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アメリカで心理カウンセラーになるには?資格取得までの道【カリフォルニア州の場合】

  • 執筆者の写真: ヤス@BUNKAIWA
    ヤス@BUNKAIWA
  • 2021年11月2日
  • 読了時間: 9分

更新日:9月6日


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『心理士』と一言にいっても、日本の心理士とアメリカの心理士では、資格を取得するまでの過程が大きく異なるようです。


そこで今回の記事では、実際にアメリカで心理士資格を取得した筆者の、資格取得経験談を書いてみたいと思います。


この記事では、アメリカ・カフォルニア州心理士資格の一つであるマリッジ・アンド・ファミリーセラピストの資格に関する経験を書いています。しかし、カリフォルニア州で公認されている、その他の心理士資格も、多少の違いはありますが、ほぼ同様の流れを辿って資格授与がされます。詳しくはこちらをご覧ください。


資格取得までの道のりはとにかく長く辛い

資格取得までの大まかな流れ


カリフォルニア州で心理カウンセリングを行うには、心理専門職のライセンス(資格)が必要です。取得の流れは以下の通りです。

  1. 心理カウンセリングの大学院修士課程を修了

  2. 州資格管轄団体が定める条件のもとで研修を行い、規定時間を達成

  3. 2種類の州資格試験に合格


大学院について


マリッジ・アンド・ファミリーセラピスト(MFT)の修士課程は、フルタイムでおよそ2〜3年。プログラムによって実習内容や卒業論文の有無は異なります。

私のプログラムは卒業論文、ケース事例プレゼン、アートセラピー必須科目を含む内容で、入学から卒業まで3年間。その間、10ヶ月間の実習(合計700時間)もあり、とても充実していました。


アソシエイト(旧・インターン)期について


卒業後は、資格管轄団体に登録し「アソシエイト」として研修を開始します。必要研修時間は約3,000時間。担当S V(スーパーバイザー・先輩セラピスト)の指導を受けながら、彼らのライセンスナンバーを使わせてもらいながら、クライアントを担当します。この期間は仮免状態で、資格取得まで毎年更新が必要です。


スーパービジョンについて


スーパービジョンは個人(週1時間以上)またはグループ(週2時間以上)が必須。クライアントを1人でも担当した週は必ず同週中に受けなければ、その週の研修時間は無効になります。10人以上のセッションを行った場合は追加で受ける必要があります。

私は2つの研修先に通い、最大で週7時間も受けていました(今思えば多すぎました…)。


研修時間の内訳


3,000時間には様々な実務やカウンセリング実習が含まれますが、各項目には「最低達成時間」や「カウント上限」があります。例:子どもやカップルのカウンセリングは最低500時間、事務作業はカウント上限あり。

そのため、多くの研修生は3年以上かけて資格を取得します。中には仕事や子育てと並行し、6年かけて達成する人もいます。


3年以上がかりの資格取得者も多い


私はDV関連のクリニックで1年、その後2つの研修先を掛け持ちし、必須研修時間を2年半で達成しました。さらにアートセラピー専用に1,000時間の研修が必要だったため、最終的に約4,000時間を経験しました。


研修期間の待遇はかなり悪い


アソシエイトを雇えるクリニックは限られ、最低賃金やボランティアベースが多く、研修費を要求する場所もあります。だからこそ、資格取得は大きなモチベーションとなります。でも、コロナ禍を機に、オンラインセラピーが増えたのもあって、最近は、アソシエイトを雇えるところが以前よりも、増えてきているようです。


資格取得試験について


全研修時間と必要書類が認められると、4時間の臨床心理全般試験(クリニカル試験)を受験できます。法律・倫理試験は研修1年後の更新前に合格が必要です。両試験に合格して初めてライセンス取得となります。


こんな数年間もの経験が集大成された大事なテストなのに、結果公表はとても呆気ない感じで、テストを終えると試験場でその場で合否が言い渡されます。


わたしも試験部屋を出て、ドキドキで受付係の人から呼ばれるのを待ってました。自分の番になった時に、受付係のおばちゃんが無表情で合否の紙を持ってたので「ダメだったかな〜」とがっくししてたら、ペンでCongratulations!と書いてある部分を指して、「You did this!(やったね!)」と笑顔で渡してくれました。その時は、もう脱力感というか非現実世界にいるような、現実と夢が混ざったような不思議な感覚を全身に感じました。


余談なのですが、わたしが試験合格した日、家に帰ってきたら夫がQUEEENのWe are the championsを大音量で流して出迎えてくれ、コンサートのフレディー・マーキュリー並みな勝者ポーズで帰宅したのはとても快感でした。今でもクイーンのこの曲を聴くとその時のことを鮮明に思い出します!



