忙しい毎日を送っていると、次々と出現するトラブルや問題、心配事には敏感になるものの、感謝の気持ちに気づくことは少ないかもしれません。
感謝の気持ちは、わたしたちの日常に喜びや良い事が存在していると思い出させてくれるリマインダーのような存在です。そのため、生活の中に感謝の気持ちを感じることが多いほど、人生への幸福度は高くなるそうです。
でもそもそも何が感謝を育むのか?それを培うためには何を意識していったら良いのだろう?
この記事では、その疑問に答える"6 ways to cultivate Gratitude in Yourself"記事の内容を意訳・編集しながら紹介したいと思います。
*オリジナル記事は、ジェレミー・アダム・スミス氏の著書 "The Gratitude Project: How the Science of Thankfulness Can Rewire Our Brains for Resilience, Optimism and the Greater Good"を元に書かれたそうです。
感謝を培う方法1:人生の終わりや死、何かを失うこと、について考えてみる機会を作る
人生の終わりや死についてを考えると、人は今の生活を送られていることに対して感謝の気持ちを抱くことが増えるそうです。
同じように、例えば仕事を失った時や、大切な誰かを失った時、好きなことが出来なくなったり、好物が食べれなくなったりした時のことを想像してみる…。
ある実験では、被験者にチョコレートを食べさせた後、一週間チョコレートを食べることを禁止されたグループ、好きな時にチョコレートを食べたいだけ食べて良いと言われたグループ、何も制限されなかったグループに分けたところ、前者のグループの人たちが喜びを強く感じる一方で、好きなだけ食べて良いと言われたグループの人たちの幸福度は3グループの中で一番低かったという結果が出たそうです。
今まで当たり前にやっていたことが、当たり前ではなく自分に与えられた特権であることを理解するだけで、感謝の気持ちが湧いてくるかもしれません。
感謝を培う方法2:花の匂いを嗅いでみる
臭覚や味覚など、人間の五感を通じて得る体験というのは、脳に深く記憶されるそうです。そして更に、その経験に対して感謝を表現することによって、それはより一層、印象強く記憶に刻まれていきます。
ある研究によると、食べ物を口に運ぶ際に、その過程を注意深く意識し楽しみながら食べるほど、人は味をより深く強く感じ、喜びを感じることが出来たとの結果が出たそうです。
そのため、食事前のお祈りや「いただきます」の言葉など、今から口にするものへ意識を向けることを促すような過程や行為、体験、そして五感に感じた感動を表現をしていくことは、感謝の気持ちを強く引き出すことに繋がります。
感謝を培う方法3:いいことが起きたら、『当然の権利』と思わず『贈り物』だと思うこと
感謝の反対語はなんでしょう…?それは、あって当たり前の権利と思い込むこと、エンタイトルメントであると言われています。
自分は「特別な誰か」と思い上がるその行為は、他者からしてもらったこと、助けてもらったこと、与えられたことなどを全て盲目にしてしまいます。すると、なかなか喜びを感じることは出来なくなってしまいます。むしろ、「こんなに自分は相手にやってあげてるのに…」という損した気分まで味わうことに。
共同体で生きてきたわたし達人間は、完全孤立で生きていくことが出来ないだけでなく、人との精神的な関わりを経て喜びや愛情を深めます。
自分も相手に何かを与えながら生きている、そして、自分の人生があるのは自分でない誰かの思いやりや行為が一端を担っていることも多いのかもしれないと理解すること。他者との相互作用のもとに今の生活が成り立っている。その考え方を持っていることが、感謝をより感じやすくなる生き方に繋がって行くでしょう。
感謝を培う方法4:モノにだけでなく、人に感謝の気持ちを示すこと
自分の気持ちを晴々させてくれる自然やお天気に感謝!!…したとしても、自然がわたしたちの感謝の気持ちによって様子を変化させることはありません。しかし、人は違います。
人は感謝の気持ちを向け(向けられ)ると、喜びを感じるだけでなく、成長することも出来ます。
コーヒーショップの店員さんでも、パートナーでも、子供でも…。
