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社交不安の乗り越え方 in 海外生活【異文化変容ストレス】



集団の場において、自分が他者からどのように見られているのかに大きな不安を感じてしまう、社交不安。


「空気を読む」ことを求められてきた日本文化で育った人にとって、違う文化背景の人と関わる時、相手とのコミュニケーションスタイルの違いや、自身の語学力の無さから、この不安がさらに際立つ場合もあるでしょう。

わたし自身、過去の経験を振り返ってみるとアメリカに来てから社交不安障害を発症してたかな?と思う時期があります。これは、本当に辛い!多分、アメリカ生活で一番しんどかった時だと思います。

そこで、この記事では、社交不安とは何なのか?そして、海外生活で経験しやすい社交不安の原因と、その対処法についてを提案したいと思います。

社交不安とは?

社交不安とは、文字通り社交の場(グループ)において経験する不安のこと。


他人から自分への評価が、ネガティブなイメージで受け取られることに対する恐怖心が不安の引き金であることが特徴です。


社交不安は、相手から何を思われているかが気になって対人関係に大きなストレスを感じます。そのため、友達がたくさんいたとしても心から安心できる感覚が持てないなど交友関係が苦痛になり、更には人前で経験する不快を避けようとする意識が強く働くために自身の行動をどんどん制限して学業や就業に影響及ぼしてしまうなど、本人の日常の中でさまざまな問題を引き起こしていきます。


人前でのショックで恥ずかしい体験の他に、大勢の目の前で顔が真っ赤になったり体が硬直してしまったりといった強烈な不快な体感が不安の発端になることもあれば、吃ってしまうなど、自身の特異な様子が周囲に見られてしまうことがきっかけで、他者の目を意識せざるを得ずに不安が補強されていく場合もあります。


社交不安は、アメリカ精神医学会のマニュアルDSM-5にもある不安障害の一つであり、きっかけはどうであれ「自身が他人からどう思われているのか」そこへの恐怖に対して起きている不安であり、不安解消には自己イメージへの認知の歪みをターゲットにした対処が必要となってきます。

海外生活の何が社交不安を引き起こす要因に?

自分にとって文化も言語も慣れない環境は、「〇〇が劣る」恥ずかしい自分を周囲に見せる絶好の機会になります。


言語不足のせいで発言の際、大恥を掻いた…。


不慣れな立ち振る舞いのせいで、変な人だと思われたかも…。


このような、恥に伴った強い苦痛を心身共に経験するうちに、自分自身に対してネガティブなイメージが生まれていきます。


そんな時、相手の考えていることを裏読みするような「空気を読む」スキルが合わさったとしたら、どのような考えが頭の中を駆け巡るでしょうか。


わたしは正直あまり空気を読むタイプではないのですが、それでもアメリカに来たばかりの当初、授業中に間違えた文法でぎこちなく発言する自分や、スーパーのレジでおどおど慣れないやりとりする自分の姿を他人はどう思っているのかをちょっと想像して、穴があったら入りたい、まさにそんな気持ちになることだらけでした。

これらの経験の中には、顔が真っ赤になるような体験や、一気に血の気が引くような衝撃的な感覚を味わう時もありました。


こういう場面を何度も何度も繰り返すうちに、それを経験せざるを得ないような場所を避けたくなってくるんですよね。大勢の前で発言を避けたり、買い物も慣れたところばかりでそそくさと済ませたり…。


人が自分のことをどう思っているのだろうか、自意識過剰なくらい気になってしまって、常に監視モニターの目の前でトラッキングされてるような、何も悪いことをしていないのに隠れながら生活するような様子でした。それは、まるで他人からの視線がレーザーでも発射して自分に当たっているような感じ…それを全身に浴びる感覚を生きていて、本当に辛かったのを覚えています。

社交不安との向き合い方とは?

