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  • 執筆者の写真ヤス@BUNKAIWA

海外在住日本人同士の対人関係のストレス。マウンティングに巻き込まれたら?心理的対処方法を解説【異文化変容ストレス】



慣れない環境への適応が求められる海外生活。そんな中で、意外にも同郷の日本出身者とのトラブルに悩まされる人は少なくありません。

同じ文化背景、同じ言語を話せる者同士、異国において安心出来る存在であるはずなのに、なぜか居心地が悪い。それは何故起こってしまうのか?

同じ国や文化圏出身者と揉めてしまうと、コミュニティが小さい故に、そこで提供されるサポートを利用することを躊躇ってしまって八方塞がりになってしまったり、孤立してしまったり、様々な問題が引き起こされる原因にもなります。

そこでこの記事では、海外在住日本人との対人関係のストレスを抱えた時の原因とその対処法を提案したいと思います。



在外日本人コミュニティの付き合いがストレスになる場合

海外生活で日本人コミュニティに馴染めないという方は案外多いのでは無いでしょうか?

同じ文化圏出身者との間にストレスが生まれやすいのには、いくつかの特殊な条件があることが挙げられるでしょう:


「同郷出身者だから」というだけで密な付き合いをする人間関係が増える:


例えば、もし日本で生活していたら、付き合う人間関係は純粋に自分と同じ考え方や共通の興味を持つ気が合う人が中心になります。しかし、同郷(同国)出身者が珍しい異国では、自分の国にいる時には付き合いもしなかったようなタイプの人と、一気に距離が近くなる可能性も増えます。

それが自分のコンフォートゾーンを飛び越えて面白い経験を与えてくれる良い刺激になる時もありますが、どうしても性格が合わない、会っていても楽しくない、というような付き合いである場合もあるでしょう。

そして、それが自分の慣れ親しんだ生活圏での出来事であればそこまで気にならないものの、自分のコミュニティが確立していない新参者にとって、そこにすでに存在しているコミュニティに馴染めない感覚というのは疎外感を感じやすくしてしまう要因となります。そのため、馴染めないことに落ち込んでしまったり、または、無理に馴染もうと自分の性格に合ってない人付き合いをしてしまったりする方もいるのでは。


言語能力や文化への適応度が個人差で大きく異なることがなかなか理解されていない:

異国・異文化に慣れるまでの文化変容は、人それぞれ大きく異なります。同じ文化圏出身者であったとしても、その人個人の性格や得意とすること、条件により、移住先の新しい文化への適応が比較的容易である人もいれば、なかなか適応が難しいと感じてしまう人もいるでしょう。また、配偶者や家族の有無、配偶者が現地人か外国人なのか、職業、現地のコネクション、金銭的余裕など、様々な条件によって、移住の適応度には大きな差が出てきます。

そんな時に意外にもストレスになるのは、実は現地に先に住む同国・同文化出身者からのアドバイスである場合も。


何故なら、彼らの移住体験は参考になるものの、それが全てではなく、また自分のニーズに必ずしも合っているとは言えないからです。アドバイスを参考に行動しているうちに、成果が思ったように出ず落ち込んでしまう人も、善意からのアドバイスに義理を感じ負担を抱えてしまう人も。


マウンティング:

自分よりも言語が出来たり在住歴が長かったりする海外移住者先輩の意見は、まるで指導者のような、強力なパワーと威力を発揮します。善意でアドバイスくれる人はもちろんいるものの、中には厄介な人も存在します。

「誰かに相談に乗って欲しい」と思って、一番気持ちを理解してくれそうな現地で生活している日本人や他国出身者に話しかけたら、やたらと上から目線で話されてしまった、とか、何から何に付けて批判されてしまう、等の経験を抱える場合、もしかしたらマウンティング現象が起きている場合があるかもしれません。

慣れない海外生活で自信の無さを抱えている状態で、大きな劣等感のようなもの(インセキュア)を持っている在住歴が長い方に出会ってしまうと、自己顕示アピールや遠回しな卑下や批判(マウンティング)を受けてしまいやすい。自分と相手の力関係が、在留歴や現地とのコネクション、言語力の大小で、比較的目に見えて優劣つけやすいからという理由もあるでしょう。そのようなネガティブな人間関係が海外生活中の同国出身者(または留学生同士、他国出身者同士)の間では意外にも起きやすいのです。

そういう感覚にストレスを抱えながらも、無理して付き合いを続けてしまうと、自分の自信の無さから来る不安がさらに増大することになり八方塞がりになってしまうことはよくある話です。



そのため、文化変容には大きな個人差があることを知って自分独自の適応方法を常に模索する姿勢を心掛けること、そして、このマウンティングに会ってしまった場合それをどう消化するか、そこがストレスフリーな快適な人間関係を築く上でのキーポイントとなるでしょう。


マウンティングとは何か?

日本のメディアで最近よく聞かれるようになった『マウンティング』。実はこのマウンティングは、知っておくと対人関係にとても役に立つ概念でもあるのです。

マウンティングとは本来、動物がグループ内で自己顕示をするためのパフォーマンス行為のことを説明する言葉のようです。日本のメディアによると、自分の存在を相手よりも優位に見せるための強がりだったり、誇張だったり、はたまた相手を卑下したり貶めることで自分を持ち上げたりする嫌なコミュニケーションというニュアンスのように使われているそうです(ちなみに言葉自体は英語でありながら、日本のメディアで使われているような解釈でこの言葉が使われることはありません。)

自分の存在を相手にいちいち虚勢し誇示する。それは、その人に、裏を返せば見栄を張りたくなってしまうぐらい『隠したい何か』があるから。それを隠すように自慢話をしたり、相手を蔑んで自分を優位に見せる。大きなコンプレックス(劣等感)や不安感といった、個人の在り方(エゴ)を悪く見せる何かを隠したいからこそ、起きてしまう対人関係のコミュニケーションの問題なのです。


マウンティングへの対処法とは?