他者が自分にしてくれたことに気づくこと、それを実行してくれた彼らの努力を理解すること、そして、それが自分にどのように影響を与えているのか、それを相手に伝え(伝えられ)ていくこと。その一連の流れは、人間の脳にある喜びと報酬機能に訴えかけ、信頼と愛情を促進していきます。
自分が相手に伝える「ありがとう」の言葉は、自分にも相手にも、相互作用的に、幸福感を増長する効果があるのです。
感謝を培う方法5:感謝の言葉は分かりやすくはっきりと具体的に
ただ漠然と、相手のやってくれたことに対して「ありがとう」の気持ちを発信するよりも、具体的に何をしてくれたことに対して感謝を感じているのか。その気持ちを具体的に分かりやすくはっきりと説明することによって、感謝の気持ちはより強く相手に伝わる効果があります。
例えば、「家事をいつもありがとう」の一言よりも、「朝食に〇〇を作ってくれてすごく美味しかったよ、だから今日も一日頑張れる気がする!」と言われる方が、嬉しいですよね。
それは、相手のやってくれたことの『意図』や『行為』、そして、それによる『効果』がはっきりと相手に伝わるほど、深く重みのある感謝の表現となるからです。
言葉以外にも、それを愛情のある態度で示すことも可能です。カップル間の感謝を研究したものによると、悲しいことにはハグで返したり、嬉しいニュースには笑顔を向ける、など言葉以外のジェスチャーを通じたコミュニケーションがパートナー間には多く見受けられたそうです。そして、相手がどう受け取るだろうか相手の気持ちを考えながら、自分の意図する行為を行うこと。このようなやりとりがより多く出来ているカップルほど仲が良いということが研究では判明しているそうです。
感謝を培う方法6:感謝はどこにでも転がっている
人生生きていれば良いこと、悪いこと、山あり、谷あり、様々です。
感謝の気持ちは、良いことが起きた時に感じるのは簡単です。しかし、辛い時にだからこそ、意識して見つけていくことも出来るのです。
コインの裏表のように、一つの出来事に2つの解釈を見つけてみたとしたら…。例えば、どうしても手に入れたかったチャンスを逃してしまった…。そんな時にも、「絶対に手に入れてやる!と思う『悔しさ』や『自分の本気度』を教えられたのだ」と受け取ることも可能かもしれません。
また、とても難しいことですが、自分の大っ嫌いな相手に対しても感謝を見つけることが出来る可能性すらあるのです。別れ話を切り出してきた恋人に対して「なんてひどい相手なんだろう!」と思う一方で、「上手くいかない恋愛を終わらせてくれてありがとう」と解釈することも不可能ではないのです。もちろん、相手からされたことの度合いによっては、許容できる度合いも様々だと思うので、考えたくない相手のことは考えなくても良いと思います…。
『困難』を『乗り越えるべき挑戦』へと変える認知思考とレジリエンス(逆境力)を育むきっかけを与えてくれる。そのように、葛藤の状況にいるからこそ感謝の気持ちを意識し作り出していくことも不可能ではありません。
おわりに
感謝の気持ちの威力と、それを培っていく6つの方法について、皆さんは何を感じたでしょうか?
感謝の気持ちは相手との相互関係を意識するからこそ生まれる感覚だということ。そして、それは人間の脳に備わっている喜びを感じる機能を大きく刺激する、人の生活を豊かにするために大きな役割を果たす存在だということ。
人は共同体で、人に影響を与え、与えられながら互いに支え合いながら生きらえてきた存在であることを強く意識させらます。
感謝の気持ちを持つことが他者に与える影響はもちろん、その気持ちを自分が感じられることは、自分自身に喜びと豊かさを与えてくれます。自分の周りの人、そして自分自身のために、ぜひ、皆さんも感謝を日常に見つけてみてください。
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWA
参考:
おすすめ書籍:
ブレネー・ブラウン著
恥やヴァルネラビリティを研究しているブレネー・ブラウン博士による名書。人を精神的に追い詰める『恥』について、恥が起きた時の精神的葛藤や自分を苦しめる間違った対処法についてを深く分析しているだけでなく、それが他者との関わりの中でどのように癒されて変化していくのか、『感謝』を大きなキーワードに取り入れながら、人が一番向き合いたくない感情の一つ『恥』を多角的に説明しています。
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