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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

認知行動療法アプローチを使ったアートセラピーとは?



アートセラピーというと、一般的に、絵に描かれたものを分析したり解釈したり‥を連想する方が多いと思います。

しかしながら、アートセラピーとは、一つの決まった心理アプローチのみを説明したものではなく、アート制作を用いた心理介入すべてを含む手法(学問)を指します。

そのため、アートセラピーと一緒に語られることの多い精神分析アプローチ以外にも、その対極的に語られる認知行動療法にも取り入れられているんですよ。

今回は、日本でも注目度の高い認知行動療法に焦点を当てて、アートセラピーが認知行動療法のアプローチにどのように使われるのかを紹介してみたいと思います。


認知行動療法 (Cognitive Behavioral Therapy: CBT) の特徴とは?

認知行動療法の特徴といえば、症状と問題にピンポイントでアタックしていく症状特化型の心理治療法。とても論理的で可視化しやすく、エビデンスベースド(科学的根拠に基づく)の代表格とされています。

認知行動療法のアプローチを分かりやすく説明すると、例えば、条件反射のように、何かが起きた時、それに対して真っ先に思いつくことってありますよね。その真っ先に思いついたことが、自分をネガティブ思考に陥れる歪んだ考え方・思想だったとしたら‥果たしてそれが続くとどうなっていくでしょうか?

うつ病を発症してしまったクライアントさんがいたら、そのクライアントさんをうつにさせる原因になる思考や考え方があるのではないかと仮定します。そして、そのクライアントさんが、どのようにきっかけとなる出来事を経て症状を発症するに至ったのか、その考え方をどう変えていけばうつの症状を改善させることが出来るのか、歪んだ認知や思考を拾い上げ、感情を整理し、それを健康なものに置き換えていくことを目指すのが認知行動療法のアプローチです(ざっくり大雑把な説明になってしまいましたが。)


認知行動療法にアートセラピーがどのように機能するのか?

もともと、クライアントさんの考えや思考回路を整理するために、考え方を紙に書き出したりチャートを使ったり図式を組み込むことを得意としている認知行動療法。

視覚表現をふんだんに味わえるアートセラピーとはとても相性が良いのです。

認知行動療法アートセラピーでは、主に以下のようなゴールが設定することが出来ます:


⒈ 自分が抱えている問題行動や症状をテーマにアート制作をすることで、自分の課題に向き合うきっかけや直面するための強さを得ることが出来る。


例えば、蜘蛛フォビアを抱えている場合、恐怖の対象である『蜘蛛』を敢えて描いてみる。または、自分の恐怖の引き金が起きてしまうものを連想して描いてみる。


実際に抱えている恐怖であったり問題を視覚表現に落とし込むことで、自分の内側から問題を外側に切り離すような感覚を覚えることが出来ます。


⒉ 実際に視覚情報に落とし込むことで、自分の考え方や思考にどのような非合理的な認知の歪みが存在しているのかを理解することが可能になる。


描いた『蜘蛛』に対して、どのような思考や考え方が起きているのか、絵にどんどん自身に巻き起こる葛藤の数々を付け加えてみる。


そうすることで、自分の置かれている状況が分かりやすくなり、客観的に対処する方法を考えることが可能に。


⒊ アート制作を自ら行うことが、ある種の主導権や自身をコントロール出来ている感覚を与えてくれる。


例えば、症状が改善せず悩んでいる人の中には、人生が症状や問題行動に振り回されているような、自身にコントロール権が無くなってしまったような無力感を感じる人もいるでしょう。 アート制作は、自分の好きなやり方、好きな方法で作品を作っていける自発的な環境を提供します。クライアントさんが、自分が決定権を握れるような感覚を実感出来ることもアートセラピストの狙いの一つとなります。

⒋ 自身の抱える認知の歪みに相対する、ポジティブな認知や思考の補強材となるものを考えつくきっかけが出来る。


2. で描いた思考の数々を振り返ってみて、本当に理にかなっている考え方なのか、それを冷静に見てみたら違う考え方に変えられないか、何か良い対処法は思いつかないか、画面に模索し描きたしていくことで、具体的に次の行動へのヒントが見つかりやすくなっていきます。


子供のセラピーにも持ってこい!

上記のような狙いは大人のみならず、子供にも持ってこい!アート制作を遊び感覚で取り入れたり、紹介の仕方を工夫することで、認知行動療法を小さな子供達にもとっつきやすいものに変換することが可能です。

気持ちの整理から、歪んだ考え方や思考をあぶり出すことはもちろん、対処法として提案されることの多いマインドフルネスやリラクゼーションの概念も、アートを使って表現することが可能です。

例えば、マインドフルネスを教える時は、ジンジャーブレッドクッキー(人型のクッキーの形)をアウトライン型取った紙を用意し自分の身体に当てはめて考えてもらい、気持ちが高揚する時は体のどの部分がどんな色で反応するのか、とか、リラックスしている時は身体のどの部分がどんな色で休まるのかなどを描き込むアート制作を提案することも。


また、リラクゼーションのための深呼吸の練習をストローを用いて絵具を吹いてみるブロウアートと掛け合わせると子供達にとても喜ばれます(やり過ぎると疲れてしまうので程々に‥あと、後片付けが大変なので覚悟を。笑)


おわりに

『認知行動療法』というと少し堅苦しく聞こえるものも、アートセラピーとコラボすることで、とても楽しくセラピーを行うことが出来ます。

心理療法のアプローチを取り入れたアート制作は、心理療法の目指す治療ゴールを取っ付きやすく体現してくれるだけでなく、視覚や触覚など体感をふんだんに使うことで人間が本来持つクリエイティビティの能力を刺激し、自己表現のパワーを引き出し喜びを与えてくれます。

また、アート制作は、終わった後に作品が手元に残ることも魅力の一つです。自分の葛藤と痛みからの成長の過程を記録として残しておけるのも、アートセラピーの醍醐味と言えるでしょう。


これからも、アートセラピーの様々な魅力を紹介していきたいと思います。最後までお読みくださりありがとうございます。



アートセラピスト・吉澤やすの

 

参照:

Gehart. D. (2013). Theory and treatment planning in counseling and psychotherapy. Brook/Cole Cengage Learning. Belmont: CA.


Rubin. J. A. (2001). Approaches to art therapy: theory and technique. 2nd ed. Routledge. New York: NY.

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