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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

世界全体が異文化変容ストレスを経験している?!新型コロナウィルス感染症がもたらしたニューノーマル、そして変化への適応に伴うストレスを検証



新型コロナウィルス感染症の流行に伴い、世界中が今までに直面したことないような出来事に遭遇する日々が続いています。


大きな環境の変化、そしてそれについていくのに必死な自分。今まで当たり前だったことができなくなるような喪失感、経済不安、自分の価値観がずれていくような感覚‥。


わたしのブログを読んでくださっている読者の皆さんならすぐにピンとくるはず。これら全て、異文化環境に飛び込んだ移民が経験する異文化変容ストレスにほぼ当てはまるのです。異文化変容ストレスに関する記事を読む)


今までの日常が強制的に新しい日常 (New Normal)に取って変わったここ数ヶ月。ウィルスへの感染に抱く恐怖や外出規制、経済的不安以外にも、この『変化についていくこと』自体に精神的に苦戦している方はとても多いように見受けられます。


そこで、この記事では、新型コロナウィルス感染症のパンデミックがもたらした新日常とその変化への適応に伴って、これに直面したわたしたちがどのような精神的苦痛を感じやすくなっているのか客観的に考察してみました。


そして次回の記事では、異文化変容ストレスへの対処法を参考に、変化に対する精神的ストレスを乗り切るための方法を提案してみたいと思います。


新型コロナウィルス感染症によって引き起こされた変化、そしてニューノーマルとは?

パンデミック宣言がされてからというもの、社会全体を通して感染を抑えるために様々な手段が講じられました。それらを少しリストアップするだけでも、人の習慣が大きく変化してしまったことが伺えます。アメリカ・カリフォルニア州の例を見てみましょう:


  • ソーシャルディスタンシング:人と人との間隔を180センチほど空けるように。そして、人との接触も出来るだけ避けることを求められるようになりました。これにより、人混みの多い場所の閉鎖がされ、スーパーでは入場制限を設けるお店も。今後外出自粛が取り下げられたとしても、飲食店や人の集まる場では、ソーシャルディスタンシングを意識した環境づくりが求められるようになるのではないかと思います。

  • 外出自粛や自己隔離(quarantine):感染者に触れないため、自分が感染者としてウィルスを広めてしまわないために、不要不急の外出を出来るだけ避けることが推奨されています。

  • 在宅勤務・テレワーク:外出自粛により、自宅を出ずに仕事が出来る人には在宅勤務をするように。

  • オンライン・スクーリング:学校の授業がオンラインのビデオチャットを通じて行われるように。学校や授業の種類によっては、課題を提出するだけのものもあるそうですが、すべての授業が遠隔になりました。それにより、子供達のこれからの社交体験も大きく変わっていくでしょう。

  • ビデオチャット・テレビ会議:今までオンラインチャットなんて…と気が引けていた人も誰もが皆ビデオチャットを利用するように。ビデオ会議に持ってこいのプラットフォーム『Zoom(ズーム)』をここ数ヶ月で耳にした人は多いのでは?その他にも、ジムやエキササイズ、習い事、瞑想クラス、カウンセリング、お医者さん診療など、遠隔対面で出来るものに関してはオンラインビデオのプラットフォームが使われるようになりました。

  • マスク着用が基本:手洗いやアルコール消毒はもちろんのこと、マスク嫌いだったアメリカ人達でさえ今はマスクを着用するように。比較的衛生観念に寛容だった人達も、今は意識して消毒をマメに行うようになりました。



パンデミックによる変化がもたらすストレスの原因とは何か?

人との物理的交流のほとんどが制限され、家の中で過ごすことが圧倒的に増えたのはもちろん、常に感染の危険と隣り合わせで手洗いや消毒を常に意識しながらの生活は、パンデミックが始まる前には誰も考えなかったこと。私たちは、今までの習慣や常識とは違う、新しい常識に自分の意識と行動を適応させていかなければならなくなりました。


変化への適応を求められた個人が感じるストレスは、異文化変容ストレスと同じく、様々な難しい感情が一度に重なってしまったことにより起こってしまいます。ここでは、パンデミックによる変化によって引き起こされる幾つかの感情の項目を具体的に説明してみました:



恐怖と不安感:


言うまでもありませんね。見えないウィルスに感染してしまうかも、という恐怖を誰もが今、抱えていることでしょう。それは生死に直結するような、とても怖い気持ちです。そして、ウィルスだけではなく、経済的不安を抱える方も大勢います。


自分のしている対策が果たして本当にいいのだろうか、十分だろうか、そんなことを何度も考えることが増えているかもしれません。常に恐怖と不安を抱える生活を今、私たちは迎えています。



怒り:


外出自粛に伴い、仕事や今まで好きだったことを手放さなくてはならなくなった方が大勢います。それだけでなく、このパンデミックのとても辛いところは、職業による不公平さがとても顕著だということ。在宅が出来ない仕事や観光接客業など職種により生活が一気に不安定になってしまった方もいれば、在宅が難なくこなせる方もいる。政府の外出自粛への対応も金銭援助もまちまち。そこに大きな怒りを抱えてしまう方も多いでしょう。