資格取得で終わりではない、心理士は一生勉強…

資格を取得して全てが終わりではありません。資格取得後は、2年ごとの更新、そしてその際に、36時間のCEUという生涯学習修了書(うち6時間は最新の法律・倫理のクラスの受講義務あり)を習得していなければなりません。


また、満足出来ないサービスを提供するのでは、すぐにクライアントは離れていきますしトラブルも起きてしまいます。アメリカの心理士の傾向として、州の資格が取れたから満足…ではなくて、サービス業と一緒で、自分の州資格に上乗せできる様々な専門資格や特技をさらに習得し専門性やスキルを磨いていくことで、自分をブランド化・細分化してクライアントを集めていきます。


わたしも、州資格以外にも、アートセラピーの専門資格に加え、その他いくつかの専門資格や修了書を取得・保持していますし、常に勉強を続けています。



アメリカの心理士はプロフェッショナルに仕事をしている

上で述べたように、アメリカで心理士資格を取得するには、最低でも卒業後2年近い長い研修期間を経る必要があります。この過程で、心理士を目指す動機が曖昧な人や、やる気を失った人、適性が合わない人は自然と離れていきます。


実際、私の周りでも、さまざまな事情から継続を断念したり、別のキャリアに進むことを決めたりした仲間がいました。また、日本の「自称カウンセラー」によく見られるような、自己満足や承認欲求からカウンセラーを志すタイプの人も、研修期間中にスーパーバイザーからの厳しい指導を受ける中で淘汰されたり、考えを改めて成長したりします。


さらに、アメリカでは心理士が訴訟に巻き込まれることも珍しくなく、多くの心理士が職責保険に加入しています。私も、クライアントが起こした雇用トラブルや親権争いに、参考人として関わった経験があります。特にカリフォルニア州では、子どもの安全を守る法律が非常に厳しく、法律や倫理の知識は臨床のためだけでなく、自分を守り、クライアントの権利を最大限尊重するためにも不可欠です。


こうして大きな努力を経て得た資格だからこそ、多くの心理士はその資格に誇りを持ち、職業倫理を守ろうとします。業界全体でメンタルヘルスに関する誤解や偏見に敏感に目を光らせ、資格団体のロビー活動も活発です。


そして何より、この仕事に就く人の多くは「人のためになりたい」という強い思いを原動力にしています。そのため、互いに支え合い、クライアントや社会のために何ができるかを模索し、切磋琢磨しながら成長を促す、前向きな空気が業界全体に根付いています。



アメリカでも心理職は理解されないこともある、でもだからこそ必要なこととは

一つ付け加えておきたいのは、アメリカでも心理カウンセリングに抵抗を持つ人は今なお多いということです。特に保守的な州や地域では、「心理士をしている」と説明すると、あからさまに奇異な目で見られることもあります(しかも「カリフォルニアから来た」と付け加えると、ヒッピーやニューエイジ的な印象を持たれることもしばしば。そもそもカリフォルニア州そのものにそうしたイメージがついていることもあります)。


メンタルヘルスは長年、偏見や誤解の対象となってきた分野です。年配の方や、「クヨクヨせず忘れろ」といったマチズモ文化で育った男性、また保守的なエリアの住民などは、受け入れるまでに時間を要することが少なくありません。


だからこそ、正確な情報発信や、資格保持者を監督する機関の存在は大きく、その広報活動も積極的です。業界全体に「利用者の不信感を払拭するために努力する」という強い意識があると感じます。


さらに、研修生の長い研修期間や難易度の高い試験、その専門性の高さが社会に広く認知されているため、有資格者には「心理の専門家」としての明確な社会的評価があります。逆に、この資格なしに信頼を得るのは非常に難しいでしょう。なぜなら、自分自身が大学院生や研修生だった頃と比べ、どれだけ成長してきたかを痛感しているからです。


おわりに

この記事では、アメリカのカウンセラー・心理士(カリフォルニア州の場合)が、どのような過程を経て資格を取得するのかをまとめました。


書いてみると、日本の臨床心理士や公認心理師とは、かなり異なる仕組みだとあらためて感じます。とはいえ、いざ説明しようとすると長くややこしくなってしまい、つい端折ってしまう内容でもあります。笑


大学院を卒業したばかりの頃の私は、何も分からない“ひよっこ”でした。研修では大きな刺激を受け、まさに修行のような日々。厳しくも充実した訓練やスーパービジョンを通して、臨床の技術や知識はもちろん、研修仲間や先輩たちとのやり取りからも多くを学びました。自分の限界や特権、偏見と向き合うこと。人生との折り合いのつけ方。どんなセラピストを目指すのか、どんなクライアントと関わっていきたいのか──。今も私の中で大切にしている価値観の多くは、この長い研修期間に育まれたものです。また、さまざまな境遇のクライアントと出会い、学びの機会を与えられたことへの感謝や謙虚な姿勢は、今も学び続ける原動力となっています。


…とはいえ、大学院に入る時点では、このような過酷な道が待っているとは夢にも思っていませんでした。知っていたら進んでいたかどうかは…ノーコメントで。


今回は、そんな過去を振り返りつつ、カリフォルニア州の心理士(マリッジ・アンド・ファミリーセラピスト)の資格について書きました。最後までお読みいただき、ありがとうございます。


※資格の規定やルールは年ごとに変わるため、最新情報は必ず資格管轄機関の公式サイトをご確認ください。


もし今、アメリカで心理士として頑張っている中で「心が折れそう」と感じていたり、将来への大きな一歩を踏み出せずに足踏みしているような葛藤を抱えているなら、少し立ち止まって、自分自身を振り返る時間を持ってみるのも一つの選択かもしれません。


そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。15分の無料相談をご希望の方は、[お問い合わせフォーム]からご連絡いただけます。



心理セラピスト・吉澤やすの

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