みなさんは、”Picture Bride”という言葉を聞いたことがありますか?
それは『写真花嫁』と呼ばれる、写真だけを頼りに縁談をアレンジされ、日本からはるばる海を渡ってハワイやアメリカ西海岸に住む日本人の独身男性労働者の元に嫁いで行った女性たちのことです。
それは100年以上前のこと。
この記事では、そんな彼女たちが主人公の映画『Picture Bride』の背景となった「アメリカに一番最初に移り住んだ日本人移民たちの話」と共にこの映画の魅力を紹介しようと思います。
最初の日系移民
1882年に発足した中国人排斥法(Chinese Exclusion Act of 1882)を機に、アメリカ国内(特にハワイなど)で中国系移民が担っていた農業仕事や肉体労働に人手不足が起きてしまいます。19世紀末、足りなくなった労働力を補うために雇われたのが、日本からの独身男性達でした。彼らがアメリカにおける最初の日系移民です。
はじめはアメリカには短期労働のみで帰国するつもりだったものの、彼らの多くはそのまま現地に定住し家族を作ります。
しかしアメリカ政府が敷いたAnti-miscegenation law(異なる人種間の結婚を禁止する法律)により、アメリカに住んでいた日本人移民は、家族が決めた相手との結婚か、一度日本に帰ってそこで結婚相手を見つけるしかパートナーの選択肢が無くなってしまい…。そんな中、実際に会わずに写真だけで縁談を決めアメリカに移住してくる女性たち『Picture Bride/写真花嫁』が登場したのです。
映画『Picture Bride』の魅力
歴史上の話としてだけ聞くと、
「昔の人は顔も見ずに結婚相手を決めるのは平気だったのかな、当時では普通のことだったのだろうか」
なんて思ってしまうかもしれません。当時の人がどんな思いを抱えてたかなんて、教科書を読むだけではなかなか伝わってきません。
しかしこの映画では、その「顔も見ずに結婚相手を決める」ことがどれだけ花嫁にとっても花婿にとってもおっかなくて、ハプニングも満載な、なんとも言えない可笑しなシステムだったことかが、フィクションでありながら史実に近い形でユーモアと一緒に事細かに描写されているのです。
あまり話してしまうとネタバレになるので詳細は控えますが、歴史上の話が、現代のわたしたちにもありありと共感できる形で再現されているのがとても魅力的な映画です。
それに工藤夕貴さんの演じる主人公(ピクチャーブライドの一人)がちょっと現代にもいそうな子で、彼女のハワイに着いてから生活に慣れるまでの文化適応の様子がとにかく面白い。一方で、そんな人情味あるシーンとは別に、ハワイの大自然の中の過酷なサトウキビ畑(プランテーション)での生活も描かれており、先人の努力に尊敬せずにはいられない感慨を与えてくれる作品にもなっています。
おわりに
日系人の多くが定住したハワイやアメリカ西海岸には、現在でも日本文化を感じるようなイベントや食べ物、文化が残っています。中にはアメリカ文化と融合したようなものもありますが、日本から来たばかりの頃のわたしには、そのような日本(出身)文化を異国で感じられることにとても安心感を感じたのを覚えています。
過酷な異国で自身のコミュニティを切り開いていった彼らが大切にしようと語り伝えてきた日本文化が、今、新たに日本から来た者たちを優しく受け入れてくれる存在になっていることが、人にとって文化がいかに重要な存在なのか改めて感じさせてくれるのでした。
そんな人と文化の繋がりについて考えさせてくれる映画『Picture Bride』みなさんも是非、機会があれば見てみてください!
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
参照:
本記事で紹介した映画『ピクチャーブライド』
興味のある方はぜひご覧ください。ハワイの自然もきれいに描かれた壮大な作品になっています。
参照文献:
McGoldrick, M. Giordanno, J. et al. (2005). Ethnicity & Family Therapy, 3rd ed. The Guilford Press, New York: NY.
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