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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

逆カルチャーショックのリアル。逆カルチャーショックと新拠点での移住ストレスを少しでも和らげる方法【異文化変容ストレス】



このブログでも度々取り上げている移住に関するストレス。


自身の慣れ親しんだ場所から、新たな環境へ飛び込んだ人が経験する『異文化への変容』に伴うストレスもあれば、他文化から自分の故郷に戻ってきた人が経験する『出身文化への再適応』へのストレスも存在します。


しかしながら、前者に比べて後者のストレスは、なかなか取り上げられることは少ないそうです。


筆者は、ここ数年、日本とアメリカを行き来することが増え、『出身文化への再適応』へのストレス、逆カルチャーショックのインパクトの強さを肌で強く感じている一人です。


そこで、この記事では、逆カルチャーショックとはどのようなものなのか、改めてその性質をリアルな体験とともに紹介しつつ、それを乗り切るためのストレス軽減方法を提案してみたいと思います。



逆カルチャーショックとは?

逆カルチャーショックとは、海外生活を終えて自分の慣れ親しんだ環境(文化圏や国)に戻ってきた者が経験する、自分の文化への再適応に伴い感じてしまう驚きや戸惑いのことを指します。


見ず知らずの真新しい文化に一から適応していくのと違い、表向きは、すでに自分の知っている文化に戻るだけ。そのため、再適応に対して大きな困難が伴うことは、そこまで重要視されることなく、見過ごされがちな傾向があることが指摘されています。


実際に、海外経験をした日本人の約80%が、異文化環境で経験したカルチャーショックよりも、日本に帰ってきてから経験した逆カルチャーショックの方が困難であった、と報告している統計データもあるそうです。


そのため、本当は逆カルチャーショック体験をしているものの、それを逆カルチャーショックによるものと気づかないまま、ストレスや葛藤を抱えている人も多く存在するのではないかと思います。



逆カルチャーショックがキツい理由(個人的推測)

逆カルチャーショックが困難な理由。それはなぜでしょうか?


わたしが個人的に感じる困難の理由。それは、自国に帰るにあたり「慣れている自国に戻るだけだから」という前提がある、そういう感覚を強く持っているからだと思います。というのも実際に、日常を過ごすにあたり、それなりの適応はすぐに出来る。ただ、なんでかわからないけれども思い描いていたよりも、かなりの精神的負担を感じている自分がいることにも気が付きます。


それを異文化環境での生活が長くなったことで自身の価値観や物の見方が変わってきているから、と単に説明することももちろん出来るかもしれません。しかし一方で、忘れてはいけないのは、自国(戻る先の)環境自体も、自分がいなかった間に、時を経て変化を迎えて変わっているということ。それはつまり、自分が戻ってきた場所は、決して過去の自分が住んで見知った世界ではないということです。つまり、自身の認識と体感に、大きなズレが出来てしまっているいうことです。


別に、不快なわけではないけれども、何かが違う…。そんな言語化がなかなか出来ないふんわりとした異和やズレを感じることで、なかなか情報の咀嚼に時間がかかるのです。この感覚が、少し、リアルを生きる自分を数歩下がって幽体離脱で眺めているような、そんなふわふわと掴みどころのない感覚になります。そして、その感覚がずっと続くと孤独感が強まるような気がするのです。



逆カルチャーショックがキツい理由(もっと学説的側面から)

自身の中に起きた様々な変化と、自国(出身地・文化)側に起きている様々な変化。それらが相互に多様に交差し反応しあった先に、逆カルチャーショックは起きています。


そうすると、カルチャーショックの法則と同じように、新たな情報に触れて(衝突して)それをどう対処していけば良いのか、衝突に直面している自分が経験している葛藤が、逆カルチャーショックにおけるストレス源である、と考えることが出来るかと思います。


そして、なんといっても、今まで住んでいた異国・異文化・定住先に対する喪失感というのも、大きな要素です。自分の中に構築されていった定住先での普通が無くなり、定住先のアイデンティティもどこか喪失してしまうような焦りや悲しさの感覚も同時に経験するのです。


また、家族が定住先の文化出身者との間で構成されている国際結婚のような場合、パートナーとの間の役割分担やパワーバランスに変化が起きる時期でもあります。


逆カルチャーショックは、それまでの異国での自身の生き方であったり、自身と出身文化側との歴史や元々の関係など多要素が絡み合い関わってくるので、とてもパーソナルな(個人的な)経験となります。


そのため、これを他人が容易に理解できるかといったら、とても難しいことですし、説明もなかなかしにくい。しかも、表面的には、そのような異和を抱えながらも、なんとなく生活を過ごせもするから別に苦しんでそうでもない。そのような、周りから見えにくい苦しさがどうしても付随してしまうのは、逆カルチャーショックを語る上で理解されても良いポイントなのかなと感じています。



逆カルチャーショックのストレスを緩和する方法とは?

では実際に、この逆カルチャーショックはどう乗り切っていけば良いのか?

以下に緩和のためのポイントを5つ挙げてみました!