社交不安がどこから来ているのか。


その原因は、他人が自分を実際にどう思っているかということよりも、自身が自分に対して持つ自己イメージへの認知の歪みにあります。そのため、社交不安の克服には、自身の認知の歪みを理解し、自分のセルフイメージを自己批判的なものから現実的なものへと修正していくことが大切になってきます。

例えば、自分が間違った文法で大勢の前で発言したとして。

たとえそれが、何を言っているのか分かりにくい上手くまとまらない発言だったとしても、果たしてその場にいた者たちは、あなたのことをどこまで考えているのでしょうか?

自分では「大恥を掻いた」「恥ずかしい」「馬鹿みたい…」と、思いこんでいることを他人は果たして同じように感じているのだろうか。

仮に、自分がもしその時の聞き手の一人だったら、母国語以外で発言している発言者に対して、自分が今自身に感じてるものと同じレベルの蔑みの感情を果たして持つだろうか。むしろ、「第二言語でよく頑張ってるな」と思うんじゃないだろうか。そもそも、自分を嘲笑うような人はいただろうか?

このように、自身の感じている自分へのイメージと、その場で本当に起きていたことや、相手が自分に見せている様子を客観的に分析していく必要があるのです。

自身のセルフイメージに感じている認知の歪みを修正しながら、その上で、社交不安を理由に(本当はやりたいけれども)避けている行動を減らしていく必要があるのです。

ここではその流れを簡単に説明しましたが、今まで自分を守ろうと不安を避けた行動を取ってきた中で、それを止めていくのはとても勇気のいる作業です。しかし、本当に自身の価値観に沿った生きたい生き方をするには、不安を理由に避けてきた痛みや強さに対峙していく必要が出てきます。


社交不安障害の克服には、自分の本当にしたいことや生きたい生き方をゴールに見据え、なぜ自分が不安に向き合うのか、障害を克服することで得られることは何なのか、不安を乗り越えた先にある自分のなりたい姿をセラピストと共に振り返りながら、社交不安を克服するための課題に取り組んでいく必要があります。



差別に対する認知について

社交不安を文化の要素を含めて研究したものの中には、実際に受けた差別行為が原因で自己イメージに対してネガティブな考え方が補強され社交不安が起きているケースも報告されています。


異文化環境やマイノリティグループに属すことで経験する差別は、リアルな辛い経験であり、決して本人の認知の歪みではありません。その経験は否定せず、しかしその経験を経て感じ始めている内面の自己イメージをネガティブなものから、そうでないものへとどう捉え直していけばいいのか。相手からどう思われるのか、その恐怖を避けるために出来なくなってしまった行動を、どうしたら出来るようになるのか。自身の内面に感じる自己イメージを自分にとって適切なものへと変えつつ、避けてしまっていた意義のある行動を出来るようになっていくための方法を深く模索することが提案されています。



さいごに

言語、現地の文化や慣習に慣れない中で生活していると、これでもか、というくらい罰ゲームのようにとんでもなく恥ずかしいことをしてしまう場面に山ほど遭遇します。

今では笑い話に出来るようなことも、当時の必死な自分には、どうしようもなく屈辱的で、とにかく恥ずかしく苦しく、自分がとにかく周囲に比べて劣って見えていました。そして、その感覚から、他人が自分をどう見ているのか、そこに大きな苦しみを感じていたように思います。

克服には、もちろん、時間がかかりますし、海外生活・移民関係なく、個人的な性格や葛藤が影響している場合もあるでしょう。

しかし、一つ心に留めておいて欲しいのは、異文化生活を母国語以外で行っているその勇気と努力。これは誰にも馬鹿にされる筋合いのない、確固たる誇りのある行為であるということ。だからこそ、苦しい中でも必死に頑張ってる自分を労わることを忘れないでください。


この記事が、慣れない環境下で自分にネガティブなイメージを感じて落ち込んでいる人や、人からどう思われているのか怖いと感じている人、それが原因で行動を制限している人が葛藤と向き合う方法を見つけるきっかけになれば幸いです。

クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWA

 

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参照:

American Psychiatric Association. (2022). Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed., TR).



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