(2023年2月時点での)日本政府の同性婚に関する認識、LGBTQコミュニティメンバーへの見解に対して、大きな危機感を感じています。
この記事では、同性婚を未だ認めず、LGBTQコミュニティメンバーへの差別禁止が法律化されていないことの何が問題なのか、その問題点についてをメンタルヘルスや社会構造の見解を交えながら説明してみたいと思います。
この記事の最後には、岸田政権(2023年2月時点)に対してLGBTQコミュニティのメンバーへの人権保障の法整備を訴える署名リンクを掲載しています。
LGBTQコミュニティ
LGBTQとは、L: レズビアン、G:ゲイ、 B:バイセクシャル、 T:トランスジェンダー、 Q:クエスショニング、またはクイア、など多様な性的アイデンティティを持つ方達をまとめた総称を指しています。最近ではその他の性的アイデンティティも含んだ多種多様な呼び名も存在していますが、一般的に、LGBTQが広く知られた言葉として使われています。
シスジェンダー(身体と心の性が一致している)でヘテロセクシャル(異性愛者)の男性と女性のみを前提に構築された社会において、それ以上の多様な性的アイデンティティを持つLGBTQコミュニティのメンバーは、性的マイノリティと呼ばれ、日本に限らず様々な国や地域で迫害や差別の対象となってきた歴史があります。
そして、そのような社会背景がメンタルヘルスに影響しないわけがなく、家族やコミュニティから疎外され孤立してしまったり、自身の性アイデンティティに大きな葛藤を抱えながら生きる当事者はとても多く、トランスジェンダーの若者の不安障害や鬱、自殺願望などは、そうでない者に比較して2・3倍高いことも指摘されてもいます。
社会が、性的マイノリティに対して寛容ではない場所であればあるほど、性的アイデンティティが典型に当てはまらなかったり模索していたりする個人にとっては、それは生きづらい場所となっていること、そのため社会のLGBTQとの向き合い方にメンタルヘルスの視点は欠かせません。
二元的なジェンダー価値観がそもそもおかしい
LGBTQのアクティビストやレイシズム、フェミニズムの研究者たちによると、社会の抱える大きな課題は、シスジェンダー(身体と心の性が一致している)でありヘテロセクシャル(異性愛者)の男性と女性という二元的なジェンダー価値観、そしてそれを前提に携えた制度設計や社会構造であると指摘されています。
この社会構造により、性別役割分業が進み、ジェンダーステレオタイプが存在します。
「女性なんだから」、「男性なんだから」、といった価値観のもと、自分の生き方、将来設計が大きく決められていく。そしてそれは、知らないうちに(当たり前の中で)、賃金差や待遇差といった何かしらの差別に繋がっていくこともありますし、本人の生きづらさを加速させることともなります。
この価値観は、二元的(バイナリー的)ジェンダー観を強く内在する家父長制において優位にあるシスジェンダー(身体と心の性が一致している)でヘテロセクシャル(異性愛者)、さらにはその他社会的強者の立場にいる一部の男性に都合の良いように作られており、彼らにとっては、この社会体制が続くことはとても居心地がいいのです。彼らの居心地の良さは、女性や性的マイノリティ、その他の社会的マイノリティによって不公平をもたらされる相手がいることによって成立する、搾取的な構造の元、成立している快適さからくるものです。
日本政府の同性婚や性的少数派への認識は家父長制価値観に由来する
日本政府(自民党や与党)の度重なる同性婚を認める認めないの発言は、家父長制的価値観に由来するものであると言えるでしょう。
婚姻関係を男性女性に限定した現在の日本の婚姻制度は、主人と配偶者という構図のもと、多くの場合女性にとっては社会進出よりも家庭に入ることを前提にした制度になっており、公平とは言い難いように思います。それが、同性婚を認めることによって、従来の形とは違った関係作りをしていくカップルが増えていく可能性を、政府は恐れているのだと感じます。夫婦別姓を頑なに認めたがらないのも、同じ延長線上にある不安から来ているものと思います。
最近問題になった「同性婚を認めたら社会が変わってしまう」という総理による発言は、この家父長制度の構造が弱まる可能性を踏まえ、そこに不都合が生じるかもしれない、現在特権を持つ男性(もしくは同じ価値観を内在し恩恵を受けている名誉女性)による抵抗であると指摘することが出来るでしょう。
そして、婚姻制度の問題以外にも性的少数派への差別禁止を推奨できないことは、人権意識の欠如でもあります。
なぜなら、差別を禁止することを認めないことは、差別があってもいいこと(差別による不利益があっても保護を保証しないこと)を国が示しているようなものだからです。これは、暴力の肯定や、基本的人権の否定でもあります。そして、その背景には、やはり、この家父長制による自身の特権を当たり前に生きてきた者による無知や一方的な価値観の推し進めが見え隠れします。
何よりも、政治家のように公的な発言力を持つ者が、社会的マイノリティのグループに対して、ある一定の偏見を含む見解を垂れ流すことを平気でしていること、その発言の社会的インパクトを考えない姿勢に、危機感を感じます。
おわりに
最近注目された岸田総理、そして更迭された秘書官などの性的マイノリティ者へのヘイトクライム的な発言に対する批判はもちろんのこと、同性婚を認めることと、LGBTQの人権を守ることを法的に要求することは、何も当事者だけの問題ではありません。 この社会が、家父長制という一部の特権者にとって都合の良いように作られた社会構造を持つことは、LGBTQに限らず、様々な社会的弱者にとっても苦しい社会なのです。そして、政府関係者の幾度に及ぶ同じような発言により、彼らの意識や意図が家父長制度の維持に動機をもつことが明確化されました。
そのため、LGBTQの人権を守ること、そして、社会保障の安定化を推進する同性婚を認めていくための運動に賛同することは、この歪んだ社会構造をより多くの人がもっと生きやすくする環境に変えていくための第一歩になるでしょう。
岸田政権(2023年2月時点)に対してLGBTQコミュニティのメンバーへの人権保障の法整備を訴える署名は、以下のリンクからおこなっていただけます。
BUNKAIWA
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