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『誰かの期待に応えること』をやめるための処方箋【移民2世の心理】



親と一緒に他国へ移り住んだ子供達。移民2世と呼ばれるその子達の中には、親や周囲の期待に応えたり、親の文化・社会適応への不足部分を補ったり、普通の子供達が受ける以上の努力とプレッシャーを抱えて成長していった方々がいます。


今回は、そんな心理的葛藤を経験した移民2世達について焦点を当てて記事を書いてみたいと思います。


『頑張り』は『疎外感』の裏返し

大人になってから心理カウンセリングを受診される方の中に、このような特徴を持つ方がいます。


・学校での成績がいつも良かった学業優秀者

・社会的成功者(ステータスの高い職業や会社での地位がとても高い)

・ものすごい努力家

・頼みごとをされたら断れないすごく良い人

・物事を全部自分で片付けてしまう他人を頼らない人


彼らの多くに共通するのは、幼少期に親と一緒に他国・他文化へ移住した過去を持つということ。


そして、昔からずっと自分の所属先がないような疎外感を抱えていたということ。


「小さいころから自分は周りに馴染んでいないような気がしていた」と育ってきた環境と、学校や社会との文化の違いから大きな疎外感を感じ、周囲と違う自分に恥ずかしさや違和感を持ち続けながら学生生活を送ってきた。


そんな不安をカバーするかのように、学業に精を出したり、何かを達成することで褒めてもらったり、親や周囲からの期待を満たし認められることによって自身の居場所を見出していった人たちが、この『移民2世』というグループに多いのです。


『誰かの期待に応え』『社会に馴染む』ことが自身の存在意義になってしまう

新しい国に適応するために必死に生活をする親達を間近で見ながら成長していくということ。他言語を話す家族の場合、言葉の修得が早い子供、とくに兄弟で一番上の子供は、親の言語面でのサポートを担う場面が多くなります。それには本来ならば大人同士で話し合うべき内容もあり、そのような責任を担ってしまった子供は、子供でありながら大人のような役割を果たしていくことに。


また、雇用が安定していない中で移住してきた家族の場合、親は自身の移民生活をやりくりするのに精一杯。一見、文化への適応が問題無く出来ているように見える子供に様々なこと(例えば下の子の面倒や家事など)を頼りがちになる場合も少なくはありません。


人格形成の重要な時期(16歳ぐらいまで)を親の期待に応えることや家族の責任を大きく担うことになり、なおかつ自身が社会への適応がうまく出来ているかに注視せざるを得ないまま成長した彼らの中には、人の期待に答えながら、社会で求められている姿に忠実に生きていくことが自身の重要な存在価値の一つだと感じてしまう人もいます。


『周囲の意見』のために頑張り続けることの辛さ

期待に応えられた時はいいけれど、期待に応えられない時だって人間生きていれば絶対あります。そんな時にとても苦しんでしまうのが上記のような特徴を持つ方々なのです。


例えば誰かをがっかりさせてしまった時に、


・罪悪感

・自責の念

・劣等感

・恥

・恐怖や不安


人の期待に応えることが自身の存在価値の大きな部分になっていると、人をがっかりさせた時にこれらの感情を大きく抱えてしまうことも。これはたとえ周囲からみれば大したことないと思うような内容であっても、本人にとっては現実的に感じ被っているとても大きな感情です。


学生時はなんとかやり切れたとしても、結婚や子育ての年齢になってくると、自身の頑張りではどうにもできないことや他人の期待に応えられないことも増えてきます。そんな時に、精神的な限界がきてしまう場合があるのです。


本来備わっている自身の強みや個性に目を向け、自分を愛すことが一番の特効薬

もし上記のような内容に心当たりがあり、他人の評価が気になって精神的に参ってしまっている人は、ぜひ以下の質問を自身に聞いてみてください。


「自分を価値のある人間にしている要素ってなんだろうか。」


自分にしかない個性や特技、備わっている本質を見つけることは簡単なようで、実はとても難しい。今まで他人のためになることを第一に考えてきたならなおさら。


上記のような心理的葛藤を抱えた方への心理カウンセリングでは、本人が自分で自身の価値を見つけられるように、そしてそれを自身が認められるようになるまでをサポートしていきます。


今まで人の評価を受けて初めて感じることが出来ていた自身の価値観。それを変え、自分自身が客観的に、自分に備わっている本質を理解し受け入れることはとても難しい作業です。


しかし、それが出来た時、『他人の評価』という檻から解放され、誰にも左右されない、自分が自分らしくリラックスしながら生きることが出来るようになるのです。


子供とともに移住してきた移民1世の親御さんへ

この記事を読んで、不安になられた移民1世の親御さんがいらっしゃるかもしれません。上記に挙げたのは、幼少期に移住してきた子供全てに当てはまる事例ではなく、安定した就労条件がある上で外国へ移住を検討される家庭にはもしかしたら少ない現象かもしれません。しかし、このような経験をされている方が出身国移住先国問わず少なからずいることがカウンセリングの現場では指摘されており、実際にわたしもこのような葛藤を抱える方を過去に担当してきました。


『移住』という大きな環境の変化を通じ、このような経験をしてしまう移民2世たちがいるという事実を踏まえ、移民1世の親が出来ること、それは:


  1. 子供の価値感を他人の評価を元に決めないように心がけること

  2. 常に子供本人の良さを褒めてあげること


この2点だと思います。


例えば、学業成績やパフォーマンスの出来を他のクラスメートとの比較による良し悪しで見ずに、その子の『頑張り』や『真面目さ』を褒めてあげることや、その子が本来持つ性格や特徴の良さを褒め、尊重してあげることを繰り返すこと。それにより他人の評価に左右されず、自身をそのまままるごと受け入れられるようになっていくでしょう。


さいごに:移民になるって大変なこと。自分基準で助けを求めることが楽になることへの近道

文化・環境への適応はとても大変、誰もが自分のことでいっぱい一杯になりがちということがあっても仕方がありません。例えば、子供が原因不明の体調不良を頻繁に起こすようになったり、自分やパートナーが怒りっぽくなって夫婦間で喧嘩が増えたり等があった場合は、もしかしたら自身や子供、パートナーが移住適応に対して心に大きな負担を抱えていることのサインかもしれません。何かがおかしいと思ったら、家族内で処理しようとするのではなく、心理の専門家に助けを求めることも選択肢の一つに入れてください。また、「同じような境遇の人たちはみんな大丈夫だからこのくらい自分達も我慢しなくちゃ」と我慢する必要は全くありません。


移住の難しさは個人差があり、一人一人受ける精神的インパクトの差も大きく違います。そして環境に慣れるまでの時間も適応の仕方も、一人一人違います。そのため、例えば、上記に当てはまらない移民二世の方々もたくさんいるでしょうし、同じサポートが全ての移民家族にとって最良かといえば、そうとも言えない場合もあります。


自分に親しみがある価値観やシステムから異なる環境で生活するのですから、自分の出来ることと環境がさせていることの境界線が普段以上に曖昧です。そのため、自身や身近な家族のメンバーがどのような精神的葛藤を抱え、異文化生活を経験しているのか、そしてどのようなサポートを必要としているのか、自身や身近な人が常に客観的に内省的に吟味することが重要です。


今回は『誰かの期待に応えること』を経験している移民2世の方の心理を中心に記事を書きましたが、今後も様々な移民の方の心理について特集したいと思います。


長くなりましたがお読み下さりありがとうございました。



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。


参照文献:


Portony, D (2019). Intrinsic worth and the cultural outsider. The therapist: magazine of the california association of marriage and family therapists. 31(3), May/June 2019.


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