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子供の心理カウンセリングは親次第。チャイルドセラピストが語る、子供クライアントの親に求めること



子供のカウンセリングやセラピーをしていると、様々な親に出会います。

多様なバックグラウンド、それぞれ抱える悩みや葛藤は違いながらも、その中でも、親のタイプは2タイプに分かれるように思います。子供のために何が出来るかを必死で模索する親と、自分の体裁を守るのを優先し問題解決を子供に押し付ける親。

子供のカウンセリングを成功させるには、親が子供の葛藤に歩み寄る姿勢が不可欠です。

この記事では、実際に様々な家族を担当してきたセラピストの筆者が感じる、セラピーの成功に不可欠な親の姿勢について、よく出会う親の傾向と、セラピストが子供クライアントの親に求めることを説明してみたいと思います。

セラピストの役目とは、通訳のようなもの

わたしは、子供のカウンセリングやセラピーとは、まるで子供と親のコミュニケーションを手伝う通訳のような存在と感じています。

児童・一般心理学の知識に加え、プレイセラピー・アートセラピーなどを通して伝わってくる子供の気持ちを解釈し理解したものを親にわかりやすく伝えていくことによって(また親の伝えたいことを子供の分かりやすいように変換して伝える場合も)、親子の相互理解を深める手伝いをします。


それが結果的に、親の子供に対する不安を和らげたり、親の子供への接し方が変わるきっかけになったり、何かしらのポジティブな変化を作り出します。そしてそれが、問題解消の大きな糸口になっていきます。



親自身が解決しなければならない問題が子供に投影されている場合も

わたしは子供のセラピーの場合、まず親との面談をするのですが、その際にこの質問をすることがあります。


「あなたのお子さんを形容詞3個で表すとしたら、どのような言葉が浮かびますか?」


この質問、元々は大人の愛着スタイルを探るために開発されたものですが、親が子供をどう見ているかを知るためにもとても参考になるのです。


この質問を投げかけた時、「本当に我が子を見てそれを言っているのですか?」と疑いたくなるくらい子供を形容しているとはとても思えない回答や、子供の成果ばかりにフォーカスされて子供自身のことが全く説明できていない回答がされる時があるのです。


この場合、親自身が、自分の生育環境のトラウマや、夫婦関係の問題や自身の存在価値に対してなど、親個人の抱える葛藤を子供に投影していることから発せられている言葉である可能性が高いのです。


投影とは、自分の心の葛藤を目の前にいる誰かがまるでそれを実現しているような気分になってしまう、自分の心を鏡に映し出して見ているような心理現象を指します。


目の前の子供の行為をただ単に『子供が楽しくて無邪気にやっている行為』ではなく、まるで自分を苦しめるためにわざとしている行為なのではないかと感じてしまったり、「なんてひどい子なんだろう…まるで〇〇みたい」と自分の嫌いな誰かと重ね合わせて思ってしまったり。


客観的に見て、明らかにこのような傾向が親に見受けられる場合、親が我が子をありのままのその子として見れるようになるために、親のトラウマを癒し、歪んだ意識を改善していくための介入や、成果ではなく子供の本質を見ていくことを促すための心理教育が必要になっていきます。



親にカウンセリングを提案した時の反応から分かること

親との初回面接の際、詳細を聞いているうちに親に介入がまず必要だと判断し、親との個人セッションを提案する場合があります。これは、子供のカウンセリング・セラピーを効果的に介入していくための、子供に良い変化を作るための治療の一環であるとの判断であるものの、それに対して、拒否する姿勢を見せたり、子供のセラピー自体を取りやめてしまう親も少なくはありません。


でも、わたしは、強く問いたいのです。

「なぜ子供のカウンセリングは大丈夫で、自分のカウンセリングは受け入れられないのですか?」

「自分には必要ないと思ってるから…。」

「問題があるのは子供の方だから…。」

「カウンセリングに抵抗があるから…。」

その理由はさまざまかも知れません。

しかしながら、子供にカウンセリングをさせようと思う際、子供にカウンセリングを受けさせる負担を強いるのであれば、親も同じく負担を請け負っても良いと思える気持ち、子供が経験しようとしていることに対して歩み寄る姿勢を持つことって、とても大切だと思うのです。

もし、自分は変わる努力はしたくないけれど、子供にはそれを強いたい・強いても良いという意識があるのであれば、そこに本当に変えていくべき一番の向き合わなければならない問題がある、とわたしは感じます。


なぜなら、この態度の違いから、子供のセラピーの経過に合わせセラピストが提案することを許容し子供の変化に繋げていけるか、拒否して子供の変化を妨げることになるのか、その成功・不成功を左右する親の決意の度合いが透けて見えるからです。

おわりに

この仕事をしていると、さまざまな家庭に出会います。

子供の置かれた境遇を知り、とても辛い気持ちや憤りを感じることもありますし、それに追い討ちをかけるような他人本意な親の態度に絶望的な気持ちになる時もあります。一方、どのような家庭事情・状態であっても、子供のために自分を変えていく意思のある親、なんとしてでも子供のためにと自身の葛藤と向き合うことをも辞さない親に出会えた時は、人間の愛情の深さと強さに驚かされることも。…というのも、さらりと書いていますが、自分の向き合いたくない部分と向き合うことはとても勇気のいるヴァルネラブルな行為であり、相当な決意がないと難しいことだからです。


もちろん、セラピストによっては全く違うアプローチを取る方もいらっしゃいますし、わたし自身、親へのアプローチの仕方はケースバイケースです。しかし、カウンセリングに対する親の向き合い方というのは、少なからず子供のセラピーの効力に影響を与えることは確かですし、子供のカウンセリングやセラピーを求める親が知っておくべき情報だと感じています。


今回の記事は、子供のカウンセリングに際し、セラピストが実は注目しているポイントについて説明させていただきました。この記事が、子供のカウンセリングを検討されている方や、チャイルドセラピーへの理解を深めたい方の参考になる部分がありましたら幸いです。


尚、この記事は、一部の親を責めるつもりで書いたものではありません。これを読んで、自分の気持ちに向き合えていない親に自分が当てはまると感じる場合、お子さんのため、ご自身の癒しのために、カウンセリングを受けられることを強くお勧めします。



心理セラピスト・吉澤やすの

 

参考文献:

Parenting from the Inside Out: how a deeper self-understanding can help you raise your children who thrive

by Daniel Siegel & Mary Hartzell


脳科学の視点から子供の愛着形成や親子の関係を研究しているダニエル・シーゲル博士による、子育て中の親の心理に焦点を当てた素晴らしい子育て本。親自身のトラウマや愛着が、自身の子供との接し方にどう影響するのかなど、愛着理論と共に詳しく説明されています。子育てに大きな精神的葛藤を抱えている方や、産後鬱などで苦しむ方のカウンセリングにも参考になる点がたくさんの良書です。日本語翻訳版が出版されることを切に願う一冊です。


本当の勇気は「弱さ」を認めること

ブレネー・ブラウン著


この記事でも話している『ヴァルネラブル』とは何か?についてを詳しく説明している、自分の『弱い部分』と向き合うことへのヒントと勇気をくれる素晴らしい本です。


自分との向き合い方に葛藤を抱えている人に読んでほしい本No. 1です。




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