心理学関連のウェブサイトを漁っていたら興味深い記事を発見しました。アリス・ボイズ博士の“Why Are People More Creative in a Crisis?Here are seven possible reasons.”
新型コロナウィルス感染症の広まりを受け、今アメリカでは多くの人や企業が従来には無い様々な試みで支援を必要とする人を助けようとする動きが見られています。
例えば、製造機器(3Dプリンターなど)を所有する会社が不足している医療機器を作る手伝いをしたり、地域の住人が協力して独自の物資サポートシステムを作ったり、なかなか家に帰れない最前線で働く医療従事者に企業が食事を提供したり。
このようなクリエイティビティな活動の波が押し寄せる心理背景とはなんなのか?
この記事では、『危機的状況が、人と社会をクリエイティブにしやすいのはなぜか』という疑問に対するボイズ博士の7つの仮説を紹介したいと思います。
危機的状況がクリエイティビティを生み出しやすい7つの理由
⒈ 危機的状況下では重要度と緊急度が重なりやすいから:
通常の生活において、重要なことを決める時には長い締め切り期間が設けられる場合が多く、『重要さ』と『緊急さ』が一緒に語られることはなかなかありません。
特にそれが困難なことやクリエイティブなことになると尚更、長期のプロジェクトになりがちです。しかし、研究によると、人は短期プロジェクトの方が意欲を持ちやすい事が分かっているそうです。
そのため、短期間でやり遂げなくてはならない重要な任務が重なる危機的状況下は、クリエイティビティが生まれやすい条件が整っているのではないか、と説明しています。
⒉ 危機的状況下に置かれると自分のスキルや知識がどう活かせるか考えるようになるから:
事態の原因であるウィルスの解決が出来なくても、この状況下をどうしたら少しでもマシなものに出来るのか、人は自分が持つスキルや知識を生かし誰かを助けたい意識が働くようになるそうです。むしろ、情報の共有は、緊急で断固として必須であると判断する意識が働くそうです。
⒊ 差し迫った恐怖は集中力とパワーを強め、クリエイティビティは希望の消失感への対抗薬となるから:
人は進化の過程で、危険が差し迫ると集中力が研ぎ澄まされ身体的能力も上がる機能を持つそうです。
しかし、この能力を生かしきれないでいると大きな不安だけを抱えてしまうことも、恐怖を突発的に避けようとネガティブな行動をしてしまい、さらなるストレスを抱え込んでしまうことも。希望の喪失感を感じてしまうと鬱にもなってしまいます。
危険が近づいた時の通常以上の集中力とパワーが、クリエイティブな活動(誰かのためになる事だったり、自分のスキルを活かせる事だったり)につなげる事が出来た場合、それはとても偉大なものとなり、負の感情を撃退することが可能です。
⒋ 普段であれば避けようとする社会的常識や社会的隔たりが危機的状況下では取っ払われるから:
クリエイティブな活動には、社会的常識やルールを飛び越えることも必要になってきます。
日常の生活では、政府や行政の指示を待つことも当たり前で、企業同士が結託する場合には見積もりや細かい計画の合意など面倒くさい作業も必要です。
しかし、危機的状況にある今、最優先事項は代わり、行政の取り決めも緩くなり、人々が無意識に制限し限定していた活動が今までよりも自由に行われている可能性が指摘されています。人の心理としても、このような状況は、今まであまり連絡を取り合わなかった人にも連絡を取ろうとするような大きな隔たりが低くなるような意識が働きやすいそうです。
⒌ 慣れている活動が阻害されると、人はよりクリエイティブになるから:
例えば、今まで対面で授業をしていた先生がオンラインで授業を行わなければならなくなった場合。対面授業では機能していた教え方や教材が、オンラインでは難しかったり、上手くいかなくなったりすることも増えます。
それをどうやりくりしていけばいいのか、新たに挑戦しなくてはならない事が目の前にあると問題解決にクリエイティビティを求められるようになります。
⒍ クリエイティビティが生まれているのは、今までに存在しなかった問題に直面しているから:
クリエイティビティを図るテストの中には、既に存在する物への新しい使い道を質問するものがあるそうです(例:『レンガ』の使い道をできるだけ考えてください。)つまりクリエイティビティとは、ある物や事柄に対してどれほど多様な扱い方を考えられるか、ということ。
現在、様々な面白いアイデアややり方をたくさん目にするのは、もしかしたらただ単に、今までに存在しないような誰もが予期しなかった真新しい問題が続出しており、それに人々は直面しているからではないかとの指摘も。
⒎ 共感がクリエイティビティに拍車を掛けているから:
人助けをする妨げとなる考えに『その世界で起きてること』という人ごと感があるそうです。例えば、お金に困っている人を見ても「その人の問題でしょ」と思うような感覚。
コロナウィルスの存在は、人ごとのような感覚よりも、誰もが被害を受ける可能性を秘めたとても普遍的なものであり、それが大きな共感を呼ぶきっかけとなっているそうです。共感した者が、どう相手を助けたいか、それがクリエイティビティに繋がっているのではないかと考えられる事ができるそうです。
おわりに
ボイズ博士は記事の最後にこう問うています。
「あなたには、この中のどのクリエイティビティがありますか?あなたのパートナーは?あなたのコミュニティは?」
クリエイティビティは、誰にでも備わった素晴らしい感性。みなさんも、自分のクリエイティビティを見つけてみませんか?
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
参照:
アリス・ボイズ博士のこの記事を元に書きました↓
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