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執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

逆カルチャーショックとは?帰国後の自国文化への再適応を円滑にするために必要な心構え【異文化変容ストレス】



みなさんは、逆カルチャーショックという言葉を聞いたことはありますか?

慣れ親しんだ環境から全く違う文化に直面した者が経験する『カルチャーショック』はよく語られるものの、海外生活を終え自国に帰国した者が経験する『逆カルチャーショック』についてはほとんど話されることはありませんよね。

ある統計によると、海外経験をした日本人の約80%が、異文化環境に移住した時やカルチャーショックを経験した時よりも、自分の国に帰ってからの再適応や逆カルチャーショックの方が困難だったと報告しているデータもあるそうです。

そこでこの記事では、海外経験者が自国に本帰国した際に経験する再適応と『逆カルチャーショック』について、その特徴と対処法を紹介したいと思います。


逆カルチャーショックとは?

逆カルチャーショックとは、海外生活を終えて自分の慣れ親しんだ環境(文化圏や国)に戻ってきた者が経験する、自分の文化への再適応に伴い感じてしまう驚きや戸惑いのこと。

見ず知らずの真新しい文化へ一から適応するのと違い、表向きは、すでに自分の知っている文化に戻るだけ。そのため、再適応にも大きな困難を伴うことは、見過ごされがちな点が指摘されています。


逆カルチャーショックの起きる原因は、自分の帰る場所が『HOME』ではないから

帰宅、帰国、帰郷‥。これらの言葉の指す、『帰る場所』とは、どこなのか。自分が帰る場所が、果たして本人にとっての『HOME』なのか。それに対する理解が、帰国者の再適応が困難な理由を紐解く鍵になっています。

『HOME』とはなんなのか?『HOME』の定義には、大きく分けてこれら3つの要素が含んでいるとされます:


1)慣れ親しんだ場所

2)慣れ親しんだ人たち

3)予測できる習慣、儀式、コミュニケーションややりとりの感覚などが存在していること

自分の見知った場所や自分の慣れ親しんだ人たちに囲まれ、何も意識しなくても、自然と会話のやりとりが出来るような環境。予想外の対応を必要としない、そして、先が予測出来るような日常は、人を安心させます。

何年間かの時間を経て自国や地元に戻ってきた人には、これら3つの要素が、存在するようで存在しません。

例えば、慣れ親しんだ場所(1)は、都市開発や店舗の入れ替えなどで自分の親しんだものとは違う状態になっている場合も。知らない道があったり、新しい施設が出来ていたり、戸惑うこともあるでしょう。そして、慣れ親しんだ人たち(2)との関係は、数年の時を経て大きく変化していることも。さらには、自分にとっての新しい習慣(3)と地元の人との習慣が異なっていたり、コミュニケーションのやり方(3)に違和感が出ることも多々起きてしまうでしょう。

自分が戻ってきた場所が、自分がそこを離れる前と同じ状態で残っていることはほとんど無く、自分がその場所を離れていた間だけ、その場所も人も同じ時間を経て変化を迎えているのです。


また、自身が離れていた間に経験した新しい文化への適応は、自身に新たな価値観を植え、自身の予測する習慣や心地いいと感じるコミュニケーションのスタイルに変化を与えます。自身が大きく変わった人間になった状態で、元の場所で同じような関係性を周囲の環境に求めることは難しいのです。

見知った場所にいながらも、何かが噛み合っていないような、どこか気を使うような、そのような状態が、逆カルチャーショックとなって、帰国者・帰宅者にHOMEを『HOME』が持つ安らぎを感じさせず、再適応を難しくしてしまう原因となっています。


逆カルチャーショックを和らげ、自文化・自国への再適応を円滑にするための心構えとは?

⒈ 帰国の数ヶ月前から計画を立て始める:

自国へ本帰国する前に、現地でお世話になった人、好きだった場所、行きたかった場所、仕事やプライベートで決着をつけたかったことを全てやり終えましょう。

自分の今いる場所・もう少しで去る場所と自分の間で、一つの物語のチャプターを閉じるような、そのようなクロージャー(終結)体験を作っておきます。


そうすることで、気持ちの切り替えが上手く出来、自国に戻ってからの生活を頑張れる心の準備をすることが出来ます。


⒉ 逆カルチャーショックが起こることを予測しておく:

新しい文化への適応を余儀なくされた人たちは、一から、『HOME』の土台を築き上げることが求められているため、適応への困難に対する心の準備が出来ています。一方で、自分の文化圏・国・家族のもとに戻る人の場合は、その心構えが無いまま適応への困難さに直面してびっくりしてしまうケースが多いそうです。

そのため、逆カルチャーショックが起こることを前提にしておくこと。そしてショックは大きな衝撃となることを予め知っておくことが重要となります。

逆カルチャーショックは起こるものなのだ、という前提を持つことで、自身や周囲の人、家族に対して、現実的な期待値を持つことが出来、自分の予想していないことに直面しても、驚きやショックを抱えることが少なくなります。

また、自身と同じように逆カルチャーショックを経験した人がいる場合、その人たちと気持ちを共有する機会を設けることも大きな支えとなるでしょう。


⒊ 逆カルチャーショックが起きても原因を自分に求めない:

逆カルチャーショックやそれに伴い再適応に困難が伴うことは、とても自然なことです。⒉でも挙げたように、それは同じ経験をしたものの多くが通る道である、と理解すること。そして、最も大切なのは、再適応に悩んでしまった時に、その原因を自分に求めてしまわないこと。

周囲の望むように明るく振る舞ったり帰国を喜んだふりをしたりしてその場をやり過ごしてしまう場合もあるかもしれません。しかし、再適応に困難を抱えている自分を否定してはいけません。

再適応に慣れていくには、思ったよりも時間が必要なこと、そしてそれには、同じ境遇を話し合える友人を作ることも、自分のペースで進めていけばいいのだという心構えも大切になります。時には離れたばかりの滞在先での思い出を懐かし感じ悲しくなったり、寂しさを覚えるときもあるでしょう。しかし、無理に新しい生活への適応を急ぐ必要はないのです。


おわりに

真新しい環境に一から飛び込む異文化適応に比べ、逆カルチャーショックや自国に戻った際の再適応に関しては、多くの人が見過ごしがちなトピックです。

実際に、海外に多く人を送り出す企業や学校では、社員・学生の海外移住の事前研修はあるものの、海外から帰任後の再適応に関する研修や心の準備についての説明が省かれている場合も多々あり、帰国後に大きな悩みを抱えてしまう方やその家族の方がとても多いそうです。

異文化、見知った文化関係なく、環境に変化を迎える人は、その変化に慣れるために大きなストレスや戸惑いを感じながら生活することを余儀なくされます。


そのため、変化を迎える予定のある人は、心の準備をしておくこと、困難に直面するのは当たり前なのだと意識すること、そしてその困難を乗り越えるのが難しい場合は、同じ境遇を理解してくれるような人にサポートを仰ぐこと、これらを意識しておくことがとても大切になってくるかと思います。


クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。

 

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参考:

Storti. C. (2003). The art of coming home. Intercultural Press Inc. Boston:MA.



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