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執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

オーバーツーリズムの課題点?外国人観光客との適切な境界線・バウンダリーの引き方についての提案



日本では今、円安の影響やコロナ禍の国境閉鎖の反動もあり海外からの旅行客がとても増えています。


昔から外国人にとても人気な観光名所だった浅草は当然のこと、新宿や渋谷、その近郊地域を歩けば、すれ違う人の半分ぐらいは外国旅行客風の人というのは、わたしが学生の頃にはほとんどなかった現象です。


実際にわたしのアメリカ人の知り合いの中にも、昨年から今年にかけて旅行先を日本にしている人はとにかく多く、日本は今、大人気の観光旅行先になっていることが体感として伝わってきます。


一方で、コロナの入国制限からのこの大インバウンド需要に、驚きと戸惑いを隠せない日本在住の方も多いのでは?実際、「外国人お断り」飲食店や、外国人観光客の迷惑行為、商品の単価が上がって不満が募る人の意見など、オーバーツーリズムの課題を特集した記事を目にすることが圧倒的に増えました。わたしも、日本の飲食業界の人と話していて、状況を好意的に捉える意見の他に、何かしらの不満や戸惑いを聞く機会が増えています。


そこでこの記事では、今の日本が抱える、外国人観光客受け入れ体制への課題と対策を、異文化出身者を受け入れるために必要な心構えとは?という視点から、提案していこうと思います。



外国人観光客受け入れへの課題点

訪日外国人旅行客の数は、2023年では年間トータルで2,500万人以上、桜シーズンの2024年の3月·4月の訪日旅行者はなんと、それぞれ300万人以上もいたそうです。これは同月前年と比べるだけでも50%以上も増えているそうです。


こんなにいる観光客、しかも例年よりも急激に数が増えたために、早急に対策していくべき問題が各所で起こっているように感じます。


様々な事案を見聞きする中で、わたしが現在感じている、日本の課題だと思う点を大きく3つにまとめてみました。


  1. 外国人旅行客の扱い方への戸惑い(個人レベル)

  2. 日本在住者の生活を守るためのシステム作りの課題(地域・自治体レベル)

  3. 政府の対応:世論が感じている不安への対処がもっと必要(国レベル)


この3つについて、考察した問題点と課題を具体的に説明していきます。


 

⒈ 外国人旅行客の扱い方への戸惑い(個人レベル)


外国人旅行客の受け入れ方への扱いで戸惑いが起こるのは、主に二つの理由があるように思います。


①英語を話す必要性について:


多くの外国人観光客は、日本語を話しません。話せたとしても、会話をできるレベルの人は、よっぽど日本語を集中して勉強してきた人に限られるでしょう。多くの人は、世界共通語である英語を他国への観光場面では使用することがほとんどです。


それはつまり、日本に来ている観光客に対しては、ほぼ英語でコミュニケーションを取ることが求められています。


そのため、接客業など人を相手にしている商売は、英語での対応を求められる時代になってきているように思いますし、そんな要求を急に求められた側に戸惑いが起こらないわけがありません。


しかし、それは一方で、英語表記のもの(メニューや説明書き)や英語が話せるスタッフを準備しているだけで、対応は圧倒的に楽になることを意味しています。


たまに聞く、「日本にいるんだから日本語で話せ」という意見はもちろん理解できるものの(日本人がアメリカに行ったら否応でも英語で対応しなくてはなりませんもんね…なので、なぜホスト国が相手の条件に譲渡する必要があるのか、というのはもっともな意見ですが)、英語や(需要によっては他言語)の準備を少ししているだけでも、自身のストレス度合いが大分異なってくることは確かだと思いますし、それが売上に繋がるのであれば良いビジネスチャンスにもなります。


ただ、このマインドセットのシフトになかなかついていくのをしんどいと感じている日本の方はたくさんいるのではないかなと思います。



②ルールについて:


もう一つ、外国人客の扱い方への戸惑いには、「迷惑行為をされる」という点があるかと思います。


これについては、わたしは、日本人のコミュニケーションのスタイルや、相手への期待値について、外国人観光客との間に大きなズレがあることが原因だと思います。


そもそも、日本は「察する」文化。これをただ日本に観光で来た人たちに求めるのは無理があります。


日本以外の国に行ったことがある人なら誰もが思うように(そして日本に来た外国人誰もが思う通り)日本の街並みは、たとえ人混みのたくさんあるところでもとても綺麗にされています。それは、日本人の意識の中に、ポイ捨てはダメなこと、周りの空気を読んで〇〇はしていい·してはダメ、といったことがはっきりと刻まれているからだと思います。