1)ストレスが起きることは避けられない、あらかじめ心の準備をしておくこと。


そもそも、国外内問わず、引越し・移転・移住は、人間にとってめちゃくちゃストレスフルなことだということをとにかく理解しておきましょう。


ノマド生活で自由気ままに、とか、旅行でいろんな場所を行くのが好き。という人はもちろんいるでしょう。しかし、実際には、彼らには変わらない生活拠点があります。引越しは、生活拠点自体が大きく変化を迎えます。そのため、ストレスを感じてしまうのは、至極当然のことなのです。そのため、生活拠点が動く際には、大きなストレスが起きることは絶対避けられないと見越しておくこと、そして、その間、無理をしすぎないよう意識的に過ごすこと、はとても大切になってきます。



2)新しい環境に居場所を出来るだけ早く作ること。


帰国後に、特に所属先が決まっていない人は、どんなことでもいいから、居場所を見つけることが大切です。仕事や学校など、帰国後にすぐ行く場所が決まっている人であっても、それが自分に合う場所かはわかりません。そのため、自分に合いそうな居場所の選択肢を広げていくことが大切です。


最初は、行きつけになりそうなカフェや買い物先を探索するだけでもいいですし、ジムや習い事など、定期的に通えそうなところを情報収集してもいいかもしれません。家族単位でなら、週末が楽しみになるように行きつけのレストランやショッピングモール、映画館などをあちこち試しながら探してみるのも良いでしょう。


少しでも、移住先に何か自分が繋がれる場所があることは、とても大きな支えになっていきます。そして、出来れば、今までの環境では出来なかったことを率先して探してみると、新天地への親近度が上がる結果にも、定住先からの喪失感の脱却にも役に立つかもしれません。



3)今までの自分のルーティーンを大切にすること。


生活環境が大きくガラリと変わると、毎日がカオスに、てんてこ舞いになってしまったり、圧倒される場面はどうしても増えていきます。


それは、いくら勝手を知っている自国に戻ってきたからといっても、生活がある程度落ち着くまでの間は、どうしても経験せざるを得ません。


そのような状況が続くと、どんどん、どんどん、毎日の生活の舵取りがうまく出来ず、振り回されて1日が終わるような経験も増えていきます。そのため、今までの生活リズムと同じようなルーティーンを意識的に取り入れたり、自分一人の息抜きの時間、自分の好きな趣味や習慣事をどこかに設けたりをしていくことが大切かと思います。


少しでも、何かしら自分の生活で変化せずに続けていられることがあると、それがアンカー(碇)となって、自分を安定させてくれます。



4)気持ちの発散の仕方を工夫する。


変化を迎えることはとても大変でありながら大きな個人差があります。人によっては、それがわずかなインパクトで済む人もいるでしょうし、それがとても大きな打撃となって「動けるのもやっと…」という状況の人もいるでしょう。ストレス耐性や移住までの理由や背景等、個人差があるからこそ、本人がどの程度のストレスを抱えているのかは、他人からはほとんど分かりません。


特に、移住が自身の意思ではなく、自分以外の誰かの都合で決まった場合では、自分が迎えているこの変化を不公平に感じたり、苛立ちが募ったりと、立場によって家族の中でも移住に対する気持ちはバラバラ…といった状況になってしまうことは想像に難しくありません。


自分の気持ちを最初に理解してあげられるのは自分だけです。そのため、今の自身の置かれている状況に対して、自分がどのようなことを感じているのか、それを振り返り、尚且つ、その上で、自分が今、何を必要としているのか。これを理解し、時には、他者に今の自分に必要なニーズを適切に伝えられるようになる必要があります。そのために、気持ちを自由に紙に書き出すジャーナリングをしたり、カウンセリングを活用したりすることも、この時期、特に意識してみてもいいかもしれません。



5)セルフコンパッションを心がける。


とにかく、変化が落ち着くまで…、最低でも、何かしらの居場所や、生活にルーティンが戻ってくるまでの間は、何かが思い通りに出来なかったとしても、自分を批判的に見ていかないこと。とにかく、自分に優しく接する必要があります。


自分のことを優しくしてみることが難しい人は、「もし、今の、この経験をしているのが自分の親友だったとしたら…」を考えてみてください。


なかなかやりたいことが思うように上手く出来ない今の自分にかけている厳しい言葉よりも、絶対に、優しく思いやりのある言葉をかけているはずです。その言葉を、あなた自身にも、かけてあげましょう。



おわりに

今回の記事では、逆カルチャーショックへの緩和方法を、なぜ逆カルチャーショックが起きるのか、という仕組みにまで遡って振り返ってみました。


移住体験の難しさは、「引越し」という変化へのインパクトが人により大きく異なること、そして、引越しの状況やそれに至るまでの条件自体に、とても大きな個人差があるものであることから、周囲の理解を簡単に得られるタイプのストレスではありません。それが、異文化へ行くストレスに比べると比較的容易に見られる逆カルチャーショックであれば、なおさらのこと。


そのため、自分の様子を理解し、自身が率先して自分を労わるスキルを身につけていくことは、環境の変化によるストレスから身を守る上で、とても大切であり、移住後の人生を左右する存在にもなっていくでしょう。


この記事が、逆カルチャーショックを経験している人のお役に立てる部分があれば幸いです。なお、この対処法は、逆カルチャーショック以外にも、異文化変容など引越し全般のストレスにも応用できる対処法です。引越しを控えている方、ぜひ試してみてください。



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWA

 

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参考:

Storti. C. (2003). The art of coming home. Intercultural Press Inc. Boston:MA.


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岩城けい著

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