コロナウィルスから政治情勢まで、気が滅入るようなニュースが流れない日はありません。
そんな中、アメリカでは先日、政治絡みの暴動(テロといっても過言ではないでしょう)のニュースが飛び込んできました。予想もしなかったまさかの出来事が報道され、動揺を隠せなかった方もいたかも知れません。
大人でさえも気持ちを立て直すのに時間が掛かるこのようなニュース報道に対し、子供がメディアに触れることの影響力や、難しい事情をどう説明すればいいのかを考えた保護者や教育者も多かったのではないでしょうか?
そこでこの記事では、米国心理学会やセラピストが提案する、ニュース媒体との付き合い方について、大人が子供に注意を払いたいこと、そして子供のストレスへの対処力を高めるための方法をまとめてみました。
ニュース報道が子供の目に触れることに対する注意点
大人が見ても衝撃を受ける光景が映し出されるニュース。番組で繰り返し報道される映像の多くは、ハッピーになれるようなものよりも、ショッキングな内容や悲しいことの方が多く、見る人に強いネガティブな感情を引き出します。
それはたとえ、まだ理解力の未熟な小さな子供であったとしても同じで、ただならぬトーンの声や映像が繰り返し流れるニュース番組から受けるストレスというのは、思いの他、大きいのです。
ある大きな事故のニュース番組を見た子供達を検証した調査では、その事故に関するニュース報道番組を長く見ていた子供ほど、トラウマ症状に強く苛まれたという研究結果もあるそうです。
そのため、子供がニュース報道に触れる機会を減らしたりニュースとの付き合い方を工夫したりが必要となってきます。そしてその環境を周囲の大人が整えてあげる必要があります。
ニュース報道に対し大人が子供のために出来ること
それでは、ニュース報道との適切な距離感を保つために、保護者や教育者が子供のために出来ることとは何があるのでしょうか?
⒈ 子供にニュースを正確に落ち着いて説明すること
大きなニュースが起きた時、何が起きたのか、どのような出来事だったのか、年齢相応の伝え方で子供に事実を伝えること。
小さな子供には、なるべくシンプルに簡潔に。事実を淡々と説明し、それに関して大人たちが子供を守るために出来ることを伝え、安心させてあげること。
物心ついた子供には、彼らの視点から彼らがニュースに関して思うことを聞いてあげる話し合いの場を設けてください。この時注意したいのが、子供が学校の友達からの又聞きや個人的解釈でニュースを間違って捉えている場合に、それを指摘し正確な情報を教えることが望まれます。物心ついた頃の中高生ぐらいの子供達の場合、SNSの利用から不必要に多くの情報を手に入れており、それは親が把握している以上のこともあります。
また、大きなニュースに対して不安や恐怖、怒りなど様々な感情が現れて当然です。ニュースに対する様々な感情が湧き起こっても大丈夫なことを伝え、それらの気持ちを否定することなく一緒に冷静に語り合えるような機会を設けてあげるようにすると、子供達の不安を和らげることが出来るかも知れません。
⒉ 子供が目の前にいることに注意しておくこと
大人でさえ動揺が大きいニュースに対しては、思わず食い入るようにニュースを見てしまったり大人同士で話題に出しながら話し込んでしまったりすることがあるでしょう。
しかしながら、小さな子供の前では、ニュース番組は出来るだけ流さないようにしましょう。なぜなら、子供の心は保護者の情緒に敏感に反応します。そして認知が発達していない小さな子供にとって、視覚情報はとてもインパクトの強いものとなります。
そのため、ショッキングな映像を出来るだけ彼らの目に触れないように心掛けたり、大人同士でニュースに関して話す場合は、子供がいないところで話すように工夫しましょう。
⒊ ニュース番組や事件・事故の情報に触れる時間を制限すること
1日のうちに、家庭内で流れるニュース番組の時間を極力制限すること。例えば、ニュース番組を見る時間を朝、昼、晩のどこかの時間帯に限定することも、もしくは、30分から60分と短時間に決めてみるのも良いかもしれません。そして、それ以外の時間にテレビやインターネットを利用する時は、なるべく楽しいテレビ番組を見るようにしたり家族のアクティビティをするようにしたりなど、ニュースに囚われない活動を積極的に取り入れること。
学校環境の場合も同じで、ニュースに関する話題を話し合える場を時間制限で設けるなど、子供達の意識がニュースに向きすぎないように方向転換を促してあげることが大切になってきます。
子供が直面するストレスやショックに対処する力をつけるためには?
