このブログでも度々登場するマインドフルネスの考え方。
仏教や禅の教えが由来のマインドフルネスは、昨今の脳科学分野の研究発展に合わせて、その心理的効果が具体的に証明されてくるようになりました。
そこで、この記事では、マインドフルネスが不安やストレス緩和になぜ効果があるのか?その理由と、マインドフルネスの活用の仕方を詳しく紹介したいと思います。
そもそも、マインドフルネスって何?瞑想と何が違うの?
マインドフルネスとは、今自分の目の前にある『ありのままの経験・感覚』に注視し、それを受け止め、一つ一つの活動体験を最大限に実感することを目指す意識作りのことです。
そして、マインドフルネスとよく一緒に語られることの多い瞑想は、マインドフルネスを取り入れた活動の一つ。静かに座って目を閉じ、自分の動きを最低限静止した状態から、自分がどのように空間に存在しているのか、どのような体感や感覚を感じるのか、自分が今体験していることを最大限に感じとれるよう意識を集中させることを目的としています。
避けようとすればするほど不安やストレスは大きくなる
ピンク・エレファントという実験があります。
被験者を二つのグループに分けて同じピンク色の象の写真を見せた時に、一方のグループには「その象のことを今から一切忘れてください。」と説明し、もう一方のグループには、何も制限をかけなかった、という実験なのですが…。
一週間後、どちらのグループが、その象のことをより詳細に覚えていたでしょうか?
「この象のことを一切忘れるように」と言われたグループの方が、そう言われなかったグループの人達よりも、一週間の中でピンクの象のことを考える時間が長く、更には情報もより詳しく覚えていたことが分かったそうです。
人は、強い不安やストレスを感じた時、それを避けようと強く意識を働かせます。しかし、考えないようにしようと思えば思うほど、尚更考えてしまったり、次から次へと雪だるまのようにどんどん負の感情が大きく膨れ上がってしまったりするのです。
そして、頭の中で作り出された大きなネガティブな感情に圧倒され、突発的な行動に走ってしまったり、その場しのぎの行動(お酒や薬物、ゲームやテレビなど)を取ってしまったりすることもよくあることです。
まるで自動操縦のように進んでしまうネガティブな気持ちとそれへの突発的・短期的対処法、そしてあとで訪れる自己嫌悪感。その負のサイクルを断ち切るために、一度気持ちを落ち着け意識をそこから遠ざける行為が必要なのです。そして、それをマインドフルネスが果たしてくれます。
頭のごちゃごちゃを整理してくれるマインドフルネスの仕組み
自分の体感覚に意識を集中し今目の前にある体験を100%満喫することを目指すマインドフルネス。
例えば、自分の座っている椅子や床に体のどの部分がどのように当たっているのか、とか、息を吸い込んだ時にお腹が上下する感覚だったり、微かに聞こえる背景音だったり‥。
自分の頭の中で巻き起こっている考えから、意識を物理的に起きている体感覚に集中することで、思考の一時停止をすることができます。
このようなマインドフルネスができるようになると、空回りしていた気持ちがだんだん落ち着いて、自分の悩み事に圧倒されることも、突発的に感情的に行動してしまうことも、抑えられてきます。そして、客観的な視点から物事が見えるようになるため、冷静で的確な判断が出来るようになります。
それはまるで、絡まった糸束を焦って急いで解こうとしたら更に絡まってしまうような状態を、一度手を離して全体を目視し、どこを解けば良いのか確認してから再度糸ほどきに取り掛かるような、そんな感覚でしょうか。
"Life is suffering"と言われるように、苦難があることは当たり前、大切なのはどう苦難を乗り越えるかだと説く仏教の教え。避けるのではなく、苦難の存在を真正面から捉え、そのありのままの姿を受け止めることによって、苦難を乗り越える解決策を見つけることが出来るとしています。そして、それを可能にするための気持ちの準備をしてくれるツールがマインドフルネスなのです。
マインドフルネスな活動は瞑想だけでは無い
瞑想のイメージが強いマインドフルネスですが、マインドフルネスな活動は瞑想だけではありません。
例えば、ヨガなどの動作のゆっくりしたエキササイズや散歩、料理、カラーリング、ガーデニングなどからもマインドフルネスを体感することが出来ます。