なかなか厄介なマウンティング。マウンティングに遭ってしまったら、どう対処すれば良いのでしょうか。以下の3つを試してください。


⒈ マウンティングしてくる人から逃げる

マウンティングしてくる人に耐える必要はありません。自分の抱える不安で十分辛い思いをしているのだから、それ以上自分を不安にさせ、批判させ、卑下させるような人と付き合う必要は一切ありません。関わりがどうしても必要な場合は、付き合いを最小限に留めて、相手のマウンティングの餌食になることを避ける距離感を保つことをおすすめします。

何か攻撃を受けた場合は、自分が鏡になったつもりで、それは相手が相手本人のことを話しているのだと思うこと。言われる筋合いの無い攻撃をまともに喰らってしまわないよう、自分の目の前には相手を映し出す鏡のバリアがあると思って過ごしましょう。

自分が辛い時に必要なのは、自分を励ましてくれる存在です。自分の人生からネガティブな要素はできるだけ省くようにしましょう。



⒉ 自分に自信の無いインセキュアな部分があることを受け入れ、認める

自分に自信の無いインセキュアな部分があること、その弱さをしっかり直視して認めてしまいましょう。

恥の研究で有名なブレネー・ブラウン博士は、自分の弱さを直視ししっかりそれに向き合うことで、今の自分に本当に必要なことは何なのか理解出来るようになると説明しています。そして、ダメな部分を持ちながらも難しい状況を必死にやりくりしている自分を一人の人間として認めてあげることで、自分に対する思いやりも強く持て、それが自信に繋がるようになると話しています。


また、マウンティングの難しいところは、相手が自分を傷つけるつもり(マウンティングしているつもり)で無い場合もあることです。自分に自信が無いことが、相手の伝える話の内容にネガティブなニュアンスを加えていないかどうか、真っ先に「相手にマウンティングされた」と思ってしまう前に、本当はどんな会話ややり取りがあったのか、冷静に客観的に状況を見てみる姿勢も必要かもしれません。そこには、自分の自信の無さやコンプレックスを受け入れ、認めることが重要になってきます。


⒊ 弱さをさらけ出す

弱さを見せることは、とても勇気のいることです。しかし、弱さを見せた先にあるのは、正直で人間らしいありのままの自分の姿。自分を偽り続けるのには、どうしても限界があり、長期の目で見ると、自分を苦しめる材料にもなります。

また、弱さを見せることによって、共感してくれる他者と出会うことも出来ます。

自分の弱さを見せたときに深く理解し受け入れてくれる人に出会えると、それはとても大きな収穫となります。そして、その人間関係がまるで薬のように、自分の自信を取り戻す癒しの力を与えてくれるのです。この人間関係は、自分の弱さをさらけ出し、相手と本音と本音で話せるようにならないと見つからない特別な関係です。


弱さは必ずしも自分の弱点ではないということ。自分に思いやりを持ちながら、今の自分に何が必要なのか、それを吟味する意味でも弱さを見つめることも時には必要です。



おわりに

自分にとって何もかもが新しい異文化環境は不安の連続です。そんな中で、自分の慣れ親しんだ文化背景を持つ同国・同郷出身者のコミュニティが存在することを知っておくことは、とても大きな支えになります。

ここで紹介した在外日本人の対人関係のストレスへの対処法は、在外日本人コミュニティのネガティブな面を伝えることが意図ではなく、ストレスを溜めやすい海外生活をどうしたら少しでも快適に過ごすことが出来るのか、そのための対人関係のストレス対策法を提案する目的で紹介させていただきました。


わたし自身、マウンティングを経験したことがきっかけで、かなり異文化出身者同士のコミュニティを避けていた時期がありました。それがとても辛くて大きなストレスを抱えました。当時を振り返って、本当は利用出来るサービスやサポートがあったのかなと考えると、対人関係が原因でそれを敬遠してしまうのは、とても勿体無いことだと感じます。また、話し方、相手の状況によっては、自身が知らず知らずのうちにマウンティングをしてしまっている(そのように受け取られる)こともなきにしもあらずなのだと思う機会もありました。自分なりに対人関係の対処法を見つけた今は、日本人コミュニティとの程よい付き合い方が出来ているように思います。

文化適応は人により大きな個人差があり、それは、他人を軸に決めていくものではありません。自分との対話が強く望まれ、本当に自分にとって出来ること、やれること、したいことを一つ一つ挑戦しながら自分の居場所を見つけていく海外生活。その適応の準備のためにも、もしかしたらマウンティングを乗り切ることは海外移住者にとって通らなければならないハードルの一つでもあるのかもしれません。


クロスカルチャーコンサルタント・BUNKAIWAのヤスでした。

 

関連記事:



参照:

Insecurity: Good Therapy


The 3 most common causes of insecurity and how to beat them: Psychology Today


マウンティングについて



ブレネー・ブラウン著


このブログでも度々紹介しているブレネー・ブラウン博士による『弱さを強さに変える』ための本。本記事で紹介したインセキュアを乗り越える秘訣が、博士の体験談と共に、紹介されていて大変おすすめです。個人的に、彼女の本の中で、この本が今のところ一番好きです。興味のある方はぜひお聴きください。



Burgo J. (2006). Why do I do that? Psychological Defense Mechanisms and the Hidden Ways They Shape Our Lives. Audiobook; Audible.






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