大きなニュースに関しては、大人がどう避けようにも社会の一員ならば子供も何かしら影響を受けないわけにはいきません。しかし、このようなニュースから受けるストレスや辛い気持ちに対して、子供達に対処法を教えてあげることはレジリエンス(逆境に対処する力)を身につける絶好の機会となります。大人達は、子供に具体的にどのような心のサポートをしてあげることが出来るのでしょうか?
⒈ 様々な気持ちを吐き出せる安心出来る時間や場所を提供する
悲しかったり不安だったり、怒りだったり‥様々な気持ちを一人で溜め込むことほど孤独で不安なことはありません。
そのため、どんな気持ちも自由に話し合えるような場所、安心して気持ちのもやもやを吐き出せる時間や機会を提供してあげることが大切になります。面と向かっては気持ちを話したがらない年齢の思春期ぐらいの子供でも、一緒にお茶をしながらとか、ドライブに連れて行ったりして、話をしやすい状況を作ってあげることは可能です。
話を聞くとき「そんなこと言っていても仕方がない、ポジティブに考えろ」などと、ネガティブな気持ちを抑圧させるよりも、どんな気持ちを抱えているのか、それに寄り添って理解してあげるような姿勢で対話に望むことで、子供は安心して自分の気持ちを話せるようになります。
このような繰り返しを経ることで、子供達は徐々に自分自身で気持ちの整理や感情抑制がうまく出来るようになり、建設的な会話も自然と行えるようになっていくでしょう。
⒉ セルフケアを提案してあげる
どんなアクティビティをすると気持ちが落ち着くかを一緒に探してあげるのもいいでしょう。例えば、子供のストレスが溜まっていそうな時は一緒に散歩をすることを提案したり、一緒に遊べるボードゲームに誘ってみたり。または、子供部屋を心安らぐ過ごしやすい空間にデザインしてあげることも、子供の好きな映画や音楽を見つけ、それらを手の届くところに準備しておいてあげることも良いかもしれません。
様々な気持ちの切り替え方法を知ることによって、子供達はいずれ自分でストレス発散方法を身につけることが出来るようになります。
⒊ 子供の目標設定や社会貢献へのサポートをしてあげる
「ニュースに動揺して目の前のことに集中出来ない!」
なんてことも起きてしまうかもしれません。子供がやりがいを持って取り組めることをサポートしてあげるのも大人の重要な役割です。
中には、事件やニュースから強い使命感や責任感を芽生えさせる子供もいるでしょう。ニュースをきっかけにどのような社会貢献が出来るか、どのような大人になっていきたいかなどを話し合っていくことも子供のレジリエンスを育む機会になります。
さいごに
コロナパンデミックが起きてからというもの、世界中の誰もが大きな環境の変化への適応を迎え、びっくりするようなニュースを毎日のように浴びながら生活しています。大人でもストレスフルなこの状況を子供達は敏感に感じ取っているでしょう。
そんな状況で、完璧に子供達の不安を拭い取ることは難しいかもしれません。しかしながら、このしんどい経験を大人が子供達を責任を持って適切に誘導することで、大きなストレスや辛い気持ちへの対処法を子供達が身につけることも可能かもしれないのです。
もちろん、子供それぞれ、その子が持った特性や生活環境は多岐に及ぶため、この記事で挙げた内容が当てはまらない子もいると思います。そのため、無理をせず、各家庭出来ることから出来る範囲の中でサポートをしていくように心掛けてください。そして場合によっては、心理の専門家に相談することも検討してみてください。
長くなりましたが、この記事が読者の皆さんのお役に立てる点があったら幸いです。
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
関連記事:
参考:
American Psychological Association. (2013, June 1). How much news coverage is OK for children? http://www.apa.org/topics/news-coverage-children
American Psychological Association. (2020, August 26). Resilience guide for parents and teachers. http://www.apa.org/topics/resilience-guide-parents
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