このような日本の書かれていない(unwritten)ルールを体感してこなかった外国人に雰囲気だけで察してもらうのは、無理な話です。


迷惑行為になっていることがあるんだったら、その人に直接はっきり言う。そしてそれを押し返してくるような人に対しては、しっかりと厳密に対処できるような線引きを作る。


暗に理解してもらおうと、冷たい目線を向けたり、遠回りの表現を使ってはダメです。日本人の特徴として、ついつい、問題を避けようと、穏便になあなあに話をする人も多いですが、それだと相手に一切伝えたいことが伝わっていない可能性もあります。「相手にはっきり言う」というと喧嘩腰になれば良いのかと受け取る人もいますが、決してそうではなく、ただ淡々とビジネスライクに、相手に説明を伝えることが必要になってきます。これは、境界線·バウンダリー、そしてNOを適切に言うためのアサーティブネスの伴うコミュニケーション術でもあります。


「迷惑行為をする外国人」に関する記事を読んで、わたしは、そもそも境界線·バウダリーの引き方に戸惑う人が多いのだなと、強く感じました。これは、前提価値観の大きく異なる可能性のある異文化出身者との間では、さらに問題になりやすい点かと思います。


そしてさらに深く話していくと、たまに炎上する「外国人お断り」表記の飲食店についても、境界線·バウンダリーの問題として扱うことが出来るかと思います。


実際に、何が理由でお断りしたい客層がいるのか、その部分を明確にお店側が説明出来ないまま属性のイメージを理由にサービスを拒否するのであれば、差別に受け取られても仕方がありません。


外国言語に対応していないことを説明したいのであれば、「日本語サービスしかありません」「お客様がご自身で翻訳機を使ってコミュニケーションをとってもらいます」と説明することも可能ですし、観光客がスーツケースで入ってこられるのが問題なのであれば、「大きな荷物を置く場所がないのでスーツケースの人はお断りしています」といった表記だって出来ます。


ただ漠然と、イメージから、『外国風の人=日本語が話せない』や『外国からの観光客=荷物が多い·マナーがなってない』と言ったステレオタイプや偏見を理由に対応するのは差別です。


また、反対に、普段はすることのないレベルの細かいカスタマイズの要求や、スタッフに英語で話すよう強いてくる外国人観光客には、店ができるレベルのサービスがどこまでであるのかをはっきり意思表示して、それ以上取り合わないことも大切です。


どういう理由でお店の営業方針を決めているのか、そして、それを伝えるための配慮ある表現ができているのかがはっきり吟味されないまま、言葉足らずのまま形に出てしまうと、差別行為に受け取られて炎上が起きることにもなります。一方で、観光客に対して日本人客にはしないであろうレベルの非常に細かい要望まで答えてしまった結果、手に負えないと疲労困憊して外国人観光客に身構えてしまうお店もあるようです。


しかしどの問題も、元を辿れば、境界線·バウンダリーの引き方が上手くできていないからこそ起こっているトラブルであるということです。



⒉ 日本在住者の生活を守るためのシステム作りの課題(地域・自治体レベル)


上記に述べた内容は、自治体や社会全体の、日本在住者の生活を守るためのシステム作りの課題に関係していきます。


前述した、境界線·バウンダリーの引き方の問題。これは、個人同士のやり取りであれば自身の感じることを基準にNOを言っていく練習をすれば良いだけです。しかしながら、これが例えば、お店や公共交通機関、さらには自治体の中で起きている事であれば、それらを明確にするルールがもっとはっきりとした形で提示され、そしてそれに則って新たな整備やシステム作りがなされる必要があると思います。そのような基準やフレームワークがあれば、そこで働くスタッフやその基準を理解する周囲の人が動きやすくなっていくからです。


小さい範囲で言えば、上記の飲食店の対応などが一つの例として考えられますが、自治体レベル以上だとどのようなことが考えられるのでしょうか。


例えば、街中のポイ捨て。ポイ捨てがダメなことをしっかり外国人観光客に向けて発信していくことが、自治体、公共交通機関、都市全体で取り組む必要があると思います。


その一方で、日本は観光地で見かけるゴミ箱の量が圧倒的に少ない、そこを見直す場面に来てもいるように思います。外国人観光客の動向を見て、その地域で明らかにゴミの散乱が問題になることが目立っているのであれば、観光客に原因を求めて迷惑がるのではなく、それが問題にならないようにしていくシステム作りが必要になってきます。


ゴミが溢れかえっている地域があるのであれば、自治体単位で誰にも迷惑にならない場所にゴミ捨て場を設置する、そしてその場所を綺麗に管理するようにスタッフを自治体で雇って配置することは出来ると思います。そして、そのような場所が、至る所にあれば、ポイ捨てをしようとしている外国人観光客を適切な場所に促すことが出来る人も増えて、街全体は綺麗になります。