一つ一つの動きを通じた体感や視覚・触覚・聴覚などを通して感じることの出来る情報を最大限に実感する試みがマインドフルネスを用いた活動となります。
マインドフルネスの利点は、頭の中のごちゃごちゃを取り除くだけではなく、それらマインドフルな体験を通じて経験する小さな発見やそれに気付いた時の驚き、喜びなど様々なポジティブな感情が同時に生まれることです。
そうすると段々と、自分の経験に感謝が出来るようになってきます。感謝がある日常を送れると、人の幸福度も増します。そして、体の感覚も深く感じることが出来るようになるので、自分のために動いてくれている体が愛おしく愛着が沸くようになってきます。そして、自分に優しくなることが出来るようになります。
大きなトラウマを抱えている人には専門家の事前介入が必要な場合も
心身にメリットの多いマインドフルネスですが、一つ注意事項もあります。
辛いトラウマを経験され体に深い傷を負ったままの方は、マインドフルネスによって、トラウマ経験の感覚が強く思い起こされてしまう場合もあります。
そのため、万一、瞑想中に気分が悪くなったり、大きな感情に圧倒されてしまったりした場合は、マインドフルネス活動を一旦止めて、心理の専門家のサポートを仰いでください。
マインドフルネスを実践中に不快な思いが強く出てくる場合は、トラウマのケアがまだ癒されていない可能性がとても高いです。そのため、トラウマ解消のための心のケアを何よりも第一優先にするようにしてください。
おわりに
この記事では、マインドフルネスの仕組みや効果についてをざっくり文章で紹介してみました。しかし、言葉よりも、実際に体験しないと分かりにくい点もあるかもしれません。興味のある方は、ぜひ瞑想のクラスを体験してみてくださいね。現在は、オンラインを通した瞑想クラスやマインドフルネスの講習会も盛んになっていますので、自分のペースで日常に組み込むこともしやすいかもしれません。
マインドフルネスを知ったら、日常の世界が少し違った視点で見れるようになるかもしれません。
長くなりましたが、お読みいただきありがとうございます。
クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。
関連記事:
参照:
ジョン・カバットジン著
マインドフルネスをストレス軽減&痛み緩和の治療につなげたプログラム(MBSR)の創設者カバットジン博士の名書!
大きなストレスを抱えていたり、慢性的な体の痛み苦しんでいたりする人への治療として、マインドフルネスを取り入れた8週間に渡るプログラム(マインドフルネスストレス低減法/MBSR)を開発したカバットジン博士。この本では、マインドフルネスの基本概念の説明から、それが脳や体に直接どう機能するのかを具体的にわかりやすく解説しており、本書を読むとマインドフルネスをより深く理解することができます。
クリスティン・ネフ著
マインドフルネスに欠かせない、セルフ・コンパッション研究の第一人者クリスティン・ネフ博士の代表作!
マインドフルネスの実践に求められる『自分の目の前で起きていることをありのままの現状として理解する』行為。それには自分をありのまま見つめることも含まれます。博士は、人が自分をありのまま見られないのは批判の目を持って自分を見てしまう傾向を持っているから。その批判の目を優しい視線(自身への思いやりの姿勢)に変えられた時に、人は現実を受け入れ、前進するきっかけが作れると提案しています。この本では、セルフ・コンパッションがどのようなポジティブな心理学効果を持つのか、博士の研究結果と共に具体的に提示されています。
Jack Kornfield著
アメリカ心理学の新たなジャンルとして頭角を現し始めたブディズム心理学(仏教心理学)その第一人者であるジャック・コーンフィルド博士による、仏教の教えをベースにした心理療法のアプローチを解説した良書!
マインドフルネスの概念はもちろんのこと、セルフ・コンパッション、アクセプタンス、など‥、仏教の教えを人間心理に当てはめた考え方は、仏教の文化の影響を強く受けて育った日本の人にもとても受け入れやすい心理アプローチなのではないかと個人的に感じます。興味のある方はぜひ読んでみてください。
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