また、情報が錯綜したことにより、人により認識がバラバラ、差別感情が生まれたり、感染症対策に対する危機意識にも大きな差が出てしまったことも、苛立ちや怒りの感情が芽生えやすいきっかけになったと思います。



悲しみ:


連日流れる感染症で亡くなった人を報告する悲しいニュース。家族や知り合いを失った人の気持ちを思うと悲しさでいっぱいに。それだけでなく、失業や楽しみにしていたイベントがことごとくキャンセルされる様に、悲しみを感じる方は多いでしょう。



喪失感:


今まで出来ていたことが出来なくなる感覚。やらなくても我慢出来るものもあれば、どうしても手放したくなかったこともあるでしょう。


コロナウィルスの被害を少しでも食い止めるために出された外出自粛令に伴って、今まで当たり前であった活動の多くが制限されることになりました。

通勤や通学が無くなったことはもちろん、習い事やジム、さらには映画館やショッピングセンターなど娯楽を提供する場も全て一度に業務停止され、生きがいや楽しみが人生から消えてしまったような喪失感を抱える方もいるでしょう。

また、欧米の方の大きな衝撃となったのが、ハグやキス、握手、カジュアルな知らない人との会話の行為が極端に制限されてしまったこと。ただの癖や習慣とは片付けられない、愛着のあった心のこもったコミュニケーションを自粛しなくてはいけないことは、まるで人との交流を遮断されたような拒絶感に感じる人が多いようでした。


その点、アジア系の方はドライな間接的なコミュニケーションが主流なのもあって、難なく適応していたのが対照的でとても印象に残っています。


孤独感や疎外感:


今まで人と関わることが日常だった人たちにとって、人と関わらない生活、または隔離を強いられる生活は、孤独や疎外感を感じやすい状況です。一人で時間を過ごしのが人ならまだしも、人と関わることが好きだった人にとっては今の状況はとても辛いでしょう。


また、仲の良い家族がいる場合は良いかもしれませんが、そのような家庭が無い人、または家族間が不仲の人にとっては、居場所が無いような、そんな孤独感が増えてしまう状況が今作られているように思います。



生活リズムが崩れることによる不安定さ:


外出が出来ないことで、全てを家の中でやり繰りしなくてはならなくなりました。仕事や学業など何かしらやることはあったとしても、今までのようなスケジュールが細かく管理された生活とは状況が変わります。


そのため寝る時間や起きる時間がバラバラになったり、子供がいる家庭では予定が思い通り進まなかったり、毎日の生活規則が大きく崩れてしまう家庭も出てきています。生活習慣やルーティーンが不安定になると、まるで操縦していた車のハンドルがいきなり動かなくなって道を暴走し始めたような、コントロール不能な状態に気持ちが圧倒されてしまうことも。


絶望感:


いつまで続くんだろうか。何がどうなっているんだろうか。自分の力ではどうにでも出来ない見えない力に左右されている感覚。


期間も指針になるものも少ない今の状態に絶望感を感じてしまう方がいても無理ありません。失ったものを取り戻すまでの努力やエネルギーも考えただけで途方に暮れてしまうこともあるかもしれません。




ストレスの元を知り、サバイバルモードに置かれている自分を理解することは大切な行為

上記に挙げた難しい感情は、一部の例に過ぎず、個人によってはもっと大きな気持ちの葛藤を抱えてこの局面を迎えている方もいれば、逆に、変化に難なく対応出来ている方もいるかもしれません。


異文化変容ストレスに関してもそうですが、『環境の変化』に適応することに、ここまで様々な感情が巻き起こることはあまり知られておらず、また、個人差もとても大きいため、一括りで精神的ストレスの傾向を語ることが出来ません。


しかしながら、現在私たちが生活している環境は、客観的に条件を総合して考えると、生命に直結する危機感からサバイバルモード(戦闘モード)になってしまっても不思議でない状態です。人はサバイバルモードになってしまうと、感受性が高まり感情的になりやすかったり、論理思考がしにくくなって適切な判断ができなくなってしまったりすることもあります。心理学者の中には、現在の状況はトラウマ体験に十分値する、と説明する方もいるくらいです。 そのため、出来る限り、自身に起こっている感情の波がどのようなものなのか、客観的に理解し、気持ちの消化をする機会を作っておくことが大切です。


この記事では、今のパンデミックによる状況の変化がどのような精神的ストレスを人に与える可能性があるのかについてを中心にまとめてみました。自分の気持ちを客観的に見るためのガイドラインとして使っていただけたら幸いです。


次回の記事では、ストレスに対して具体的にどのような対策が取れるのか、異文化変容ストレスへの対策法を参考に紹介します。どうぞ皆さん、無理せずに、いつも以上に大きなストレスを背負っているのだと意識して、自分を労りながら生活するよう心掛けてください。



クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。

 

関連記事:


参照:

Berry, J. W., Kim, U., Minde, T.,& Mok, D.(1987). Comparative Studies of Acculturative Stress. International Migration Review. Vol. 21, N


Kim, B.K.,& Omizo, M.M. (2006). Behavioral acculturation and enculturation and psychological functioning among Asian American college students. Cultural Diversity and Ethnic Minority Psychology, 12(2), 245-258.doi:10.1037/1099-9809.12.2.245


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