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アートセラピーに使う画材って?美術画材のあれこれ



絵画のイメージが強いアートセラピーですが、アートセラピーのセッションでは、クライアントや面会の内容によって様々な画材を紹介します。


アートセラピストにとって、それら各画材の特性を知っておくことは、クライアントの視覚表現の幅を広げ、アートセラピーの経験をより深く意味あるものにするための重要な要素となります。


そこでこの記事では、アートセラピストが使う美術画材の種類と、その特性や注意点について特集しようと思います。


美術画材の種類

絵の具や鉛筆による絵画、粘土を使った彫刻や自然物を組み合わせた造形まで、アートセラピーでは様々な芸術媒体がセラピーの一環として使われます。そして、各芸術媒体に合わせてふさわしい美術画材があり、性質や特徴により、このような項目分けがされています。

画材の性質のカテゴリ

コントロールが効きやすい媒体:


鉛筆や色鉛筆、フェルトペン、マーカー、コラージュ等


これらは、素材が硬いという特徴があり、細かい描写が可能であったり、正確に表現ができたり、使い手が比較的使いこなし易くコントロールが効きやすいことが特徴です。


鉛筆が一番コントロールしやすい画材なのは、消しゴムで何度も消し描き直すことが出来るからです。


また、コラージュに至っては、すでに出来上がっている画像を糊で貼り付けるだけなので、アート制作に慣れていない人でも取っ付きやすい媒体です。身体の自由が効かない人にも扱いやすいです。



コントロールが効きにくい媒体:


水彩画や柔らかい粘土、チョークパステル等


一方で、こちらに属す媒体は、流動的な特性ゆえ、使い手の思い通りにならない部分がありコントロールが難しいことが挙げられます。


また、手が汚れやすく、慣れるまでは抵抗のある人もいるのが特徴です。



これらの特性を含め、クライアントの状況に合わせてアートセラピストは画材の選別や、セッション内で使用する芸術媒体の考案をします。


美術画材の具体的な適用例

アートセラピストのマルキオディ博士によると、子供にアートを使う場合、敢えて上記の画材の特性や質に注意しながら芸術媒体を選ぶ時があると話しています。


例えば、とても感情的な子供や活動過多の子供に対しては、コントロールの効きやすい媒体:フェルトペンや色鉛筆などを選び、お題もセラピストが提示、指定された枠組みの中で絵画を描いてもらったり美術制作をさせたりします。比較的扱いやすい画材と決められたお題があることで、落ち着いた環境が作られるため、子供の不安を減らしたり情緒を安定させることが出来ます。


一方で、虐待を受けトラウマを抱えた子供やネグレクトを経験し子供的な遊びや感情表現が出来なかった子供に対して、敢えて流動性の高い、コントロールの効きにくい媒体:絵の具や粘土を紹介し自由に制作をしてもらうことも。自由度の高く遊びの要素も多く含むこれらの媒体は、子供たちの気分をリラックスさせ、子供らしさを引き出す場所を提供することを可能にします。


もちろん、上記のマルキオディ博士の例は一例に過ぎず、実際はクライアントの症状やセッションで引き出したい内容を考慮しながらセラピーを進めていくので、画材の選択は千差万別であり、紹介の仕方もアートセラピストの臨床経験を元にした判断に委ねられます。


画用紙のサイズも大きな選別要素に

また著名なアートセラピストであるヘレン・ランガーテン氏は、紙のサイズ自体がクライアントのアート制作に対する気持ちに影響を与えると説明しており、絵画制作において大きな考慮材料になるとしています。


例えば、認知症を抱えた患者さんや不安を抱えている子供などは大きな画用紙を渡されると、途端に気持ちが圧倒され、かえって気分が動揺してしまう場合があります。


そのような状況が起きてしまう時は、敢えて小さめの画用紙を渡したり、画用紙の中に四角や丸の枠組み・アウトラインを描いたものを用意することもあります。小さな画面の方が、格段に扱いやすく安心感を得られるからです。


さいごに

一括りに美術画材と説明することはあれど、一つ一つ、それぞれの画材は全く異なる個性を持っています。また、同じ画材でもメーカーや使用されている材料によって、使い心地やセラピーに適しているのかに差があります。


どうしたらクライアントに楽しんで安心して使ってもらえるか、まずはクライアントに試す前に自分が様々な画材を試して表現の方法や感覚を探ることがとても重要です。


そして下記の3点に注意することが必要です:

  1. 小さな子供や認知に障害を抱えた方へのセラピーでは、間違って体に取り込んでしまっても有害でない画材を使用すること

  2. 絵の具や匂いの強いものを使用するときは部屋の換気に気をつけること

  3. 自分や他人に危害を加える恐れのあるクライアントには刃物やグルーガン、紐類などを使用しない芸術媒体を選ぶ、等

クライアントに画材を紹介する際には、常に安全対策を心掛けることが必須です。


様々な媒体を知れば知るほど表現の幅も広がり、アート制作の楽しさも二倍三倍となります。この記事が皆さんの画材・芸術媒体選びの参考になれば幸いです。



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。

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お薦め画材紹介:


クレヨラ社のモデルマジック

Crayola Model Magic


子供が口に入れても安心な素材で作られている粘土。手に粘土が張り付かない、とてもサラサラとした手触りで扱いやすく、色も何種類もバリエーションがあります。子供やお年寄りの粘土制作にとてもおすすめの素材です。乾かして作品にするのも良いし、密封容器に入れて何度も使用することも可能です。わたしも粘土制作の際はモデルマジックを利用することがとても多くお気に入りの画材の一つです。




参考文献:


Malchiodi, C.A. (2007). The Art Therapy Sourcebook. 2nd. McGraw-Hall. New York: NY.