげる。


葛藤の中にいる自分に湧き上がる様々な気持ち、それらを一つ一つ手にとってラベルをつけるように、感情名を付けていきます。例えば、電話でうまく英語ネイティブに話せなかった‥そんな時の残念な気持ち、これに、「悲しかった」「悔しかった」「怖かった」「恥ずかしかった」などなど、色々な感情の名前を付けてあげます。

そして、それらを振り返った時に、そんな気持ちを経験した自分を労ってあげること。

その繰り返しをすることで、少しずつ、自分の気持ちに行き場が見つかり、気持ちが落ち着きます。


⒋ 自分一人だけが葛藤しているわけではないと、自分の意識を他者にも向けて見る。

この1から3のステップを繰り返す中で、「これって自分一人だけに起きていることなのだろうか」と個人で一人で悩んでいたことを「他者も同じような経験をしているかもしれない普遍的なこと」と考え方を変換していくこと。

これを通じて、徐々に、周囲にサポートが存在しているような、仲間がいるような、そんな心強さを感じられるようになってきます。


おわりに

インターネットが発達し、異文化情報を事前に収集したり、同国出身移住者の経験談を見聞きしたり、情報を手に入れる手段は増えました。しかしながら、実際に自分が身をもって経験することやそれに伴う負担は、千差万別、いくら事前情報があったとしても、その場にいって初めて理解することもたくさんあるでしょう。

だからこそ、自分自身にとって一番良い方法、一番合っているやり方をその都度選択していくこと。そしてそのための自分軸を持っていることは、異文化生活ではとても大切な要素となるでしょう。そして、その自分軸を守ためには、自分を挫く自己批判が大敵なのです。

異文化変容ストレスは、とても辛いものであると同時に、自分と徹底的に向き合い、自分を一回り大きく強くしてくれる機会を与えてくれる不思議な存在でもあります。今の葛藤を受け入れる姿勢を持ち続けている限り、いずれ経験した苦労が肥やしになる時が絶対に来るでしょう。この記事が、異文化生活にストレスを感じている方のお役に立てる部分があれば幸いです。


クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWA

 

関連記事:




参考:


セルフ・コンパッション

クリスティーン・ネフ著


本記事で紹介したネフ博士による本。ありのままを受け入れる、それはどういうことを意味するのか。ネフ博士の個人的な体験も盛り込んで説明される本書は、専門書的な難しさが削ぎ落とされて、誰にでも読みやすい内容になっています。





マインドフル・セルフ・コンパッションワークブック

クリスティーン・ネフ著


セルフ・コンパッションをどう実践していけば良いのか、その実際の具体例を紹介している本。セルフコンパッションが好きだった人にはぜひ続きに読んでほしい本です。






Neff. K., & Shapiro. S. (2019). The Science of Mindfulness and Self-Compassion: How to Build New Habits to Transform Your Life. Audiobook: Sounds True.



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