ポイ捨て問題の最大の原因は、ただ、「ゴミは各自持ち帰って」と言うだけでは、これから別の場所を巡る予定だった観光客にとっては「じゃあどこにこれは捨てれば良いの?」と困惑を強いる点です。結局どこかのお店の中のゴミ箱に捨てることになって、お店が個々でゴミの処分への負担を請け負うことになります。日本在住の人を前提として作った従来のルールを見直し、外国人観光客の動向や状況であっても従いやすいルール作りをしていくことが、自治体や社会レベルで今後もっと必要になってくると思います。



⒊政府の対応:世論が感じている不安への対処がもっと必要(国レベル)


観光客が激増した背景には、円安の影響もあります。


この円安に乗じてやってきたアメリカ人からは、「日本の物価の安さ」が話される場面はとても多いです。一方で、日本人の方からは、「海外旅行に行けなくなった」という言葉や、「輸入品の値段が爆上がりした」と言った経済面での不安の声も多く聞くようになりました。


そのような状況がある中で、外国人観光客によってレストランの料理の単価が上がってしまうことが起きているような事態を聞いて不安にならない日本在住者はなかなかいないのではないでしょうか。


外国人観光客をよく思わない人の中には、このような日本に住む自身の経済事情を比較し不安を抱えている人もいるように思います。


わたしは、このような状況に対して、政府を先導に何かしらの対策を講じる必要があると思っています。


例えば、観光税。日本の場合は、日本行きの航空券チケットの価格の内訳に観光税1000円が含まれており、航空会社から政府に対して、その分が返納されるシステムのようです(2024年6月時点。)


しかし、今のオーバーツアリズムになりつつある現状を考えて、大幅な値上がりを考えていっても良いのかもしれませんし、自治体単位でもそれを積極採用出来るよう国が促して行っても良いのかもしれません(沖縄はすでに実施されてるようです。)例えば、日本政府が航空会社に観光税の徴収を依頼しているように、ホテルに宿泊代と共に観光税を徴収してもらいそれを地元還元することはできるかと思います。


そして、観光税からの利益を、外国人観光客によって高騰した価格帯との差を埋めるために地元民へのディスカウントなどのサポートに当てたり、メニューや説明書きの英語·マルチリンガル表記のための費用や、2で述べた新たなシステム作りの予算に積極採用していっても良いのではないかなと思います。


もしくは、外国人観光客と日本の地元民への価格変更は、個人や自治体に任せず、政府が観光税の扱い方の一環として提案できることはあるのかなと思います。例えば、外国人観光客にはサービスに観光税を追加徴収し、その一部が店舗に還元されることを国が決めてしまえば、日本居住を証明できる客には今まで通りの価格帯が提供できるかもしれない(これも、差別になるか、しっかりした制度として世間に受け入れてもらえるかは、納得のいく説明の仕方と境界線・バウンダリーの引き方にかかってくると思います。)


外国人観光客が増えていることが、日本在住者に不便を強いず、むしろ地域の発達や整備の改善・利益になるような仕組みづくりが見えてくれば、円安への不安や、外国人観光客への不満は減っていくのではないかと感じます。



おわりに:

日本に来て、外国人観光客に関して「迷惑だ」と話す人の多さ、特にメディアでの煽り方にわたしは不安になりました。でも、確かに、今の日本の観光客の受け入れ態勢だと、場慣れしておらず言葉もままならない外国人が迷惑に受け取られやすい場面は正直とても多く、そこで生活する日本在住の人にとって不満が募りやすいだろうことも容易に想像できます。


一方で、「日本に行ってすごくよかった」と思い出話をする外国人たちや、実際に外国人観光客と楽しいふれあいをした日本の人たちにもたくさん出会っていて、異文化交流の機会が増えていることはとても楽しくて素晴らしいことでもあると思います。


日本が現在、世界でも屈指の人気な観光国になりつつあることを変えることは出来ません。これをただ、生活上における「迷惑なこと」と扱ってしまえばそこから先の展望は見えてきません。


ですが、これからどのように観光客を受け入れていけば良いのか、そしてそれをどう自身のビジネスや日本の利益に繋げていけるのか。今課題として上がっている問題点を議論し改良していくことは、大きくは国レベルで、そして個人レベルでも可能です。そして、それを実現するためには、境界線・バウンダリーの話し合いが必要不可欠になってくるように思います。


この記事が、これから異文化交流が盛んになっていく現在の日本の風潮において、断裂ではなく対話のきっかけ、問題解決や突破口のヒントになる部分があれば幸いです。



クロスカルチャーコンサルティング·BUNKAIWA

 

関連記事:


参考記事:


by木村隆志


byデイビット・アトキンソン


by今泉典彦


(少し前の記事ですが)

byミセス・パンプキン


byNHK


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